(a)水質分析
【調査方法】
前述の2水域において、2001年5月に予備調査を行い、6月から12月まで毎月1回、水温、塩分濃度、溶存酸素量(DO)、pHの4項目を水深0、1、3、5、7、9mでそれぞれ測定した。さらに、バンドン採水器を使用して水深1m、5mならびに海底上1mから海水を採取し、栄養塩(ケイ酸態ケイ素、リン酸態リン、硝酸態窒素、亜硝酸態窒素)、化学的酸素要求量(COD)、懸濁物質量(SS)の分析用試料とするため、保冷して研究室に持ち帰った。栄養塩分析用の海水は採水後直ちにろ過して-20℃で冷凍保存し、オートアナライザー(ALPKEM杜・Model3590)を使用して分析した。化学的酸素要求量(COD)の分析は水質汚濁調査指針(日本水産資源保護協会、1980)に従い、アルカリ性過マンガン酸カリウム−ヨウ素滴定法で行った。懸濁物質量(SS)の分析は、沿岸環境調査マニュアルII(日本海洋学会編、1990)に従った。
【結果および考察】
水質調査の結果を分析項目ごとに図1〜20に示した。ページの上段は宮城県本吉郡唐桑町の舞根湾(以下舞根湾)、下段は宮城県牡鹿郡女川町の竹ノ浦(以下竹ノ浦)についての調査結果である。
水温の季節変化は、図1、2に示した。両水域において水温は、調査開始の5月、6月から上昇し、9月に舞根湾で22.6℃、竹ノ浦で21.5℃の最高値を示した後に12月にかけて下降した。5月、6月から8月にかけては、両水域で表層と下層の間に温度差があったが、舞根湾では10月、竹ノ浦では9月以降にその差がなくなった。水深間の温度差は7月に最も大きく、水深0mと水深9mの差は舞根湾で約7℃、竹ノ浦で約6℃であった。舞根湾の場合、6月から8月にかけて水深0、1mと水深3m以深との間の温度差が大きく、その差は7月に約3℃であった。竹ノ浦では、舞根湾に比べて11月から12月にかけての水温の低下が緩やかであった。2001年11月下旬に黒潮系暖水勢力が強まり、沿岸の水温が急上昇した影響によると思われる。舞根湾は閉鎖性の非常に高い湾であるため、その影響が小さかったと思われる。
図1.舞根湾の水温の季節変化
図2.竹ノ浦の水温の季節変化
溶存酸素量(DO)の季節変化を図3、図4に示した。舞根湾(図3)では、6月から9月にかけてDOは低下し、9月に最低となった後に12月にかけて上昇する傾向が認められた。水深間のDOの差は9月に最も大きくなった。この9月に水深5mで測定期間中の最低値(5.5mg/l)を示した。一方、竹ノ浦(図4)では、DOは6月に最高を示した後に9月、10月にかけて低下し、11月に一時上昇したものの12月に再び低下した。最も深い水深9mのDOは、6月から9月にかけて他の水深よりもかなり低下していたが、11月に上昇して他の水深よりも高い値となった。
図3.舞根湾の溶存酸素(DO)の季節変化
図4.竹ノ浦の溶存酸素(DO)の季節変化
水産用水基準では、DOの値は6mg/l以上とされている。舞根湾の場合、調査期間を通してDOは低めに推移し、9月に水深5mでこの値を下回った。水深5mのDOが低下し、それ以外の水深帯で6mg/l以上の値を維持していた理由は不明である。竹ノ浦の場合は舞根湾と比べてDOは高めに推移しており、特に問題がないことが明らかとなった。