VIII ボランティア等
ボランティア
1.目標
大会運営に必要とされるボランティアの目標人数を4,000人に設定した。
2.組織
大会運営部内に要員班を設置し、募集、登録、各会場への配置作業のほか、大会に向けて各種の研修を行った。
3.募集活動
ボランティアの応募状況の推移を見ながら、募集活動を行った。
(1) 第一次募集
(99年7月1日〜99年12月28日)
実績: |
個人登録/465人 |
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団体登録/7団体/306人 |
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計771人 |
市町村役場や公共施設の窓口に募集パンフレットを常置したほか、新聞等のマスメディアを利用した募集活動を行ったが、大会自体の知名度が低く、さらに募集活動自体も受け身であったため、登録人数の伸びは甚だ低調であった。
(2) 第二次募集
(2000年4月1日〜2001年1月31日)
実績: |
個人登録/1,649人 |
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団体登録45団体/1,795人 |
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計3,444人(一次募集からの通算) |
公式ホームページでの申し込み受け付けを開始したほか、ボランティア専用のホームページを作成し、ボランティア活動に関する情報の発信に努めた。
「ワールドゲームズお知らせ隊」を組織し、県内の大学、短大、企業、既存のボランティア団体を訪問し、大会の周知と併せボランティアへの参加を呼びかけた。
2000年4月から既登録者を事前ボランティアとして班編制し、秋田駅等の街頭での大会PRやボランティアの募集活動を展開した。
個人登録が大幅に伸びた最大の要因は、既登録者が職場や学校において友人等を誘ってくれたいわゆる口コミによる宣伝効果だったと思われる。
大会の認知度が高まるにつれて、ボランティア登録の希望も増え、公募終了後も申し込みの問い合わせは後をたたなかった。ユニフォームの発注やIDカードの作成、研修のスケジュール等の都合もあり、残念ながら登録を断わらざるをえなかった。
(3) ユニフォーム
ボランティアにはユニフォームとしてTシャツ、キャップ、ヒップバック、タオルを用意した。このうち、Tシャツについては、サイズ確認した上で作成し、研修の最終日あるいは大会本番の業務開始日に一式まとめて配布した。
2001年2月からサイズ確認作業を始めたが、確認葉書回収の遅れ、支給枚数決定の遅れや予定外の競技運営スタッフ等のユニフォーム発注などにより、発注及び納品が予定より遅れることになった。
(4) ボランティア参加しやすい環境づくり
ボランティア登録者からの要請に基づいて、その所属する団体・企業の代表者あてに、文書を送付した。文書の内容は、その登録者が、ボランティア活動に遠慮なく参加できるよう、所属先の理解と協力を求めるものとした。送付要請人数は180人であった。
大会終了後、依頼文書を送付した企業等の代表者宛に改めて礼状を送付した。
(5) 最終登録人数
種別 |
登録者数 |
うち県外 |
うち通訳希望者 |
個人 |
1,701 |
111 |
785 |
団体 |
1,243 |
27 |
- |
競技団体 |
500 |
- |
- |
開会式 |
397 |
- |
- |
合計 |
3,841 |
128 |
785 |
※比率は男性約40パーセント、
女性約
60パーセントであった。
(6) まとめ
ボランティア募集開始当初は登録数が遅々として伸びず、必要スタッフ数が確保出来るか懸念されたが、最終的には一般応募の個人・団体のほか、行政、企業からの支援職員派遣を得て、大会を円滑に運営できるスタッフが確保出来た。
第一次の募集活動が大会開催の2年以上前であり、大会の詳細が見えない中で、必要人員を仮定し、募集活動を行ったため、処遇や業務の詳細など、各種問い合わせにも明確な回答が出来ず、登録者にも不信感を抱かせるもととなった。
最終的な業務配置を決定した上での募集活動を行うことが出来ず、更に、追加調査においても勤務可能時間帯の詳細記述を求めなかったことから、大まかな勤務可能日数の登録しかできなかった。このため、室内競技会場や宿泊・輸送業務等、夕方から深夜に及ぶ業務が多いことが判明した段階で、配置調整に苦慮する結果となった。
団体登録者への対応が不明確なまま募集活動を行ったため、3人程度のグループから300人規模の企業登録まで同様の扱いとなり、団体窓口に連絡しただけでは各個人まで十分に情報が伝わらないことが多々あった。登録時点で組織の状況(実稼働人数や連絡方法、各種要望等)を十分に聞き取りし把握しておくなど、団体扱いに関するルールを明確にしておくことが必要であった。
4.研修と配置
(1) 研修
1)一般研修
大会開催の約1年前からワールドゲームズのイメージを掴んで貰うことと、ボランティアの業務や位置付けを理解して貰うことを主眼として実施した。
[1] 第1回一般研修会は2000年6月〜7月、県内を3ブロックに分けて実施した。3会場の参加者は延べ172人であった。
大会概要の説明、ボランティアの業務・処遇についての説明の他、「ボランティア」、「ワールドゲームズ」をテーマとしてのワークショップを行った。
グループでディスカッションすることを通じて、人の意見を聞き、自分の意見を発表する積極性を養い、グループ内での自分の役割を考えることで、「指示待ち」ではなく、自ら考え積極的に行動するボランティアとなってもらうための研修として採用したスタイルである。
[2]第2回一般研修会は、2000年10月28日の横手・六郷会場と本荘・岩城会場を皮切りにして、2001年5月27日の首都圏在住ボランティア (東京・全共連ビル) まで、一次配置会場別に2〜3会場程度をまとめて実施した。
参加者は11会場で延べ512人であった。
同じ会場で活動する仲間との交流の機会として、研修終了後は事前ボランティアのボランティアサポート班が主催する小パーティーが開催された。
内容は第1回研修会の内容に加え、会場別運営計画の概略 (会場運営スケジュール、業務の特色など) を説明した。
2) 会場別研修
大会開催の約10ヶ月前に行った一次配置を受け、約6ヶ月前から配置会場毎に、当該会場全体、班別の業務に関する集合研修を実施した他、会場毎に現地でのシュミレーションを行うなどの研修会を実施した。
平均実施回数は1会場あたり、3〜4回であった。
3) ボランティアリーダー研修会
事務局とボランティアのパイプ役、ボランティアの相談役として、必要なリーダーを事務局で指名・選出、研修会を実施した。選出にあたっては、研修会やプレイベント等への参加状況を参考にし、年代別に指名した。参加者は延べ99人であった。
[1]第1回2001年3月4日 (秋田市)
長野オリンピックを経験したボランティアリーダー等をゲストにトラブルの対処法等について研修した。
[2]第2回2001年6月9日 (秋田市)
リーダーの役割等についてワークショップを実施した。
しかし、リーダーの役割について各配置会場の責任者とのコンセンサスが十分でなかったため、各会場におけるボランティアリーダーの位置付けや役割が抽象的になり、参加者からは、不安や戸惑いの声が聞かれた。
4) 語学ボランティア研修会
2001年2月25日に「語学ボランティア」の心構えをテーマとした講演とワークショップを実施した。参加者数は109人であった。
「語学ボランティア」=「通訳業務専従」という先入観や、そこから生じる優越感などを払拭することも1つの目的としていたが、完全に払拭するには至らなかった。
5) ワールドゲームズボランティア大会
ボランティア登録者の連帯感の醸成と意識高揚を主目的として2回開催した。
[1]第1回
開催日:2000年8月19日(土)
参加人数:約350人
長野オリンピック日本代表の荻原次晴氏の講演の他、元NAOCボランティア担当者、スポーツボランティアグループメンバーを交えて「国際スポーツイベントにおけるボランティアの心構え」についてパネルディスカッションを実施した。
[2]第2回
開催日:2001年1月28日(日)
参加人数:約300人
桜美林大学副学長の諸星裕AOC常務理事の講演の他、「国際人への第1歩」「スポーツボランティアの自覚」「ワールドゲームズの新知識」の3つの分科会に別れて意見交換を行った。
分科会終了後ボランティアサポート班主催の懇親パーティーを開催し、約200人の参加があった。
[1]国際理解を深めるボランティアセミナー
