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4.シンポジウムおよび相談会I
春期開催(初開催地域)
 「不登校の進路と社会参加のネットワークづくり」シンポジウム及び相談会に先立って、各新聞社にプレスリースを送り、以下のごとく告知記事として掲載された。
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(1)埼玉(大宮)
期日: 平成13年6月2日(土)
会場: さいたま市大宮ソニックシティー
来場者: 140名
相談員: 5名
受入機関: 10団体
相談ボランティア: 7人
概要: 新聞の告知記事に「ひきこもりに対する職業紹介も含む」と書かれたので、ひきこもりの人達及びその親が多数来場した。そこで午後の相談会の会場を、進学相談と社会参加相談とに分けて開催した。
[1]「不登校生の進路と社会参加」シンポジウム
パネラー: 株式会社橋本食品 代表取締役 石井 重通 氏
  鴻沼福祉会あざみ作業所 施設長 酒井 依子 氏
  相談ボランティア 鈴木 信平 氏
  相談ボランティア 楠 亜由実 氏
司会: 社団法人 日本青少年育成協会 専務理事 近藤 正隆
討議内容:
近藤:(社)日本青年育成協会の対応として(1)現在ひきこもり中の人に対しては専門の相談員が訪問カウンセリングを行う(2)外に出られるようになったら同じような状態の人達の友達づくりのためのグループを作る(3)「生活状態を変える」「常識を身につける」「仕事をするためのスキルを身につける」という研修を行う(4)インターン、アルバイト、ボランティアという形で社会に参加していく、という方法を考えている。但し社会に参加できるようになるまでにはかなりの時間がかかる人が多いので、すぐにも仕事に就けるというようには思わないでほしいと説明。
石井:子供の頃、学校の成績は悪かった。ヨーロッパに行って様々な職業の人に会い、学歴より技術(特に職)を身につけようと思った。公務員を辞めて魚屋を始めた。いまは北海道の海産物を仕入れて、各地のデパートで物産展を行い、かなりの収入を上げている。入社の際、学歴は一切問わず、やる気があれば年齢も問わない。リストラ組も入社している。但し、接客が出来ることと一定期間殆んど休みなく働き、長期出張のように各地を渡り歩くので、精神的にも肉体的にも丈夫な人でないと務まらない。そのかわり給料は一般の会社員の倍位にはなる。不登校経験者でも全く同じように扱うので、希望者は是非挑戦してほしい。
酒井:社会福祉法人で障害のある人の働く場づくりを行っている。身体、精神、知的、それぞれの障害者が8施設に45人居住している。あざみ共同作業所は知的障害者の授産施設。仕事内容は下請け、内職的なこと、草木染等の他、EMぼかしで堆肥を作って売る、牛乳パックのリサイクル等おこなっている。障害者の希望としては(イ)現在給与が月1万円位なのでもっと高くしてほしい(ロ)友達がいないので休日もあまり外出しない、いろいろな人と話がしたい。そこでボランティアをしてくれる人がいたら、ぜひ話し相手になってほしい。休日、週末、行事の時の付き添いがほしい。ボランティアはいつでも大歓迎。
鈴木:不登校の原因が明確な人と不明確な人がいる。自分は不明確な方。不登校生のいる親の方々に伝えたいことは、本人と親では時間に関する感覚が違うと思うので、当分の間親は本人のぺースに合わせてほしい。私は母親が理解してくれた(信頼してくれた)ことが嬉しかった。ひきこもりの時には、一日中ゲームをしていた。続いてビデオ(映画)になり、自分の世界を持とうとしていた。母の願いは「あなたを笑わすこと」といわれた。フローベルの言葉に「人生の絶望の中でも輝いていけること、辛くても頑張れるのは素晴らしい。」というのがある。本当にそう思う。
楠:私立中学校で不登校になり、公立に転校という形で卒業したが、そのままひきこもり、何もせず5年経った。これではダメだと思い、一人で勉強して大検に合格した。予備校で学んだが大学は不合格、再度予備校に行って専門学校に入った。現在3年なので来春卒業予定で、心理相談員になりたい。アルバイトもしており、最初はウエイトレスで今ではホテルの配膳係。元ひきこもりが今接客をしているのが自分でも不思議に思える。
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[2]相談会
 個別相談を希望する人が朝から詰め掛け20人を超えてしまったので、シンポジウムと平衡して隣室で相談に乗った。やはりひきこもりの相談・就職相談が多かった。シンポジウムの後の質疑応答でもあったことだが「昼夜が逆転の生活なので午後からできる仕事はありませんか。」「ボランティアには興味がないので正社員として働ける仕事を」「ボランティアで(無料で)相談員を我が家に派遣してほしい」というようなわがままな要求が多く、まずは親の教育が必要なことを実感した。
 この日の成果としては進学相談では首都圏で6月に行われる相談会が大宮だけということもあって多数の来場者があり、自分の進路の目途がつき皆満足して帰ったこと。やっと外に出られるようになったばかりというひきこもりの人が来て、出会った私共の相談員と信頼関係が生じ、その後相談室にこられるようになった。当初歩くのも大変だった人が、みるみるしっかりしてきたこと来場者がこのような初の試みを高く評価してくれたこと、など喜ばしい成果もあった。
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