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2.今後の課題
[1]現在の不登校問題
 文部科学省が、「不登校は誰にでも起こりうる」といっているにもかかわらず、世の親は「わが子には起こらない」と考えている。この、親が我がことと捉えていないことが一番の問題であり、予防策を講じにくい原因となっている。それゆえ親は我が子の「不登校へのSOS」や「朝になると胃痛・腹痛・頭痛・身体のだるさ等を訴える」ことを不登校への前兆とは捉えられないのである。また、子どもが不登校になっても、「親がそれを受け入れようとしない」ということになってしまう。
 この段階から、私どものような相談機関を訪ね、相談員がそれに対応するということになるが、ここで適切な対応ができればよいのである。ところが、多くのカウンセラーやフリースクールでは、「子供が自分で動き出すまで待ってあげましょう」という指導をして、結局、「何年たっても待つだけで、少しも解決にならない」ということにもなる。これも問題である。
 対応が良く、何とか学校に戻ることができても、その後のフォローがうまくいかないと、2度3度と不登校を繰り返したり、「ひきこもり」状態になったりする場合もある。また、何とか復帰して卒業しても、その後の社会参加が難しいのが現実である。そこで今後の課題としては、次の5項目が挙げられる。
 (1)親は他人事と思わず、事前の学習が必要
 (2)親や教師は、不登校への対応方法の学習が必要
 (3)我々には、適切な対応ができる相談機関の情報提供が必要
 (4)「不登校生へのフォロー体制」
 (5)「不登校生の社会参加への対応整備」
 
[2]東京都東久留米市立東中学校教諭の森薫氏が、読売新聞の論点(平成14年2月8日付)に、「孤育てが阻む子の成長」というタイトルで、次のような一文を寄せていた。この中で、氏は「育ちそびれた子供たち」という表現で、示唆に富んだ内容となっているので、あえて全文を紹介したい。
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[3]文部科学省は、昨年9月、93年度に不登校だった、当時中学3年生の5年後の追跡調査の結果を発表した。この様子は新聞等で報道されているが、その中で注目したい点がいくつかあったので示しておきたい。
 調査では、現在学校にいっているが仕事(アルバイトを含む)についている人が、70%を越えているのは喜ばしいが、何もしていない人が23%あり、同年齢の平均よりかなり高い。これがまず問題である。次に中学卒業後5年というと20歳になるはずだが、それでも今フリースクールに通っている人が5.4%存在する。一般的な認識では、フリースクールは小・中学生の不登校生が行くところであるが、そこに20歳の人がまだ5.4%も通っているというのは何を意味するのであろうか。
 これは、フリースクールが不登校生を囲い込んだ結果、そのぬるま湯から社会に出て行けない人たちが、そのままフリースクールにいるということではなかろうか。これは、本人にも家族にも、そして社会にとっても悲劇であり、損失でもある。不登校生の場合、無理して学校に行かなくても良いが、社会には必ずでて欲しい。親もいつまでも元気でいるわけではない。彼らはいつまでフリースクールにいるのであろうか。新聞等では全く触れていない点なので敢えて指摘しておきたい。
 次に、彼らは、不登校当時も卒業後も、職業教育・訓練、技術・技能等の指導、職場体験などを求めているということである。この点も留意しておきたい。
 
[4]今年度は、新聞各紙が「社会参加」という言葉を多く使ってくれたためか、あるいは2年目で多少ともこの言葉が定着してきたためか、相談会での社会参加の相談が多かった。ところが、残念ながら身勝手な要望が多く、それに答えるのはきわめて困難である。例えば、「うちの子に合った仕事はありませんか」、「私にできる仕事はありませんか」というのはいいほうで、「午後からの仕事で正社員として働けるところは?」、「収入が多くて勤務が自由な会社は?」「ボランティアもアルバイトもインターンもだめです。すぐ正社員で」というような無理難題を持ちかけてくるのである。それもほとんどが本人ではなく親である。
 何故こんな親が増えてしまったのか。親に対する教育が今後の一番の課題であると思われる。
 
[5]昨年も指摘したことであるが、今年度の開催地でも「周囲の目が気になって、不登校の相談会に行きたくてもいけない」という人が多かった。特に地方でこの「不登校を隠す」傾向が強く、「このままひきこもってしまうのでは」という心配もある。








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