日本財団 図書館


8 自然・歴史環境資源の保全と創出
(1)吉田川沿川の整備
 吉田川は旧吉田宿から仮称・旧吉田宿創造館や公的な住宅への動線上に位置するため、将来的には多くの歩行者の通行が期待される。そのため、東亜酒造の裏手にそびえる高木等の景観を活かしながら、将来の名所となるような、吉田橋や吉田仲橋からの眺望の美化を図り、自然環境資源を活かした回遊路・散策路を形成する。
○表裏一体の関係にある旧吉田宿と吉田川沿川
 吉田川沿川は吉田橋や吉田仲橋からの眺望をつくるとともに、旧吉田宿沿道の後背に位置する自然環境資源でもある。そのため、高木の植栽等にあたっては、旧吉田宿のまちなみ景観に与える影響を考慮していく必要がある。
○整備の方針
 ・旧吉田宿沿道の後背敷地への植樹と合わせた景観整備を行い、つくりこまない自然な列植を形成していく。
 ・法面や土手沿いの植栽を住民の手によって時間をかけながらおこない、旧吉田宿周辺の散策路としての整備を行う。
植樹・植栽の断面イメージ
(拡大画面: 36 KB)
z1062_01.jpg
(2)八幡神社参道の修景
 八幡神社は1180年、秩父氏の系譜を組む畠山重忠が祀ったのがはじめとされている。以後、椋神社に移築された大正7年まで現在の吉田小学校敷地に祀られ、旧吉田宿にとっては祭事をはじめとする文化の中心であったことは容易に想像できる。八幡神社参道の修景により、このような身近な歴史環境資源を活かした回遊路・散策路を形成する。
○八幡神社参道の今日的意義
<吉田小学校とのつながりを強化する>
 吉田小学校から旧吉田宿の歴史的建築物を利活用した計画施設へのアクセスを容易にし、吉田小学校と協力したプログラムの展開を図る。
<旧吉田宿の閉塞感を緩和する>
 旧吉田宿本町地区の崖線は急勾配であり、また近年では落石防護柵が施工されるなど、まちなみに閉塞感をあたえている。八幡神社参道の修景によりこのような閉塞感を緩和するとともに、旧吉田宿に空間的な広がりを持たせる。
○整備の方針
 ・小学生や高齢者でも安全に通行できるような緩傾斜の階段とする。
 ・仮称・旧吉田宿交流館内に階段へ至るアプローチルートを設けることで、多くの人が行き交う交流の場を演出する。
 ・八幡神社が立地していた名残でもある大欅の横に休憩スペースを設ける。
 ・台地上から旧吉田宿への視界を確保する。
z1063_01.jpg
整備イメージ
9 環境学習プログラムの実施
 まちなみ整備の方法としては、単に公共事業として整備してしまうのではなく、吉田町の歴史・自然環境資源を環境学習プログラムとして取り入れていくことで、郷土の環境に対する住民の理解や親しみを深め、よりよい環境の創出へとつなげていくことができる。ここでは小学校の総合学習を想定した環境学習プログラムを例示する。
 
吉田伝承塾 「豊かな郷土・再発見(全5回)」
主催 : 旧吉田宿伝承館
協力 : 吉田町教育委員会
 
第1回伝承塾 郷土の歴史
 吉田町の発祥から現代に至るまで、郷土が歩んできた道を学習します。特に近代の歴史については吉田町の郷土史家とともに高齢者を講師として招き、実際の体験に基づいた生きた講義を行います。
講師 : 吉田町文化財保護委員/吉田町の高齢者
場所 : 旧吉田町伝承館
 
第2回伝承塾 史跡探訪
 第1回伝承塾で得た知識を元に、秩父氏館跡をはじめとする中世の城や椋神社など、吉田町の史跡を巡ります。また、旧吉田宿に点在する歴史的建築物の建物内を見学させて頂きます。
案内人 : 吉田町文化財保護委員/吉田町観光協会
場所 : 吉田町内
 
第3回伝承塾 自然環境と先人の知恵
 郷土を育んできた自然環境について、昔の人々の生活や産業との関係などを交えながら学習します。
案内人 : 吉田町の環境保全サークル等
場所 : 吉田町内
 
第4回伝承塾 郷土に伝わる伝統技術
 竹を使ったミニ龍勢ロケットの制作やまゆ玉づくりなど、自然環境と結びついた伝統技術を学び、実際に体験します。
講師 : 龍勢まつり実行委員/吉田町の高齢者
場所 : 旧吉田宿伝承館
 
第5回伝承塾 環境を創造する
 身近な環境づくりの一環として、吉田川沿川の植栽活動に参加します。今回は参加者全員で植栽によるアートをつくります。
アドバイザー : 旧吉田宿創造館のアーティスト








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION