II 式典・セレモニー
開会式
1.概要
開会式は、2001年8月16日(木)、午後3時〜5時(開場は正午)、秋田市八橋陸上競技場を会場に行われた。
入場券は、当日販売分も含めて完売し、招待者も含め11,507人の観客と、およそ1,600人の選手・役員で満員となった。
好天にも恵まれて式典はほぼ予定通り進み、観客、選手・役員、出演者が一体となって大いに盛り上がり、関係者の予想もしくは期待以上の好評を博した。
開会式の模様は、NHK教育テレビで全国に生中継され、秋田県内では18パーセントを超える視聴率を記録した。また、FMラジオでは全国中継、AMラジオでは県内中継され、多くの人が楽しんだ。
2.準備
(1) 制作体制の確立
2000年4月、組織委員会事務局の拡充に伴い、開会式の本格的な制作作業に着手した。最初の課題は、制作を進めるための体制づくりであった。
「秋田の力を結集し、やり遂げることで大きな自信につなげたい」という大会全体の方針を踏まえながら、一方で、地元ではまったく経験・実績の無い中で、「国際大会にふさわしく、秋田を発信するに足る、質の高い開会式」を限られた予算と時間で実現することができる体制とは何か、検討・協議を重ねた。
この過程で、秋田市出身で、長野オリンピックの開・閉会式を手がけた今野勉さんと出会った。
これがキーポイントとなり、今野さんを開会式総合プロデューサーに迎え、地元で作る開会式制作チーム(秋田県を代表する、ソフト系の企画会社、ハード系の企画会社、芸能集団の三者で結成した共同企業体)が実務にあたる体制で、制作を進めることとした。
また、今野さんの助言で、組織委員会事務局も、開会式の運営のみを担当するのではなく、開会式プログラム等内容の制作にも積極的に関わっていく体制とした。
(2) 開会式コンセプト
2000年8月からは、今野さん主宰のプロデューサー会議を中心に具体的な中身の検討に入ったが、まず、次のような開会式コンセプトを掲げた。
「伝統・躍動・感動」〜大会コンセプト
伝統(Tradition)
「ようこそ秋田へ」のもてなしの気持ちを秋田の伝統芸能をもって表現し、観客・選手ともに楽しめる歓迎の開会式とする
躍動(Action)
伝統芸能をダイナミックに再編成し、子供達の参加を含めて、未来への躍動を感じさせる開会式とする
感動(lnspiration)
選手、観客、出演者が、一体となって参加する部分を作り、感動を共有する開会式とする
(3) 制作のポイント
制作にあたっては、挨拶などの、欠かせないけれども退屈な時間になりがちな、いわゆる“式典的要素”と、“アトラクション的要素”を融合させ、全体としての統一感を出すことに腐心した。
このため、入場前から大道芸などで雰囲気を盛り上げたり、会場装飾に高さ6メートルにもなる華やかな梵天(横手市)を使うなどの仕掛けをするとともに、冒頭に合唱団と吹奏楽による壮大な式典賛歌を持ってくる、選手が着席のために移動する際にも布と大会テーマソング演奏によって演出する、などとプログラムにも工夫することとした。
また、祭り・伝統芸能をメーンに据え、この種のイベントにありがちなマスゲーム中心の構成は採らないこととした。
これは、そもそも大規模なマスゲームを作るだけの時間的・経費的余裕が無かったこともあるが、長い年月を経ている祭り等には本物が持つ、人を魅了する力があり、秋田はそうした素材が豊富であるとの認識があったためである。また、ワールドゲームズが既存の施設を使い、ハード面での使い捨てを戒めているのだから、ソフト面でも開会式のためだけに使うものは最小限にした方が、大会の特色に合うとの思いもあった。
とはいえ、単に、祭り・伝統芸能の羅列にならないよう、組み合わせ、切り口を斬新なものにすることによって、地元の人も初めて観るようなものにするように配慮した。
なお、今野プロデューサーの協力も得て、ポイント毎に記者会見等を開き、開会式のPRにも努めた。
(4) 制作作業
各種の祭り・伝統芸能は、陸上競技場という本来は運動を目的とした施設で、真夏の日中に行うのは困難なものも多い。また、それぞれに意味や背景があり、物理的条件さえ整えば良いものでもない。演出上の要請を一方的に押しつけるわけにはいかず、調整は楽な業務ではなかった。
また、マスゲーム中心の構成ではないとはいえ、広大な会場で空間的広がりを持たせ、単調な構成にしないためにも、やはりマスゲームは重要な要素で、短時間で出演・練習の段取りを組むなどの調整をし、少ない回数で振り付けるのも大変であった。
これらを可能にしたのは、祭り・伝統芸能の保存団体や地元市町村、多数の子供達をまとめてくれた学校、そして施設を管理する秋田市などの積極的な協力である。また、出演者自身が、熱心にしかも楽しんで取り組んでくれたことも、必ずしも十分な段取りのできなかった事務局を救ってくれた。
3.内容
(1) 開式前プログラム
開場は、入場時の混乱を避けるため、開式3時間前の正午とした。このため、大型画面による秋田県及びワールドゲームズPRビデオ、スポンサーCMの上映などのほかに、次のような開式前プログラムを実施し、特に子供達の演技が喝采を浴びた。
・マーチングバンド演奏(太陽幼稚園、吉田小学校、秋田県警音楽隊)
・ナミーハギーダンスショー(スタジオS、浜田小学校)
また、開式前オリエンテーションとして、フィナーレ曲「ヤートセ」のかけ声の練習や、入場行進曲に含まれる「県民の歌」の合唱指導を行った。
(2) 開幕
国際的な作曲家である石井眞木さん作曲で、今野プロデューサーが作詞を手がけた式典賛歌「まほろばの秋田」。演奏は400人の県民合唱団と70人の自衛隊音楽隊で幕開けした。
曲の途中で行われた、今大会に出場する世界のトップジャンパー30人によるパラシューティング降下が観客の度肝を抜き、ワールドゲームズ競技の質の高さや面白さをアピールするのに大いに貢献した。