[3]スペイン
浚渫土砂は、表2−14に示すとおり、汚染物質の濃度に応じて3つのカテゴリーに分類され処理されている。
表2−14 スペインにおける浚渫土砂のカテゴリー
分類 |
性状 |
処理 |
カテゴリーI |
生物相に対する影響がない、もしくはほとんどない浚渫土砂 |
海洋投入に問題なし
(物理的な影響のみ考慮) |
カテゴリーII |
中位な汚染濃度の浚渫土砂 |
監視計画のもとで海洋投入 |
カテゴリーIII |
高位な汚染濃度の浚渫土砂
(汚染度によりIIIaとIIIbに分かれる) |
海水から隔離されるか、CEDEX勧告*に従い適切な処理を行う |
IIIa:おだやかな処理が適応可能 |
IIIb:厳格な処理が必要 |
注)*CEDEX勧告:CEDEXがスペイン海洋学研究所と共同で作成した「スペインの港湾からの浚渫土砂管理に関する勧告」(1994年)。(CEDEX:公共事業研究・実験センター)
1994年に、2000年を目標として以下の項目に関しての検討を行うことが提案された。
・スペイン国内の海岸におけるバックグランドの測定
・浚渫土砂への人為的な影響の解析
・有害物質に関する生物試験(急性・亜急性、生物濃縮)技術の検証及び改良
・浚渫土砂の生体内への取り込み度及び毒性
化学的評価に基づく浚渫土砂の管理体制については、1994年の時点で確立されている。一方、浚渫土砂の生物学的評価については、1994年以後生物試験に関する検証がいくつか行われているが、公式な方法はまだ確立していない。
また、生物試験に関連する浚渫土砂のサンプリング法、前処理法、生物種の選択等に関するガイドラインもまだない状況である。
表2−15に、スペインにおいて現在検討されている浚渫土砂の評価方法に関して示す。浚渫土砂は、生物への試験対象により4つに分類される。
表2−15 スペインにおける浚渫土砂の評価方法
試験物質 |
和訳(案) |
試験対象 |
備考 |
Whole
sediment |
底質 |
浚渫土砂そのもの |
  |
Sediment
elutriates |
溶出液 |
清浄な海水を用い浚渫土砂から溶出したもの |
粒子を含むかにより2種類に分類 |
Sediment
extraction |
抽出液 |
溶媒により抽出されたもの |
化学分析における溶媒抽出に同じ |
Pore water |
間隙水 |
遠心処理により分離されたもの |
  |
現時点で生物試験に使用する生物に必要と思われる基準
・結果が生態学的に直接関連しており、現地での事象に関連づけられる
・エンドポイントが十分な感度を持ち、ランクづけができるほどの違いがでる
・試験期間が短く、再現性があり、コントロールの結果が安定している
・テスト方法が標準化されている
・同じ種類の毒物に対してエンドポイントが同じように反応する
・供試生物の飼育管理が容易であり、多様な被試験物質に対して、通年を通して実験可能である
スペインでは、これまでの生物試験に関する検証を通じて、SQT(Sediment Quality Triad)と呼ばれる評価体系により浚渫土砂を評価することを提唱している。
SQTとは、
・現地における化学物質の存在量
・現地で見られる生物学的影響
・実験室下で測定された個々の化学物質の毒性量
の3つのカテゴリーからなり、これら全てのカテゴリーを考慮した浚渫土砂の評価値としてSediment Quality values(SQV)が定義された。
SQVは、多変量解析により物質ごとに算出される。
結論として、浚渫土砂の評価には、化学分析と生物試験の両方を考慮した統合的評価が必要であり、そのためには、
・生態系への影響の過程を質的にとらえる
・汚染の原因を特定し、SQVを算出することが重要である、としている。
(出典)
・スペイン生物試験関連資料