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第7分科会 統合教育
討議の柱
 [1]難聴学級、一般学級でのとりくみ
 [2]統合教育とコミュニケーション手段
 [3]これからの統合教育
共同研究者 前田 浩(大阪市立聾学校)
司会 西村 則子(大阪府吹田市立吹田第二小学校)
上農 肇(金沢市総合教育相談センター・
元金沢市立明成小学校きこえの教室)
レポート
 「聴覚障害児のための親子手話学習会「コアラの会」と 普通学級における聴覚障害児に対する情報保障の取り組み」
 西 澄江(全国手話通訳問題研究会石川支部教育班、金沢市立兼六中学校)
 「インテグレーションを経験した私」
 高木 亜由美(福岡教育大学 学生)
 「わたしにとってのインテグレーション」
 宮崎 昌子(滋賀県立大学4回生)
 「難聴学級の役割〜手話を活用し、聴覚障害の理解と認識を深める〜」
 足立 貢(大阪市立酉島小学校)
課題
 統合教育とろう学校・難聴学級との機能分担を、教育ソース全体の中で共に見直していく時期に入っている。
 新しい世紀におけるインテグレーションの可能性、その中でのろう学校の専門性との提携のあり方について討論を深めたい。
 
1日目
 
 
共同研究者:前田(大阪市立聾学校)
 今で言うインテグレーションは1960年代に岡山・東京あたりで始まった。私自身も1966年からろう学校から普通校にインテグレーションした。あの頃のインテグレーションはサポートのないインテグレートだった。今で言う通訳を付けるとか要約筆記を付けるとかノートテイカーを付けるとか、もっと進んでいるところでは先生自身が手話をやりながら授業を進めるというやり方、つまり聴覚障害のある子どもが分かる授業、そういう学校を作るという考えが全くなかった。40代から50代でインテグレーションした人は、言葉どおりお客様であった。私自身は120dBスケールアウトで、補聴器はつけているけれど全く効果がなかった。一番前の席に坐っていても聞こえない。とにかく勉強が分かるとか友達を作るなど、夢にも思わなかった。だから私たちの世代のろう者は、いまのインテグレーションの様子を知らないのでインテグレーションに対してマイナスイメージが大きく、インテグレーションを目の敵にしているろう者も多い。80年代に入ると何らかのサポートが少しずつ入ってくるようになった。FM補聴器を置くとか、担任の先生が補聴器のことや聞こえない子どもの言葉や心理についてろう学校に行って聞いたり、そういう関係の研修会に行ったりするようになった。しかし、その頃は、そういう具体的なサポートが進まない一方で、地域保障論(校区保障論)、つまり障害がある子どももサポートがあってもなくても、生まれ育った地域で教育すべきだという考えが先行した。だからその聞こえない子が持っている様々な条件を無視して普通校に入れるという一部の教師や親の考え方が先行して、子どもは何も分からないまま普通校で学ぶということがあった。しかし90年代に入ると、まずいろいろな面で社会が大きく変わってきた。聴覚障害者を含めて障害を持つ人に対して、社会全体が受け入れだした。手話に対する社会的な認知というのが広がってきた。そうした変化がろう学校に対しても担任の先生に対しても外圧という形で広がってきた。また、ろう児を持つ保護者の考えも変わってきた。私達が子ども時代には、聞こえないことは仕方ないから、せめて話せるようにしてほしい、読み書きができるようにしてほしい、手話は特にいらない、普通の人と同じようになってほしいという幻想をもって、育てられてきたが、そういう親の考え方も少しずつ変わってきている。子どものありのままの姿、聞こえないこと、手話も補聴器も使って生きていくということを自然に受け入れ出した。そうした社会、親、教師の変化が学校の内外で変化が出てきている。第1回目大阪で行われたこの大会で発表したレポートと、今回のレポートを比較しても歴然としている。その頃の内容は、「とにかく難聴学級をつくりたい」「どうすれば子どもの聴力が上げられるのか」といった内容で、時代の変化を感じる。足立先生のレポートの生徒が今本校の中学部にいる。すごく賢くていい生徒で、話していると時折、足立先生の名前が出る。足立先生に手話を教えてもらったこと、自分が先生と関わっていく中で自分の考えが変わったこと、あの頃は周りの友達にも反発したりして苦しかったけれど、今は少しずつ小学校にいた時の自分が見えてきたという言い方をできるようになっている。そういう変化があった中でろう学校に来るようになった。酉島小学校にいた生活の積み重ねがあり、今の彼女があると思う。
 過去は、ろう学校か難聴学級か普通学級かの選択をせまられたけれど、これからはそれぞれの教育の環境、リソースの中での機能の分担あるいは連携プレーといったことが重要である。そのためにもまず、インテグレーションしたろう者の経験から学ぶ必要があると思う。過去を批判するのでなく、これからどうずればいいのかという積極的な提案をお願いしたい。








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