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3.これからのろう教育の課題
 ろう教育とその課題は、ろう学校でろう教育の課題について本気で考えることだと思います。言葉を教えるというだけではただの訓練で、教育とは言えないと思います。
 教育については、次の3点に基づいて議論する必要があると思います。
 
[1]子どもの権利条約(児童の権利条約) 「子どもは守る必要がある」と「子どもは対等である(差別してはならない)」という矛盾した要素をどう統一するかという問題があります。
 
[2]教育基本法 「言葉が上手になること」とは書いていない。学校教育法で、国語について書いてあるが、いろいろある中の一つにすぎません。
 
 ・人格の確立を目指す。
 ・平和な国、社会を作る。
 ・真理、正義を愛する。
 ・個人を大切にする。
 ・働くことの大切さを知る。
 ・健康な国民を育てる。
 
ということが書いてあり、これらのことを考えて、ろう教育の課題を整理していく必要があります。
 
[3](障害児教育に)専門の先生がそろっていない 中学校・高校の場合には、科目ごとに専門の先生がいますが、ろう学校の場合は、ろうの子どもについて知識のない先生が多い。人事異動でろう学校へ行ったため、そこで教えながら(ろうの子どもについて)勉強をする。子どもが先生に手話を教えるという状況もあります。子どもが先生の実習材料になっているのであり、果たしてこれだけでよいのかと疑問に思います。
 また、(口話を必要と考える教師と手話を必要と考える教師との)お互いの交流がありません。今の口話教育には、手話を身に付けている教師が非常に少なく、手話について議論する前に、教師自身が手話を覚える必要があると思います。つまり、お互いの立場や考えをよく理解した上で議論をする必要があるということです。
 
 新しい歴史を作る会の歴史教科書については、個人的に反対です。普通の学校にはほとんど採用されなかったのに、東京・愛媛の養護学校とろう学校が採用をしました。なぜ採用したのか? 内容としては、言葉や表現が難しいと思います。一般の学校は地域との結びつきが強く、地域ともめないようにと考えたようですが、障害児の学校なら文句は出ないだろうという考えがあったのではないかと思います。何にも知らない先生をろう学校へ赴任させるのと同じことではないかと思います。(ろう教育について)分からない人が決めていくというようなことは改めていかなくてはならないと思います。








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