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図2−4(3) グリーンブックにおける底質評価方法の概要
b.GIPME報告書に記載されている方法
 GIPME(Global Investigation of Pollution in the Marine Environment)の「底質の評価に関する手引き」(2000年)において付録2(注:資料編に示す)で示されたヨコエビ類を用いての生物試験方法を示した。GIPME報告書の中では特にグリーンブックについては触れていないが、本報告の発表年の方がより最近であることから類推して、最近の主流の方法を紹介したものとみられる。
 
〔河口域及び海域に生息する端脚目を用いての浚渫土砂生物試験〕
(a)試験の概要
 4種類のヨコエビを用いて10日間の急性毒性試験を行う。試験は、1Lの容器を用いて175mLの試験土に約800mLの海水を加えて10日間ヨコエビを暴露し、生残個体を計数して評価する。80%以下の生残率で有害と判定する。試験条件は表2−10、スケジュールは表2−11に示すとおりである。
 
(b)供試生物について
 本法では、供試生物はAmpelisca abdita 、Eohaustorius estuarius、 Leptocheirus plumulosus、Rhepoxynius abroniusの4種類を用いる。これらの種は入手が容易で、実験室での扱いが簡単といった理由から選択された。
 A.abditaはスガメソコエビ科の巣穴を形成する種である。メキシコ湾と大西洋岸のメイン州中央部からフロリダの中央部に分布する。
 E.estuariusはツノヒゲソコエビ科の巣穴を持たない種である。太平洋岸のブリティッシュコロンビア州南部からカリフォルニア中央部の浅い護岸などに分布する。
 L.plumulosusはユンボソコエビ科の巣穴を形成する種である(図2−5)。大西洋岸マサチューセッチュのコッド岬から北フロリダまでの汽水の河口域の潮下帯に生息しており、湾域で普通にみられる種である。
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注)Leptocheirus plumulosusは、第一胸脚の形状により雌雄の判別が可能である。
図2−5 Leptocheirus plumulosus
 R.abroniusはヒサシソコエビ科の巣穴を持たない種である。ワシントン州北西部のピュージェット湾やフロリダ中央部の潮帯下部や水深274mといった沖合いに生息する。
 供試生物は、試験する場所、試験土の間隙水の塩分、粒土組成等から最適な種を選定する。
 
(注:本法で供試生物とされた生物は日本での生息は未確認である(IshimaruS., 1994.Acatalogue of amphipods of Japanより))。
 
(c)供試生物の入手方法
 Ampelisca abdita、Leptocheirus plumlosusは培養方法は確立されていることから、研究室での培養、あるいは商業用、政府の供給源から得ることができる。Eohaustorius estuarius、Rhepoxynius abroniusは捕獲するか商業用のものを購入することになる。供試生物は同一の供給源から入手し、分類学的に精査されたものを用いる。
表2−10 4種のヨコエビ類を用いての10日間急性毒性試験の条件
項  目 条  件
温度 A.absitsa、R.abronius:15℃
E.estuarius:20℃
L.plumulosus:25℃
光質 ワイドスペクトル蛍光灯
照度 500-1000lux
光周期 24h明:0h暗
試験容器 1Lガラスビーカーあるいは広口瓶(直径10cm)
浚渫土砂体積 175mL(深さ約2cm)
浚渫土砂調整 0.25mmメッシュを通す(Sec.4.3.2.3)
重曹水体積 容器900mLの目盛まで満たす(約800mL H2O)
供試生物のライフステージとサイズ A.absitsa:3〜5mm
R.abronius:3〜5mm
E.estuarius:3〜5mm
L.plumulosus:2〜4mm
供試生物数/容器 20個体
給餌 無給餌
エアレーション 溶存酸素飽和度≧90%に維持
重曹水の塩分 A.absitsa、R.abronius:20%
E.estuarius、L.plumulosus:28%
重曹水の塩分品質と測定周期 開始、終了時:塩分、pH、全アンモニア量
:毎日:湿度、DO
試験期間 10日間
エンドポイント 生存率
表2−11 4種のヨコエビ類を用いての10日間急性毒性試験タイムスケジュール
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(出典)
・USEPA,1994.Methods for Assessing the Toxicity of Sediment−associated Contaminants with Estuarine and Marine Amphipods.EPA/600/R・94/025.Office of Research and Development,Washington,D.C.
 
c.その他の参考文献より
(概要)
 河口域に生息するヨコエビ類Leptocheirus plumulosusを用いて毒性試験を行う。試験は、1Lの容器を用いて175mしの試験土に725mしの海水を加えて28日間ヨコエビを暴露することにより、ヨコエビの生残、成長、繁殖を検出・評価する。5%以上のシルトや85%以下の粘土分を含んだ浚渫土砂について試験可能であり、試験土の応用範囲が広い。
 
(出典)
・USEPA,2001.Methodfor Assessing the Chronic Toxicity of Marine and Estuarine Sediment−associated Contaminants with the Amphipod Leptocheirus plumulosus. First Edition,EPA600/R−01−020.
 








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