発刊のごあいさつ
ろう教育の明日を考える連絡協議会
代表世話人 安藤 豊喜
ろう難聴児教育の豊かな発展を願って、石川県金沢市で開いた「第13回ろう教育を考える全国討論集会」の報告書発刊にあたり一言ごあいさつ申し上げます。石川討論集会の特徴は、21世紀に入って初めて開いた討論集会であることです。20世紀の到達点の検証と21世紀への展望をろう学校等の関係者、ろう、難聴児を持つ親、聴覚障害者、手話関係者、学生など814人が集まって討論しました。その記録を参加された皆さんにお届けできることを大きな喜びとしています。
今、日本の教育は、人口構造の変化や価値観の多様化のなかで国立大学の統廃合や独立行政法人問題が提起されるなど、変革の時代を迎えています。ろう教育現場においても生徒減で集団教育が困難になるなどの課題が提起されていますが、ろう、難聴児を持つ親から「教師と生徒が理解しあえる手話を取り入れたコミュニケーション環境」の要望がろう学校に出されるなどの前進的な変化も出ています。
また、ろう学校の地域の特殊教育相談センターとしての機能が徹底されるなかでろう団体との連携が図られ、手話、口話の対立から「いかにろう学校の活性化を図るか」の取組みが中心になるなどの発展を見せ始めています。それに、文部科学省は、「21世紀の特殊教育のあり方について」を発表しましたが、「教育、福祉、医療、労働等が一体となって乳幼児から学校卒業まで障害のある子ども及びその保護者等に対する相談支援を行う体制を整備する」との方向も出ています。
これには、手話言語を選択肢として位置づけるなどの基本的な部分の確認が必要ですが、社会全体として生涯にわたって支援する方向は歓迎されるものです。13回を数える「ろう教育を考える全国討論集会」がこのような前進的な変化に果たした役割を確信しつつ、石川討論集会の熱気が込められたこの報告書によって更なる発展への展望が全体のものになることを期待して私のごあいさつと致します。