2)諸外国における底質評価方法の現状
[1] アメリカ
a.グリーンブックに記載されている方法
浚渫土砂の海洋投入に対する受け入れ評価については「海洋投入に対する浚渫物の評価−試験マニュアル」(通称グリーンブック:以下グリーンブックとする)に記載されている。グリーンブックにおける底質評価方法の概要を図2−4に示した。また、生物試験の方法を表2−9に、供試生物の種類を
表2−7〜8(前述)に示した。
表2−9 アメリカにおける生物試験について
グリーンブツク参照章 |
生物試験の目的 |
生物試験の種類 |
期間 |
試験対象物 |
供試生物 |
エンドポイント |
試験の評価 |
11.1 |
水柱の毒性の決定 |
急性毒性 |
96時間 |
溶出液 |
表2-7 |
生残率 |
LC50の0.01を超えているか |
11.2 |
参照浚渫土砂との毒性の比較 |
急性毒性 |
10日間 |
底質 |
表2-8 |
生残率 |
LPCとの比較 |
12.1 |
浚渫土砂の生物利用能 |
生物濃縮 |
10日間 |
底質 |
推奨として多毛類や二枚貝類 |
濃縮率 |
食品含有基準値との比較 |
12.2 |
生体定常蓄積量 |
生物濃縮 |
28日間 |
底質 |
推奨として多毛類や二枚貝類 |
濃縮率 |
食品含有基準値との比較 |
11.4 |
蓄積量の経時変化・ケースに応じた試験 |
生物濃縮
慢性毒性 |
28日間 |
底質 |
推奨として
多毛類や二枚貝類 |
濃縮率・生残率などを個々に設定 |
処分ケースに応じた基準(LPC)との比較 |
出典)USEPA/USACE,1991.Evaluation of Dredged Material for OceanDisposal(Green book).
〔供試生物の選定方法について〕
・浚渫土砂溶出液(Water column)を用いる生物試験の供試生物の選定基準
(グリーンブック11.1より抜粋)
EPAが推奨する、あるいは科学的に感度が高いことが報告されている海産生物であり、植物プランクトンまたは動物プランクトン、甲殻類または軟体動物類、そして魚類の中から、それぞれ少なくとも1種類以上で試験を実施しなければなちない。投入場所と同様の環境下で、甲殻類、軟体動物類及び魚類は、最低96時間曝露される。植物プランクトン、動物プランクトンはそれより短い時間でも可能である(Paragraph227.27(c);米連邦(行政)規則集(Codes of Federal Regulations)より)。
このほかに、以下の点を考慮にいれて供試生物を選定する。
・ 一年を通じて利用可能である
・ 実験室での取扱いや飼育が可能
・ 毒性物質に対して、再現性の高い反応が得られる
・ 浚渫土砂投入時期に投入する海域の水柱の特性を示す種と生態学的かつ/または系統遺伝学的に関係がある
・ 毒物に対する感受性が高い幼体を容易に確保できる
・ 生態学的に、経済的に、かつ/またはレクリエーション利用において重要である
・ 底質(Whole sediment)を用いる生物試験の供試生物の選定基準
(グリーンブック11.2より抜粋)
EPAが推奨し、かつ科学的に感度が高いことが報告されている海産生物であり、ろ過食者、堆積物食者、底質に巣穴を形成する種をそれぞれ代表する生物を2種以上用いなければならない。(Paragraph227.27(d);米連邦(行政)規則集(Codes of Federal Regulations)より)
このほかに、以下の点を考慮にいれて供試生物を選定する。
・ 一年を通じて利用可能である
・ 浚渫土砂をよく取りこむ
・ 浚渫土砂、コントロール及びリファレンスの粒径に影響されない
・ 毒性に対して、再現性の高い反応が得られる
・ 実験室での取扱いや飼育が可能
・ 浚渫土砂投入時期に投入する海域の底質環境の特性を示す種と生態学的かつ/または系統遺伝学的に関係がある
・ 毒物に対する感受性が高い幼体を容易に確保できる
・ 生態学的に、経済的に、かつ/またはレクリエーション利用において重要である
埋在性ヨコエビ類は、以下のような性質を有することから急性毒性生物試験に対する適切な生物種として強く推奨される。
・ 底質影響に対して感度が高い
・ 容易に利用可能である
・ 粒径に対する選択性が低く、かつ、実験室での曝露試験にも利用可能
・ ほとんどの浚渫土砂投入海域に対して生態学的に関係している
・ Paragraph227.27(d)に記載されたの3つの特性を全て満たしている
・ 浚渫土砂の生物利用能(BioavaiIabiIity)を調べるための供試生物の選定基準
(グリーンブック12.1より抜粋)
EPAが推奨し、かつ科学的に感度が高いことが報告されている海産生物であり、ろ過食者、堆積物食者、底質に巣穴を形成する種をそれぞれ代表する生物を2種以上用いなければならない。(Paragraph227.27(d);米連邦(行政)規則集(Codes of Federal Regulations)より)
このほかに、以下の点を考慮にいれて供試生物を選定する。
・一年を通じて利用可能である
・試験に十分な個体数を供給できる
・浚渫土砂を取りこむ
・浚渫土砂、コントロール及びリファレンスの粒径に影響されない
・実験室での取扱いや飼育が可能
・投入する海域の特性を示す種と生態学的かつ/または系統遺伝学的に関係がある
・生態学的に、経済的に、かつ/またはレクリエーション利用において重要である
・PAH(多環芳香族炭化水素)のような汚染物を代謝しにくい
(出典)
・USEPA/USACE,1991.Evaluation of Dredged Material for Ocean Disposal(Green book).
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図2−4(1) グリーンブックにおける底質評価方法の概要
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図2−4(2) グリーンブックにおける底質評価方法の概要