3. もの作りで社会参加。
自分で作った物を、店舗を持たずにインディーズブランドとして売る、あるいはインターネットで売る、専用ホームページを開設して売る、そんな若者が増えている。店を持たなければ、アパートの一室でも製作が可能で資金も必要ない。作る(創る)ことが趣味のような人には誠に都合が良いし、他人とのコミュニケーションがにがてな人にも合っている。従来からデパートの手作りフェア、(社)ホビー協会のホビーショー等はあるが、いずれも参加者は主婦が中心であった。さすがに若者はそんな場がなくても、自らその場も作り出す。アクセサリーや手工芸品から、靴、洋服まで作る物も様々。売れるということはそのものに価値があるということで、自信になり自立につながる。社会参加への道は広がる一方である。
ITの活用では学生援護会が携帯電話を使った登録制のアルバイト情報配信を行っている。この方式はアルバイトをしたい人が、時給、職種、勤務地等の求職条件を登録しておくと、週2回メールで条件に合った仕事を配信してくれる。受身で情報が入手できるというのは若者感覚に合っているし、不登校経験者には特に向いているとも言える。同様にH.Pを使った逆求人で、求職者が自分のプロフィールをネット上の掲示板に書き、関心を持った企業等がメールを送って接触するという方法もある。これなら地域による情報格差も解消するように思われる。
4. NPOでインターン
「今若者にとって最も「かっこいい」のは、有名企業への就職ではなく、「やりがいを感じること」を仕事にし、それで「食べていけること」」と語るのはNPO法人エティックの宮城治男代表理事。若者は経済的豊かさより「社会に役立ちたい」と考えている。そこでNPOサポートセンターでは、NPOに就職活動中の学生を派遣するインターンシップを推進している、NPOにとっても優れた人材を見出し、育成することができ、一石二鳥である。又、同センターではNPOプラットホームという活動も行っており、NPOと企業とボランティアが共に活動する場となっている。
米国ではNPO職員は1040万人、就業者の7.8%を占める。ボランティアもフルタイム換算で900万人分の仕事をしており、合わせると約2000万人となる。我が国でも、このような形で雇用の受け皿としてNPOを見直す必要があると思うし、協会でもこの事業のネットワークを生かして具体化に着手している。但しNPOも企業と同様にそこの職員と共に仕事に携わるのであるから、インターンだから、ボランティアだから、不登校だから、という甘えは許されないので、やはり事前の研修が必要となろう。
5. 大学の仮入学制を活用して進学する
新聞情報では、東京都多摩市にある多摩大学(グレゴリー・クラーク学長)では、今春から学生を暫定的に入学させ、一年後の成績で合否を決定する「チャレンジ入試制度」を導入するという。この制度は日本の大学では初めてのことで、大学側では、「今の学力にとらわれず、これから伸びる資質を求めたい」としている。受験生は研究したい事を選んで論文を提出し、面接と基礎的な学力試験で暫定合否が決まる。暫定合格者は授業料を納めれば一般入学者と同じ授業を受けながら、一年間特別の課題に取り組み、課題に合格した時点で入学金を納め正式な学生となる、
実は放送大学では以前から類似の制度があり、15才以上であれば誰でも科目履修生として登録し、16単位とればその時点で放送大学生となる。放送大学の場合は通信制なので通信制高校のように自ら学ぶ必要があるが、放送視聴が中心なことと、各地に学習センターがあってスクーリングや教授陣も充実していることが特徴である。放送大学に関しては文部科学省、各県教育委員会でもわかるので、学ぶ意欲のある不登校経験者には特に有効な方法と思われる。
今までは外に出られる一般の元不登校生の社会参加の方法を示してきた。ところが、近年不登校から「ひきこもり」というケースが多く見受けられるようになってきた。そこで、より困難を伴う「ひきこもりの就労」についてもふれてみたい。
「ひきこもり」の対応では最も有名な福生市のNPO法人「青少年自立援助センター」は過去30年近く、彼等の社会参加と取り組んでいる。昨年末からは「コミュニティ・アンクル・プロジェクト」という、地域の事業主の協力で職業人として育ててもらう形がスタートした。この方式は、まず受講者が事業主の所に行って週2〜5日で三ヶ月位の研修を受ける。事業主には受講生から月3〜5万円の授業料が支払われる。研修後事業主の判断で雇用できるか同業者を紹介するか、という方法をとる。従来の職業訓練と違うのは、当初授業料を払って研修を受けることと、そのかわりに就労の機会が高まることである。このプロジェクトがひきこもり経験者の特性や能力を生かした自立する場となってほしいと思う。
YSC コミュニティーアンクルプロジェクト チャート
一方静岡市の元気学園では、不登校やひきこもりの経験者が社会参加できるよう「働けるようになるコース」を設置した。これは半年間の社会適応訓練と病院でのインターンを受けて、人とのコミュニケーションの取り方や働くために必要な事を学び、それが継続してできるようにサポートする。インターン先の病院では、高齢者のお世話をする手伝いをする。
適正が認められると、4ヶ月目からは有償ボランティアにもなり得る道がある。コース終了後適性が認められれば、仕事の紹介ができるという。これも「コミュニティ・アンクル・プロジェクト」と同様、授業料を払って社会参加のための研修を受け、適否を見て終了という方法をとっている。これはひきこもりの就労というかなり難しい課題への対応策として、彼等にとっても、雇用者側にとっても非常に現実的な方法と思われる。元気学園ではこれ以外にも以前から自前で元気食堂を運営しており、実習を重ねながらその人の能力や適性に応じて皿洗い、調理、配膳、会計と昼夜2交代で就労に導いている。代表者の清水氏は「本当は授業料がほしいところですけど“働く”ということを感じさせるためにアルバイト料を払っているので、経営的には大変ですよ」と語り、十分働けるようになれば全国チェーンを持つレストランへも紹介していると言う。
ひきこもりの就労の最後に、当協会が直接行っている対応を示したい。これはひきこもりの人への社会参加のための講座である。