2−3.我が国における実態
(1)浚渫土砂海洋投入の実態
1)浚渫土砂の海洋投入処分に係る規制
我が国では「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」に基づき、総理府令で定める基準(表2−21)により判定して、浚渫等により発生する水底土砂の海洋投入処分(及び埋立処分)の方法(船舶からの排出海域及び排出方法など)を下記のとおり規制している。水底土砂の分析方法は環境庁長官が定める方法で含有量試験ではなく、溶出試験によるところが海外と大きく異なっている。「底質の暫定除去基準」に基づき、水銀及びPCBを基準濃度以上含有する水底土砂は海洋投入処分を禁止されている。
表2−21 総理府令による水底土砂の判定基準
  |
項 目 |
判定基準 |
1 |
アルキル水銀化合物 |
検出されないこと。 |
2 |
水銀又はその化合物 |
0.005mg/L以下 |
3 |
カドミウム又はその化合物 |
0.1mg/L以下 |
4 |
鉛又はその化合物 |
0.1mg/L以下 |
5 |
有機リン化合物 |
1mg/L以下 |
6 |
六価クロム化合物 |
0.5mg/L以下 |
7 |
ひ素又はその化合物 |
0.1mg/L以下 |
8 |
シアン化合物 |
1mg/L以下 |
9 |
PCB |
0.003mg/L以下 |
10 |
銅又はその化合物 |
3mg/L以下 |
11 |
亜鉛又はその化合物 |
5mg/L以下 |
12 |
ふっ化物 |
15mg/L以下 |
13 |
トリクロロエチレン |
0.3mg/L以下 |
14 |
テトラクロロエチレン |
0.1mg/L以下 |
15 |
ベリリウム又はその化合物 |
2.5mg/L以下 |
16 |
クロム又はその化合物 |
2mg/L以下 |
17 |
ニッケル又はその化合物 |
1.2mg/L以下 |
18 |
バナジウム又はその化合物 |
1.5mg/L以下 |
19 |
有機塩素化合物 |
40mg/kg以下 |
20 |
ジクロロメタン |
0.2mg/L以下 |
21 |
四塩化炭素 |
0.02mg/L以下 |
22 |
1,2-ジクロロエタン |
0.04mg/L以下 |
23 |
1,1-ジクロロエチレン |
0.2mg/L以下 |
24 |
シス-1,2-ジクロロエチレン |
0.4mg/L以下 |
25 |
1,1,1-トリクロロエタン |
3mg/L以下 |
26 |
1,1,2-トリクロロエタン |
0.06mg/L以下 |
27 |
1,3-ジクロロプロペン |
0.02mg/L以下 |
28 |
チウラム |
0.06mg/L以下 |
29 |
シマジン |
0.03mg/L以下 |
30 |
チオベンカルブ |
0.2mg/L以下 |
31 |
ベンゼン |
0.1mg/L以下 |
32 |
セレン又はその化合物 |
0.1mg/L以下 |
(注)判定基準:「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令第5条第1項に規定する埋立場所等に排出しようとする金属等を含む廃棄物に係る判定基準を定める総理府令」(昭和48年2月総理府令第6号、最終改正平成7年10月総理府令第51号)で定められた水底土砂に係る判定基準
・水銀等を基準濃度以上溶出する水底土砂(総理府令で定める基準に適合しないものに限る。有害水底土砂という。)は、海洋投入処分を禁止。
・鉛等を基準濃度以上溶出する水底土砂(総理府令で定める基準に適合しないものに限る。これも有害水底土砂という。)は、固形化すれば、海洋投入処分が可能。当該廃棄物の船舶への積込前にその排出に関する計画が基準に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して、海上保安庁長官の確認を受けることが必要。排出海域はA海域(図2・8参照)。
・銅等を基準濃度以上溶出する水底土砂(総理府令で定める基準に適合しないものに限る。特定水底土砂という。)は、海洋投入処分が可能。当該廃棄物の船舶への積込前にその排出に関する計画が基準に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して、海上保安庁長官の確認を受けることが必要。排出海域はA海域。
・田子の浦港及び三島川之江港から除去された水底土砂で熱しゃく減量20%以上のもの(有害水底土砂及び特定水底土砂を除く。指定水底土砂という。)は、海洋投入処分が可能。排出海域はC海域。
・有害水底土砂、特定水底土砂及び指定水底土砂以外の水底土砂(同法の規定により廃棄物に該当する物に限る。一般水底土砂という。)は、海洋投入処分が可能。排出海域はF海域。
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出典)「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の解説」(海洋汚染・海上災害防止法研究会編、平成8年7月)
図2−8 廃棄物排出海域図
2)我が国における浚渫土砂の海洋投入と有効利用(浅場造成等)の実態
平成7〜9年における水底土砂の排出状況は図2−9に示すとおりであり、1,700万〜2,600万m3で推移している。このうち海洋投入処分量は460万〜850万m3、埋立処分量は1,300万〜1,700万m3であった。
出典)海上保安白書
図2−9 水底土砂の排出状況
図2−10〜11に平成6〜11年度の運輸省港湾建設局、沖縄総合事務局及び北海道開発局管内における浚渫土砂海洋投入量と有効利用量をとりまとめた。全国の海洋投入量は、210万〜270万m3で推移しており、浅場造成等の有効利用量は280万〜400万m3で推移している。
また、平成6〜8年度において浚渫土砂の海洋投入処分を行った民間業者の例は表2−22に示すとおりである。
出典)国土交通省港湾局資料
図2−10 全国港湾における浚渫土砂の海洋投入量と有効利用の推移
出典)国土交通省港湾局資料
図2−11 全国港湾における浚渫土砂の事業者別処分量
表2−22 浚渫土砂の海洋投入処分を行った民間業者の例
地区 |
名称 |
浚渫場所 |
第二港湾建設局 |
臨海部立地工場(石油) |
塩釜港 |
臨海部立地工場(石油) |
塩釜港 |
臨海部立地工場(石油) |
横浜港 |
臨海部立地工場(鉄鋼) |
横浜港 |
臨海部立地工場(電力) |
横浜港
川崎港 |
出典)国土交通省港湾局資料