(4)「こみせ」の現況
黒石市の町並構成要素の特色は、表道路に沿って一階表構えに津軽地方では「こみせ」と呼称されている庇屋根が設置されることである。なかでも、中町は「中町こみせ通り」と呼ばれているとおり、「こみせ」が連続して見られる、今では日本で唯一の町並である。この「こみせ」は、越後地方では「がんぎ」(雁木)と称され、積雪地帯の冬季通行用のものであるが、商家のファサードや町並景観を統一する重要な要素の一つにもなっている。
調査地域の表構え延べ485mのうち、一階に庇屋根を設け、これをほぼ一間ごとに立ち並ぶ柱によって支えている伝統的形態の「こみせ」は222m(46%)、軒が高くなり、アーケード化したもの、および「こみせ」を店舗に取り込んだものなど、伝統的形態のくずれたものは169m(35%)、「こみせ」が解体されてしまったもの94m(19%)となる。昭和58年度調査と比較すると、「こみせ」解体の数値が高く、「こみせ」の連続性が失われつつあることがうかがえる(図3-18,20,21)。
図3-18 「こみせ」の景観
図3-20 「こみせ」の形態(平成13年度調査)
図3-21 「こみせ」の形態(昭和58年度調査)