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(2)旧杉村邸
所在地   :下吉田3864-2
建築年   :不明(昭和32年以降に小鹿野より移築)
建築面積   :92m2
延面積   :157m2
敷地面積   :995m2
主体構造   :木造
屋根   :瓦葺
階数   :2階
所有者   :吉田町
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▲正面現況
○現況
 東亜酒造の店とともに旧吉田宿に残る町家建築である。部材には一本物の木材が使用されており、現在においては新たに作ることは困難な建物と言える。また、内部は通りに面して土間が配置された典型的な商家の造りであり、また、立派な木材による小屋組を見ることができる。
○歴史的経緯(青葉佐一氏ヒアリング調査による)
 杉村氏は近江商人であったが、明治43年頃先代杉村左吉氏が東京で肥土氏と出会ったのをきっかけとして吉田宿に移り、明治45年店舗商売を始めた。
 本業は太物商(呉服)で、関西、四国の紡績織物を扱い繁昌していた。同じ頃、吉田町では長瀞までの秩父鉄道を吉田、小鹿野方面に延長することを計画して、肥土氏を筆頭に杉村氏らが運動を行ったが成功しなかった。
 吉田小学校建設に伴って広い平地が整地され、自転車が流行したため貸し自転車業を試み、青年に大いに人気であった。当時、自転車は日本ではほとんど生産されていない時代であった。
 昭和6年頃になると、二代目杉村左市氏は当時有名な足袋メーカーだった「福助」の秩父総代理店となり、ゴム運動靴、地下足袋などを大規模に取り扱うようになった。
 戦時体制への移行とともに商売は落ち込み、戦後のものの無い時代には交換所や穀類の配給等を行っていた。
 昭和32年の大火では店が全焼し、左市氏の奥さんの家系である村上商店の建物を小鹿野から移築してきた。これが現在の建物である。
 昭和45年頃、杉村商店は高崎や桐生にいた親戚の元に移った。その後は時々吉田に戻り煙草屋をやっていたが、左市氏の二人の息子も会社勤めとなったため、現在の建物は昭和40年代以降使われていない。
 平成13年、敷地を町が買い取り、建物は寄贈されたため、町有財産となった。
○所有者の利活用への意向
 吉田町では現在、この敷地に3棟の町営住宅を建設する構想を持っている。
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敷地図 S:1/500
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▲1階土間
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▲2階広間
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1階平面図 S:1/150
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2階平面図 S:1/150
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東側(正面)立面図 S:1/150
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南側立面図 S:1/150
○簡易耐震診断
 屋根と土台の一部に腐朽がある。床を含めて補修が必要である。
 建物形状は整形であるが、壁配置は上下の連続性がなくバランスも良くない。耐力壁量が少ないため大地震に対しては補強が必要である。








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