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2.調査研究結果
2−1.ロンドン条約及び関連文書の概要
(1)ロンドン条約の概要
〔条約名〕
 「廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約」(「ロンドン条約」)
 
〔目的〕
 陸上で発生した廃棄物の海洋投入及び洋上焼却による海洋汚染防止を目的としている。
 
〔国内関連法〕
 我が国では、ロンドン条約による廃棄物の海洋投入の規制を受けて、下記2法により国内の規制を行っている。
・廃棄物の処理および清掃に関する法律
・海洋汚染および海上災害の防止に関する法律
 
 ロンドン条約及び附属書の改正の経緯を以下及び図2・1に示す。
 
1)現行条約
 [1]1972年採択、1975年発効。日本は1980年に批准。1993年に改正。
 [2]締約国78カ国(2000年1月現在)
 [3]本文と附属書I〜IIIにより構成
 [4]規制内容
 廃棄物その他の物の投棄を原則禁止
 −附属書Iに掲げる廃棄物等の投棄の禁止
 −附属書IIに掲げる廃棄物等の投棄は事前の特別許可を必要
 −他のすべての廃棄物等の投棄は事前の一般許可を必要
 (附属書IIIは許可基準を設定するにあたって考慮する事項を記述)
 [5]組織
 −締約国協議会議→年1回開催されている。
 −締約国特別会議→不定期。近年は開催されていない。
 条約の実施について検討(条約及び附属書の改正、投棄実態や海洋の状態の監視結果の報告を受ける、科学の分野における適当な団体に対し条約に関連する科学的又は技術的側面につき締約国又は機関と協力し及び締約国又は機関に助言するよう要請する、など)
 −科学者グループ会合→年1回開催されている。
 締約国協議会議の要請を受け、科学的又は技術的側面につき検討する。
 [6]附属書改正案採択(1993年11月)
 同時に、条約全般の改正作業を1996年の締約国協議会議までに完了することで合意。
2)「1972年の廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約の1996年の議定書」(注:資料編に原文・訳文を示す)
 [1]1996年、これまで検討されてきた改正案を採択(ロンドン条約締約国特別会議)、 まだ発効していない。日本は批准していない(現在、批准に向けて国内で調整中)。
−発効要件−ロンドン条約締約国15カ国を含む26カ国がこの議定書に拘束されることについて同意を表明した日の後の30日目の日に発効。
 [2]締約国15カ国(2001年5月現在)
 [3]本文と附属書1〜3により構成
 (注:1972年ロンドン条約(現行条約)ではローマ数字を用いて「附属書I〜III」、 96年議定書ではアラビア数字を用いて「附属書1〜3」と表記している。原文も同。)
 [4]規制内容
 廃棄物その他の物の投棄を原則禁止
 ・附属書1で投棄することを検討することができる廃棄物等を掲げる(「例外的に投棄することを検討することができる廃棄物その他の物」:リバースリスト)
 −しゅんせつ物
 −下水汚泥
 −魚類加工かす
 −船舶・プラットフォーム等
 −不活性な地質学的無機物質
 −天然起源の有機物質
 −投入処分以外の処分が物理的に困難な地域(小島等)で発生するコンテナ等
 ・附属書2で投棄するにあたっての検討内容などを規定(「海洋投入処分が検討される廃棄物その他の物の影響評価」、Assessment of Wastes or other matter that may be considered for dumping:WAFまたは廃棄物評価枠組み)
(内容)
 −リサイクル・再利用の可能性の検討
 −化学的、物理的、生物的特性
 −投棄場所の選択
 −影響の検討
 −監視
 −許可及び許可基準
 (附属書3は仲裁手続に関する事項を記述)
 [5]1996年議定書関連文書
 ・「投棄を検討できる廃棄物その他の物の評価のためのガイドライン」(Guidelines for the Assessment of Wastes or other matter that may be considered for dumping:WAGまたは一般ガイドライン)
→議定書附属書2を詳しく説明するもの。1997.10採択。
 ・「廃棄物別ガイドライン」
→議定書附属書1に示されている投棄することを検討することができる廃棄物その他の物ごとに、物質の特徴にあわせて作成されている(しゅんせつ物も含め、8種類あり)。一般ガイドラインを補完するもの。2000.9採択。
 
 *条約・議定書を批准した場合、拘束力は条約・議定書本文と附属書までで、これらガイドラインには生じない。ガイドラインは国際的な合意を得たものであるため、各国の国内における適用は奨励されるが、強制ではない。ただし、ガイドラインの方法を適用しない場合は、その国で別の方法を用いる根拠を明確にしておく必要がある。
3)浚渫土砂の評価に関する資料
 ロンドン条約議定書に関連して、近年において採択または公表された浚渫土砂の評価に関する主な資料は、以下のとおりである。
 [1]「しゅんせつ物の評価枠組み」(Dredged Material Assessment Framework: DMAF)
 ・ロンドン条約では、しゅんせつ物はその特性のために、他の廃棄物とは別個に管理することが締約国により認められている。
 ・しゅんせつ物を海洋投入するにあたっての、検討すべき事項を示す一般的な指針としてDMAFを作成。1995.12採択。
 [2]「しゅんせつ物の個別評価ガイドライン」(Specific Guidelines for Assessment of Dredged Material:しゅんせつ物WAG)
 一般ガイドラインとしゅんせつ物を対象とした個別の注釈をあわせたもの。一般ガイドラインに沿ってDMAFを加筆修正及び段落の順番を再編集したものであり、DMAFの内容に大幅な変更はない。DMAFは本ガイドラインの採択とともに同ガイドラインに移行。2000.9採択。
(注:本資料については後述する。また、原文は資料編に示す。)
 [3]「底質の評価に関する手引き」
 ・しゅんせつ物WAGにおいて底質管理に関する参考資料として位置付けられている。
 ・国連環境計画(UNEP)、ユネスコ政府間海洋委員会(IOC)及び国際海事機関(IMO)の支援で開催されたGIPME(Global Investigation of Pollution in the Marine Environment、プログラムの名称)のワークショップにおいて1999年10月に検討された結果に基づき、2000年に公表。IOCが2000年5月の科学者会合(LC/SG23)で紹介し、会合において支持された。
(注:本資料については後述する。また、原文・仮訳は資料編に示す。)
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図2−1 ロンドン条約の経緯及び底質評価関連資料の位置付け








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