1. 大分県の私立竹田南高校では、同校卒業生で就労や社会参加を希望する者に、職業訓練と研修を行っている。その後卒業生ではない人の受入希望にも答えるため、同校の親の会に加入することを条件に受入を始めた。定員は20名と少ないが、同校には寮もあるので、今後より充実した受入体制を作る予定があり、本協会も協力を約している。この学校の例は、今年度のシンポジウムでの具体的な成果と言えるし、他の教育機関も是非参考にしてほしいと考え、以下に詳細を出しておく。
同校では、職業訓練及び社会復帰のための訓練・研修を行っている。職業訓練は研修生の職業能力の向上と適性の把握、基礎的技能の訓練及び就労にたえられる体力づくり等を通して、社会復帰訓練・研修は個人的・集団活動・集団生活等の体験を通して、社会に適応できる能力と自信を養成する。ことを目的としている。
同校研修施設の指導方針
*能力に応じた指導を。
*働く喜びと生き甲斐を感じさせ、社会的自立を。
*集団・社会の中で自分の存在を確かなものとし、自分の場を少しでも感じられるように。
自分や他人を尊敬するに値する個人であることを知る能力、自ら考え、結論を導き、意思決定する能力、自分の講堂に責任を持つ能力などを養うよう努める。
(1)生活指導
個々の能力を把握し、その能力の活用を通して自信と意欲を育て、能力が発揮できるように生活習慣・技術の習得を基本とする。
*生活習慣と身辺自立の確立
*感情表現技能に向上
*対人関係の持ち方
(2)職業指導
個々の能力、状況に応じた作業・仕事を通して、興味・労働意欲の開発・向上を図る。
*状況に応じた挨拶
*持続力
*製作の喜び
*責任感
研修内容・期間・定員
科目 |
期間 |
定員 |
主な研修内容 |
食品加工 |
1-2年 |
5名 |
パン製造および販売、その他の加工品製造 |
その他 |
3ヶ月-2年 |
15名 |
作品製作・接客・ボランティア・職場実習、高校就学・大検受験の援助 |
2. 相談ボランティアに対するピア・サポート研修
今年度本プロジェクトの一環として、不登校経験者を相談ボランティアとして募集し、現在約300名が登録している。彼等にアンケートしたところ、カウンセラーとして社会参加したいという希望者が非常に多かったので、相談会のための第一次カウンセリング研修の後、秋から第二次研修を行った。この研修を終えると実に64時間の研修を受けたことになるので、本協会と研修を委託したNPO法人ピアカウンセリング研究会の両者連名で研修修了証を出す。彼等は4月からピア・メントーという名称で上記研究会のカウンセラーと共に、訪問相談にも行く予定をしている。これは無償のボランティアではなく、多少でも収入になるように考えている。
「ピアメントーの報告書」
当NPO法人 APL・ピアカウンセリング研究会は、平成13年の9月16日に代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターで行われた、「もうひとつの進路相談会2001」に不登校から立ち直った(サバイバー)と、不登校を持つ父母の為の相談会に参加した。
サバイバーは、自分の体験したことが同じような不登校の子供を抱える父母達の何か参考になればということで、自らの体験を話すために参加し、当研究会のピアカウンセラーは、混乱している親御さんの心の整理のお役に立てればという形での参加であった。
大きなホールで20組以上のサバイバーとピアカウンセラーが待機する中、大勢の父母の相談が寄せられた。盛況ではあったが、サバイバーが自らの体験を話すという行為が、何処かぎこちなく、またサバイバー自身もきちんと自らの気持ちを充分に父母の方々に伝えられたかということに関しては、観察していた結果からも不完全燃焼のように感じられた。
為に社団法人 日本青少年育成協会さんの御協力を頂き、このサバイバー達にコミユニケーション手段として、すなわち正確な応対の元になるものである傾聴ができる事を学んでもらおうと「ピアカウンセリングレッスン」を行うこととなった。熱心なサバイバーの参加により、傾聴のみならず相談行為まで発展できるような学習効果があがり、素晴らしい学生の相談員が誕生した。しかしこの学生の為の学生の相談員の名称が無かった。成人社会では、ピアカウンセラーという名称で通用しているが、学生が学生の為の相談行為を行うということは、学生同士というピアではあるけれども、それをピアカウンセラーと呼ぶには対応がホリスティックでないということからも酷な気がした為、ここに、学生が学生の為に行うピアカウンセリング行為(相談行為)をする者を「ピアメントー」という名称で呼ぶことにした。
《ピアメントー(Peer Mentor)》
メントーとは、個人名と、意味としての二通り有り、個人名のメントーは、ギリシャ神話のオディセウス(Odysseus)の友人で、彼がトロイ(Troy)出陣のとき、その子のテレマシュウス(Telemachus)の教育を託した良い補導者のことである。意味としては【賢明な顧問】【良い指導者】であり、通常【良き相談者】として使われている。
現在イギリスにおいても、引きこもり不登校の問題が深刻であり、イギリスがメントー(Mentor)という国で認めた資格として行っている名称である。
イギリスにおけるメントーは、【良き相談者】という意味を持ち、それは特殊技能を持つ普通の庶民であり、その特殊技能(例えば大工とか、デザイナー等)であったとしたら、その大工、デザインのやり方等を学校などに行かない子供等に教え、仕事や、やり方を学んで行く過程で子供等とのコミユニケーションを取り、子供等の心を開いていく事をする者の事で、現在は数百人の一般の特種技能者等が認定されている。
