2.事業の遂行に関する内容
(1)事業計画の概要
今回の事業にあたって、まず沿岸海洋環境の現況とその季節変動を調査するために、2ケ所のモデル海域を定めた。モデル海域は、宮城県本吉郡唐桑町の舞根湾および宮城県牡鹿郡女川町の竹ノ浦の2ヶ所である。舞根湾は、気仙沼湾北東側の奥に位置し、非常に閉鎖的な湾である。一方、女川湾に面している竹ノ浦は舞根湾ほど閉鎖的ではない。しかし、女川湾は近年環境の悪化が懸念されている水域である。閉鎖性水域の環境改善を目標とした環境調査を行うため、これらの2水域を本研究のモデル海域とした。
次に、それぞれの海域における環境調査項目を決定した。環境の変化は様々な形で現れるため、具体的な指標を設ける必要がある。本研究では水質・底質・浮遊生物・底生生物・養殖垂下物の5指標を調査の対象とし、それらの状態の季節変動に関する情報を収集した。
水質の調査項目は、過去の知見と比較するため、一般に環境調査項目として扱われることが多い水温、塩分濃度、溶存酸素量(DO)、pH、栄養塩(ケイ酸態ケイ素、リン酸態リン、硝酸態窒素、亜硝酸態窒素)、化学的酸素要求量(COD)、懸濁物質量(SS)とした。
底質の調査項目は、粒度、泥温、酸化還元電位、元素(CNS)分析とした。本調査では、養殖生物を垂下している場所とその周辺では底質がどの程度異なるのか調査するために、実験に使用している筏の直下および周辺の海底の2ヶ所で採泥を行った。また、底質分析では、潜水による徒手採泥と元素分析計の使用によって極めて精度と信頼性の高いデータが得られた。
浮遊生物については、主にクロロフィルa量と植物プランクトンを調査した。また、底生生物は、前述の底質調査を行う際に採取した泥中の生物について分類を行った。
養殖垂下物の調査は、篭に収容したマガキを実験用の筏に垂下して行った。実験用の筏とは、舞根湾では当研究所所有の実験用筏であり、竹ノ浦では東北大学大学院農学研究科水圏動物生理学分野所有の実験用筏である。
調査終了後、「どのように改善するか」という対応策を考えるために重要なのは、正確で詳細な情報をわかりやすい形で提示することである。海洋環境調査はこれまでも関係機関によって多くの水域で詳細に行われている。しかし、その結果として示されているのは多くの場合一次情報である。これらの一次情報は、長期間にわたって徐々に進行してきた環境変化を知る上で重要なものである。これらの情報を利用できれば、過去の環境状態を把握し、さらに現在の状態を認識することが可能になる。そこで、本研究では収集した調査結果および関係機関によって集積された過去の情報をデータベース化してより使いやすい二次情報へ変換する。さらに写真などの画像とともに、沿岸住民にわかりやすい情報をインターネットで提示する方法を提案する。このような方法は本研究で調査を行った水域に限らず、他の多くの水域においても適用でき、その有効性は大きいと考える。