8.4 データの分析
8.4 データの分析
組織は、品質マネジメントシステムの適切性及び有効性を実証するため、また、品質マネジメントシステムの有効性の継続的な改善の可能性を評価するために適切なデータを明確にし、それらのデータを収集し、分析すること。この中には、監視及び測定の結果から得られたデータ及びそれ以外の該当する情報源からのデータを含めること。
データの分析によって、次の事項に関連する情報を提供すること。
a)顧客満足(8.2.1参照)
b)製品要求事項への適合性(7.2.1参照)
c)予防処置の機会を得ることを含む、プロセスと製品の特性及び傾向
d)供給者
アンケート結果
◇品質データ分析手法管理制度の有無と、その運用
運用している26.2% 制度が無い73.8% 回答数282事業所 (回答率55.1%)
7割を越す企業で当該制度が無いことが判明した。これらの手法は業務改善及び品質改善に繋がるものであるため、その導入が望まれる。
(1)この「データの分析」という項目で注意したいのは、規格の考えるその目的から、その区分が以下の通り2種類あるが、仕組み自体を新たに設定するのは、b)のみで良い。但し、横断的な分析手法を体系的にまとめる場合には、その体系を新たに手順化する必要も発生するが、その分析方法が数理科学的に証明され既存の「統計的手法」ならば、その参考書を利用するのも一法であろう。
「データの分析」目的 |
要求事項 |
標準化コメント |
a)品質マネジメントシステムの“適切性”&“有効性”の実証 |
業務遂行上必要な分析 |
当該の業務の中で分析方法も規定されており目標設定を新たにする必要もなし |
b)品質マネジメントシステムの有効性“継続的な改善の可能性”の評価 |
独自による分析 |
独自に目標を設定し分析手順も新たに設定する必要あり |
(2)なお、「データ分析」に使用される可能性の高い「統計的手法(代表例)」を以下に示す。
統計的手法一覧表(代表例)
目的機能区分 |
統計的手法種類 |
◇データ集積→人間分析 |
a1 |
図表化 |
-「グラフ」-「ヒストグラム」-「管理図」-「散布図」 |
a2 |
パレート 分析 |
-「パレート図」 |
a3 |
データ 収集 |
-「規格に基づくサンプリング」-「乱数表に基づくサンプリング」 |
◇データ分析 |
b1 |
過程 |
-「(各種)統計的推定」-「(各種)統計的検定」-「標準偏差」 |
b2 |
分析 手法 |
-「回帰分析」-「重回帰分析」-「ロジスティック回帰分析」 |
-「主成分分析」-「判別分析」-「因子分析」 |
-「クラスター分析」-「共分散構造分析」-「実験計画法」 |
-「タグチメソッド」-「分散分析」-「信頼性工学手法」 |
(3)「データ分析」に関して、事例も含めた関連表を以下に提示する。尚、以下表中の「分析目的(例)」は概念的であるが例示である。参考にされたい。
データ分析関連表
区 分 |
発生 プロセス |
対象データ |
データ
入手 |
分析目的 (例) |
分析方法※A |
事後 処置 |
業 務 遂 行 上 の 必 要 に よ る 分 析 |
設計・ 開発
(製品) |
各種環境 データ |
工程内
&外部 |
[1]設計する製品の使用環境予測 |
a1a2a3b1b2 |
設計・ 開発 |
[2]設計する製品の経時変化予測 |
既存品質 データ |
[1]新規製品の品質水準の設定 |
[2]既存製品品質の改善手法分析 |
設計・ 開発
(工程) |
各種環境 データ |
工程内
&外部 |
[1]設計する工程の使用環境予測 |
a1a2a3b1b2 |
設計・ 開発 |
[2]設計する製品の経時変化予測 |
既存品質 データ |
[1]新規工程の品質水準の設定 |
[2]既存製品品質の改善手法分析 |
各種関係 データ |
[1]設計手法の選定 |
[2]試作時試料抽出方法の設定 |
各種関係 データ |
[1]検査手法の選定 |
[2]検査試料抽出方法の設定 |
製造工程 |
工程能力 データ |
工程内 |
[1]工程能力の算出 |
a1a2a3 |
製造実現計画 |
購買製品検査 |
検査データ(要分析) |
工程内 |
[1]分析結果からの検査合否判定 |
a1a2a3b1b2 |
購買製品検査 |
製品・サービス検査 |
検査データ(要分析) |
工程内 |
[1]分析結果からの検査合否判定 |
a1a2a3b1b2 |
製品・サービス検査 |
顧客満足管理 |
顧客満足 データ |
工程内 |
[1]顧客満足度の分析 |
a1a2a3b1b2 |
顧客満足管理 |
是正処置※B |
是正処置 データ
(関連データ) |
工程内 |
[1]不適合製品設計の是正手法分析 |
a1a2a3b1b2 |
是正 処置 |
[2]不適合工程設計の是正手法分析 |
[3]不適合手順方法の是正手法分析 |
a1a2 |
[4]是正処置するための原因分析 |
a1a2a3b1b2 |
予防処置※B |
予防処置 データ
(関連データ) |
工程内 |
[1]不適合製品設計の改善手法分析 |
a1a2a3b1b2 |
予防 処置 |
[2]不適合工程設計の改善手法分析 |
[3]不適合手順方法の改善手法分析 |
[4]予防処置するための原因分析 |
a1a2 |
予 防 目 的 ・ 独 自 に よ る 分 析 |
購買・アウトソーシング工程 |
業者能力 データ |
工程内 |
[3]購買・アウトソーシング業者の傾向分析 |
a1a2 |
予防 措置 |
購買・アウトソーシング検査 |
購買製品検査データ |
工程内 |
[1]購買製品の品質傾向分析 |
a1a2a3b1b2 |
予防 処置 |
[2]購買製品の各種特性傾向分析 |
アウトソーシング成果検査データ |
[1]アウトソーシング成果の品質傾向分析 |
[2]アウトソーシング成果の特性傾向分析 |
製品・サービス検査 |
製品・サービス
検査データ |
工程内 |
[1]製品・サービスの品質傾向分析 |
a1a2a3b1b2 |
予防処置/顧客満足 |
[2]製品・サービスの各種特性傾向分析 |
不適合製品管理 |
不適合製品データ |
工程内 |
[1]製品不適合性質の傾向分析 |
a1a2a3b1b2 |
予防 措置 |
[2]製品不適合発生の傾向分析 |
設備管理 |
設備管理 データ
設備点検 データ |
工程内 |
[1]設備特性の傾向分析 |
a1a2a3b1b2 |
予防 措置 |
[2]設備不良の傾向分析 |
監視・測定機器管理 |
計器管理 データ
計器検査 データ |
工程内 |
[1]監視・測定機器特性の傾向分析 |
a1a2a3b1b2 |
予防 措置 |
[2]監視・測定機器不良の傾向分析 |
是正処置※B |
是正処置 データ
(関連データ) |
工程内 |
[1]是正処置性質の傾向分析 |
a1a2a3b1b2 |
予防 措置 |
[2]是正処置発生の傾向分析 |
[3]顧客クレーム特性の傾向分析 |
予防処置/顧客満足 |
予防処置※B |
予防処置 データ
(関連データ) |
工程内 |
[1]予防処置性質の傾向分析 |
a1a2a3b1b2 |
予防 措置 |
[2]予防処置発生の傾向分析 |
【注意】※A:記述された英文字・数字は前頁「統計的手法(代表例)」中の区分を利用している。
※B:内部監査及びマネジメントレビューでの同処置も含まれている。