5.ろう両親の役割
・ 娘はろうあである。中学2年の時まで普通学校に通っていたが、非常に苦しんで途中から学校に通わなくなった。突然聞こえなくなったとショックがあって、一緒に頑張ろうと言ったが子供は聞こえないことを受け入れることが出来なかった。話をしようと思っても目を合わせようとせず、コミュニケーションがとれなくて非常に困った。いろいろなところに相談にいったが、ドラマの「星の金貨」がきっかけになり耳が聞こえないことが自覚でき、自分の障害を認識して、考えも変わり、ろう学校に行く決心がついた。ろう学校に通い今は筑波技術短大の3年で来年卒業の予定だ。今日も一緒に来ている。そういった意味でもろうあ者の誇りを持つということが、非常に大切だと私は考えている。
・ 2番目の子供が高校生の時の話だが、普通学校に補聴器を付けて通っていた。その時に、「リハビリ」という言葉は、もともとラテン語で「人は一人一人違い、人間として復活をする」というような言い方をされた。娘は「補聴器を付けているので、私は人間ではない」と思ったようだ。それで家に帰り「リハビリ」の意味を私に聞いた。「広辞苑」で調べると意味が違っていた。その意見に対して反論がある時はきちんと意見を言いなさいと言ったが、娘はできないと言った。私は修学旅行の説明会の時によい機会だと思い先生にお話をした。沢山の先生が集まっていて、手話通訳を通して「人間にあらず」は訂正してほしいと話した。先生は説明が足りず申し訳なかったと言われたが、私に謝っていただくのではなくクラスの皆にもう一度「リハビリ」について話していただくようにお願いをした。聞こえなくても親として子供の教育について、社会の中では何も考えずに発言されたこと自体に差別的ことがあったりする。それに対して敏感になり、また意見を出して運動もしていかなければならないと感じた。
・ 幼稚部の教育の仕方は、10年前はキュードだったが、今は随分変わって、手話や指文字を使っている。とても良い。1クラス、4, 5人ぐらい。
・ 学校の中での情報提供の方法だが、待っていてもダメで、自分が日本ろうあ連盟の会員であれば「日聴紙」とかいろんな情報を持っているので、会議に参加して、それを自分でビラなどを作ってコピーをして配るなどするとよい。自己流でも良いからまず自分から情報を流すことが大切だと思う。
・ 最近のろう学校に手話通訳の制度が分からない人達が多い。入学式に手話通訳でなく手話の出来る先生がいると言うが、子供達はそれで良いけれども、成人のろうあ者にとっての通訳は必要だと一生懸命話をすると、次の年から予算を作って通訳を派遣出来るようにしてもらえた。それで、学校の社会見学とかに通訳が付くようになった経過もある。
・ 幼稚部で勉強をして、それからインテグレートをして普通小学校に入っていくと、小学校では社会見学がある。親が手話通訳の派遣の依頼をする。本当は子供の派遣は対象外だけど手話がわかる条件付きでとにかく付いた。社会見学より手話の勉強が楽しかったと聞こえる子供達が言う。聞こえない子供が手話で情報を得ることが出来ることを聞こえる子供にまず理解をしてもらうことにより、周りの人達や子供も分かってくる。親が子供のためを思って手話通訳制度を依頼するなど、いろいろな方法を使っていくことにより、学校も聞こえる人達も変わっていく。親自身が変えていきたい気持ちを持って、まず頑張らなければと思う。
・ 皆さんに聞きたいが、通訳の制度を使って学校の懇談会に参加しているか。それは学校に頼むのか、通訳派遣を直接頼むのか?
・ 手話通訳が必要だという時、自分で頼むのではない。学校に「通訳を準備しなさい」と言う必要がある。是非そういう手段を使っていただきたい。親が必要なのだと学校に言って、ろうあ者の保護者がいる時は必ず準備が必要だと学校に理解してもらう。また、こういう時は手話通訳制度を使ったほうが良いとか情報を提供していく。我々自身がしっかりと自信を持って学校に教えていってほしいと思う。
・ ろう教育は何かと言うと、「見る言語」として受けるべきだと思う。健聴者の場合は聞こえるから「聞く言語」、ろうあ者の場合、聞こえないのにわざわざ口話にこだわって一生懸命聞こえないのにしゃべろうとするのは時間のムダだ。キュードも同じだと思う。
・ 私自身、キュードは分からない。息子はいろいろな県のろう学校を回ってきたが、キュードの方法はまちまちで、今は使ってない。息子自身は手話がいいと言う。ろうの家族として、ろう者に誇りを持つよう厳しく教育をしている。大きくなれば、社会に出て自立できるように子育てをしたいと思っている。ろう学校卒業後に学校に対して不満があっても言えないのは、先生は手話が分からないので、コミュニケーションがとれないからだ。話を書いて説明してもコミュニケーションには限界がある。学校の時に、口話が上手いので、インテグレートしたらと言われていたが、高等学校の三年までろう学校にいた。大学に入る時にお金の援助がないので大学に行かなかった。娘に「大学にいきたい?」と聞くと、「いいえ」と答えた。大学よりも、手に職を付けたいと言うが、娘はろう学校の先生になりたいと思っているらしく、親は「それはいい」と思っている。お金は「どうして貯めよう」と夫婦で話している。皆さんに聞きたい。ろう学校の小学部では、聞こえる学校と比べて勉強の進度はどうなのか。普通の学校と教科書は同じだが、同じ学年に同じ学力がついているのか課題として残っている。