日本においては、現在ピアカウンセリングが、【良き話し相手】【良き相談者】として存在している、社会人の場合はピアカウンセラーという名称で動いているが、学生が学生の為にピアカウンセリングをする場合は、現在はピアサポートという名称を用いて、社会人との区別をしている。為に社会人の場合はピアカウンセラーという名称で動いているが、学生達の中では現在名称がない。故にピアカウンセリングのレッスンを受けた、ピアカウンセラーとなる学生を
【ピアメントー】…すなわち、同じ環境にいる学生のピア(仲間)の【良き相談者、良き話し相手】として、ピアカウンセリングのレッスンを終了したものをピアメントーという名称で呼び、学生のピアカウンセラーと社会人のピアカウンセラーとの区別をつけるものとしたものである。
ピアメントーは、NPO法人 APL・ピアカウンセリング研究会の基本レッスン64時間を修了した者に対し、社団法人 日本青少年育成協会より与えられる資格であり、有資格者には修了カードが渡され、今後各相談会においてそのカードをテーブルの横に置き、相談行為を行うことの他、社団法人 日本青少年育成協会において、青少年とその父母の為に設置された、《グリーフ(深い悲しみ)の電話》(命の電話のようなもの)の相談員として、又毎月末土曜日に行われている父母の為の「勉強、相談、講演会」での、体験談の発表、相談行為等がある。
このような形でのピアメントーのスキルアップは、今後大規模な相談会や引きこもって外出できない児童などに対しての大きな戦力になるだけでなく、ピアメントー個人にも自信とやりがいが、生れるのではないかと考える。無論、育成したピアメントーに対するスーパービジョンは、NPO法人 APL・ピアカウンセリング研究会が随時行っていく。
社団法人 日本青少年育成協会会員
NPO法人 APL・ピアカウンセリング研究会
理事長 柳沢淳子
3. グローバルアカデミー
様々な障害を持つ人たち(LD児・障害児・境界児等)や不登校・ひきこもりの人たちのための社会参加を支援する施設である。
東京都からホームヘルパー講習指定団体及び訪問介護業者の認可を受け、ホームヘルパー3級及び2級の資格取得と同時に将来への就職へとつなげていけるような学習カリキュラムを用意している。
具体的には、3年間で中国医学や整体などを学びながら、無償ボランティア、有償ボランティアを経験させ、最終的には訪問介護を行っていくのである。能力・適正などを見極めながら、学習体験を進めていけるので、不登校やひきこもりの人たちにとっても無理なく社会参加できるようなシステムである。特にボランティアの対象となる人たちは、高齢者や障害を持った人たちであるので、自分のしていることが人の役に立っているという実感を得やすいとも言える。
福祉の分野であるから、本人の好き嫌いや向き不向きはあるだろうが、社会参加の一つの方法として、また、「研修⇒訓練⇒実習⇒就職サポート」といった一連の流れを持つ数少ない施設として特筆すべき施設であると考えている。
4. CNNインターナショナルインターンシップについて
沖縄県にあるフリースクール、アカデミアインターナショナルの代表である廣谷佳己氏は、元ベンチャー企業として福岡で航空会社を立ち上げた経歴を持ち、その時に米国の放送局であるCNNよりインタービューを受けて、ビジネスアジアという番組で放映されたことがCNN放送局との初めての出会いであった。
その後廣谷氏が社長を辞任し、不登校児の社会的自立を助けるべく沖縄県でフリースクールを開設、今から2年前に社会と関わる事が困難な飯島くん(千葉県出身)という青年を預かった。当時彼は22才で、少年の時期から不登校気味であったが、なんとか通信制高校を卒業したものの仕事に就くことができず、親御さんから是非と言われ、約1年間沖縄で社会と関わるトレーニングを24時間体制で受けた。
アカデミアは当時ジュニアコンベンションというイベントを沖縄県で行い、全国から23人の不登校児が参加した。この事が当時、読売新聞で取り上げられ、その記事を読んだ労政ジャーナルと言う月刊誌がこのイベントを特集し、その記者である秋庭さんがCNNと親しくしており、そこからCNNクルーの好意でこのインターシップの話が実現した。飯島くんは始めてのインターンとして7ヵ月間、メディアの技術を習った。沖縄でサミットが行われた時は、アカデミアの先生達も関わり、ローカルスタッフもアカデミアがお世話した。
その後、飯島君はCNNの紹介でNHKの製作会社に見事に就職し、現在に至っている。CNN側も元不登校という見方をしないで、ほんとうによく彼をサポートし、今年も受け入れたい旨を伝えてきた。それは、飯島君が素晴らしい仕事をしたことと、彼が社会不適応というバリアーを見事に取り払ったからである。
昨年9月、東京で開催した“相談会”で、佐久間陽平くん(22才)が沖縄のアカデミア知り、なんとか社会復帰を果たすべく、沖縄に行き既に8ヶ月になった。彼は大学までいったのだが、途中で自分をコントロールできなくなり、安定剤を服用し、どうしようもない状態に追い込まれ精神的にも崖っぷちに追いやられていた青年である。現在は沖縄で落ち着いて英語や中国語を勉強するかたわら、生きるためのスキル、働くための訓練を受けて、今年の7月からCNNのインターンに参加する予定である。世界的メディアであることから、タイミングを見極めて採否を決めていただく予定であるが、ひきこもり体験のある飯島君の努力と、CNNという企業の、いかにもアメリカ的な懐の深さ、そして何よりもアカデミアの熱心な指導が2人目のインターンを生むことになった。これは特筆すべきことであると考えている。