大会を契機として県民の国際理解の促進やボランティアのネットワーク化が期待されていることから、(財)秋田県国際交流協会と共催で2000年に9回開催した。参加者は合計約100人であった。
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テーマ |
秋田 |
横手 |
鷹巣 |
1 |
コミュニケーション |
10/15 |
9/30 |
9/30 |
2 |
食文化 |
11/12 |
10/22 |
10/22 |
3 |
ボランティア |
12/3 |
12/10 |
11/23 |
[2]高校生ボランティアセミナー
「絆を求めて語り合おう」
2000年12月22日〜23日に、ボランティア登録をしている高校生を対象に、外国人との交流を通じコミュニケーションの手段や手法を考える機会として、1泊2日の日程でセミナーを開催した。参加人数は15人であった。
(2) 配 置
2000年10月から会場別マニュアル作成作業の進捗度合いを見ながら、秋田市以外の競技会場、秋田市内の競技会場、本部関係の順に配置作業を進めた。
配置基準は登録申請時の希望業務地を最優先としたうえで、交通手段を考慮し居住地から出来るだけ近い会場になるように配慮しながら年齢、性別、希望業務のバランスや通訳希望者の多寡、対応可能言語とそのレベルを勘案して調整した。
通訳希望者のレベル判定については、登録時の本人の申告を基本としたが、申告レベルと実際レベルの差異のリスクを抱えているため、英語はTOEIC・IPテスト、それ以外の言語に関しては語学研修講師による面接形式のレベル判定を行い、配置作業の参考とした。
TOEIC・IPテストの受験者数は9会場248人、面接受験者は8言語で延べ102人であった。
本部関係の運営マニュアル作成作業が遅れたため、必要要員数のデータが得られず、2000年12月末終了を予定していた配置作業も年明け1月下旬までずれ込むことになり、一時的に未配置状態のボランティアが400人以上発生し、不安を与える結果となってしまった。
また、各会場から提出された必要要員数の中には、シフト勤務の有無、語学スタッフの要否を考慮していないものが含まれており、かなりの修正の必要性を含みながら1月末で配置及び通知作業を完了した。
2001年3月から各会場担当者が、会場配置者に対して業務の種類や必要人数データをもとに業務の割り振りを行った。
配置基準は登録申請時の希望業務を優先しながら特技、職業を考慮して行った。
配置通知の発送と共に最終配置調整のための勤務可能日調査票を発送し、5月末日までに二次配置を完了した。
二次配置通知に同封した勤務可能日調査の回収を受けて、各会場担当者が日時の要員数調整作業を行った。
しかし、日別の勤務可能者数の差が大きく、調整作業は難航を極めた。また、運営の詳細が固まるに従って、当初、会場から申請のあった必要要員数自体が大幅に増加するなど、複数会場にまたがった調整作業を余儀なくされた。
その結果、最終配置の決定通知が7月末までずれ込むこととなった。
5.まとめ
ボランティアの募集・研修・配置全体を通じての問題点は以下のとおりである。
(1) コーディネーターの必要性
ボランティアに通じ、大会全般の運営を把握できるコーディネーターがいないため、全ての関係作業が手探り状態となり、常に不安を抱えたまま作業を進めざるを得なかった。
ボランティアスタッフに多くを依存するこの種の大会には、コーディネーターが不可欠であることを痛感した。
(2) 作業量と担当スタッフの権保
約4,000人のスタッフをコントロールするための作業量の認識が甘かった。膨大な作業量に比して、窓口となるボランティア担当 (開会時は要員班) のスタッフ数が専属1人、兼務1人と絶対的に不足していた。ボランティアとの意志疎通が十分に出来ず、不要な軋櫟を生じることもあった。
しかし、事前の活動の中からボランティアの仲間づくり、組織化の動きが芽生えた。また、ワークショップを主体とした研修等を通じ、現場のアクシデントやトラブルにおいても、事務局に頼り切りではなく、自分たちで考え最善の対応をしていた。
ボランティアの協力がなくてはワールドゲームズ秋田大会の成功はなかったと言えよう。
結果として、多くのボランティアと感動や満足感を共有できたことは、秋田大会における大きな収穫の一つであった。