現在の「こみせ」の屋根はすべて柾葺から鉄板葺あるいは柾葺の鉄板覆いに改められており、「こみせ」の路面もほとんどがコンクリート叩きになっている。「こみせ」本来の構造は木造であるが、アーケード化したものなど、伝統的形態のくずれた「こみせ」のなかで鉄骨造は130m(33%)を占めている。なお、伝統的形態を維持している「こみせ」は幅が1.6m前後、軒高は2.3m、屋根勾配は2.0寸勾配前後で、天井は垂木表しである(図3-19,22)。
図3-19 「こみせ」の構造
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図3-22 伝統的形態でない「こみせ」の例
現在、「こみせ」は四季を通して開放となっている。しかし、「こみせ」の柱の痕跡によると、本来は摺り上げ戸が入っていたことが明らかとなる。また、「こみせ」の建具と関連して、上部に幕板を取り付けている例や幕板のかわりに欄間を設けたり、「こみせ」の内法高が若干高くなる出入り口部分に入母屋屋根を設置した例なども見られた。さらに、コンクリート叩きではなく、石敷きの路面も見られ、表構えの規模や業種により、「こみせ」の外観も少しずつ変化していたことがうかがえた。
「こみせ」は風雨などによって破損しやすいので、造り替えしながら維持してきた遺構が多いと考えられ、「こみせ」の建設年代は主屋・店舗の建設年代よりは一般に新しいと判断してよいであろう。したがって、「こみせ」については、いかに伝統的形態を継承しているかが重要となる。