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第5分科会 障害認識
討議の柱
 [1]親は聴覚障害者の子どもに何を望むか
 [2]子どもは親に何を望むか
 [3]成人聴覚障害者の役割
 [4]ろう学校と成人聴覚障害者の関わり
 [5]ろう学校の障害認識の変化
共同研究者 安藤 豊喜(財団法人全日本ろうあ連盟)
司会 松浦 友紀(大阪市立聾学校)
長谷川 達也(新潟県立新潟養護学校・
元新潟県立新潟聾学校)
レポート
 「滋賀県立聾話学校で学んだ事」
 安井 悠子(日本福祉大学2年生)
 「地域で学びあい生きる」
 梶原 桂子(石川県聴覚障害者協会)
 「障害の捉え方で親が変わる 親は子どもに何を望むか〜」
 岡本 みどり(全国ろう児を持つ親の会)
 「中学部生徒の聴覚障害観」
 名波 綾子(静岡県立沼津聾学校)
 「連携授業「社会福祉」を通して障害認識について考える」
 瀧本 孝美(和歌山県立和歌山ろう学校)
課題
 聴覚障害に対する社会の意識の変化の中で、聞こえない子どもの障害認識の土壌となる親や教師また子どもに関わる人たちの障害認識のあり方についても、具体的な取り組みの例を出し合いながら考えていきたい。
 
1日目
 
 
司会:松浦(大阪市立聾学校)
 まず、共同研究者から障害認識の考え方など問題提起していただきたい。
 
共同研究者:安藤(全日本ろうあ連盟)
 障害認識というテーマは、ろう者として永遠のテーマだと思う。「ろうでよかった」「聞こえていたら、平凡な人生だったかもしれない」「家族もろうで、とても幸せ」という声があり、それも障害認識の一つだと思う。私自身、自分の障害認識の見極めができていないと思う。本人、親、社会のそれぞれが、「ろう」という障害をどう見るかの論議が必要である。本日、試案を提示したい。
 障害認識の前提は、社会的な環境と関連付けて捉えるべきである。障害者自身、家族の認識も刻々と変化している。障害のある者もない者も平等に一緒に生活していくというのがノーマ ライゼーションの考え方。障害者を変えるのではなく、社会環境を変えるという考え方が大切である。この理念は、障害認識を考える上で基本となる大切なこと。以前は「障害認識」と言わず「障害を受容する」と言っていた、私は9歳の時に病気で失聴したが、「聞こえない」ことを自分で認められず、死ぬことも考えた。昔は社会の理解もなく、おし、つんぼ、という言葉が平然と使われていた。「障害受容」「障害克服」は、社会的な問題ではなく、家族の問題だった。今は社会的な問題へと変化してきている。
 法的にはバリアフリーと言われ、手話通訳制度の法制化などどんどん変化してきている。具体的に言うと欠格条項の改正がある。親の会、難聴者、手話関係者と共に全国運動を展開した。230万人を超える署名、 1000以上の地方議会での採択、7000万円を超えるカンパが寄せられた。これは国民全体が障害による法的な差別を認めないという思いの表れである。薬剤師法、 検査技師法などが改善され、医師法や看護婦(士)法も、効果的な代替・サポート方法が整備されれば、資格取得も見通しが立つ。省令の中に手、話通訳など障害を軽減する人的なサポート体制を盛り込んでいくことが課題。手話通訳、FAX、Eメールなどが認められれば、免許を取れる可能性もでてくる。また、「障害者の人権・選択権」というものが大事にされつつある。この大きな流れを我々障害者自身、親の会、ろう学校の先生などが把握していかねばならない。
 教育現場では、どんな問題があるか。小田先生の記念講演、私はとても感動した。ろう学校に、ろう運動・成人のろう者の力を導入すべき、という話があった。今までろう学校は外部との連携が弱かった。特に手話、成人ろう者の運動や生活を認め、ろう学校から成人ろう者と連携していこうという視点も弱かった,ろう学校を変えていかなくてはならない。ろう児・難聴児を持つ親は、確固たる信念を持つことが大事。子どもをろう学校に預け、不満があっても我慢するというのが今まで。しかし、子どもは成長し、この社会で実際に生活していかねばならない。実社会の力を借りて、子どもの障害認識、子の聴力レベル、生活レベルを親がきちんと理解しなくては。手話が必要な子、口話が必要な子など様々な子がいる。親自身が子の聴力・言語能力を掴むことが大事。親の希望や社会的な抵抗で教育の選択が行われ、聞こえない子どもが不幸になることもある。親の的確な障害認識が必要である。
 昔、私がろう運動に入った頃は、ろう学校の先生と言えば、ろう教育の専門家で、神聖にして侵すべからず、という存在だった。社会生活の中でも、情報保障などろう者をサポートする制度作りに一生懸命だった。専門家として、そういう面で頑張っていただきたいのだが、最近では教師の側に障害を持つ子どもに対する人権意識とか、権利意識とかが少し弱いのではないかと思う。親、ろう学校の教師が、正しく障害認識することで変わっていくことを私からの問題提起とし、あとはレポートを含めて全体の討議の中で方向性を探りたいと思う。
 
司会:松浦
 今日は5人のレポーターすべてに発表していただきたい。発表後に質疑応答をする。








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