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8.3 不適合製品の管理
8.3 不適合製品の管理
 組織は、製品要求事項に適合しない製品が誤って使用されたり、又は引き渡されることを防ぐために、それらを識別し、管理することを確実にすること。不適合製品の処理に関する管理及びそれに関連する責任及び権限を“文書化された手順”に規定すること。
 組織は、次のいずれかの方法で、不適合製品を処理すること。
a)発見された不適合を除去するための処置をとる。
b)当該の権限をもつ者、及び該当する場合に顧客が、特別採用によって、その使用、リリース(次工程への引渡し)若しくは出荷、又は合格と判定することを正式に許可する。
c)本来の意図された使用又は適用ができないような処置をとる。
参考 “c)本来の意図された使用又は適用ができないような処置をとる”とは“廃棄すること”を含む。
 不適合の性質の記録及び、不適合に対してとられた特別採用を含む処置の記録を維持すること(4.2.4参照)。
 不適合製品に修正を施した場合には、要求事項への適合性を実証するための再検証を行うこと。
 引渡し後又は使用開始後に不適合製品が検出された場合には、組織は、その不適合による影響又は起こり得る影響に対して適切な処置をとること。
アンケート結果
◇品質不良に対する明確な基準値の設定の有無と、その運用
運用している44.8% 制度が無い55.2% 回答数308事業所 (回答率60.2%)
 検証・測定監視において、その合否判定基準は必須のものである。この基準が元請である顧客側の仕様書等で示されている場合は、それらが基準となるが、自社製品を製作している場合には必ず導入すべきである。
◇品質不良時の事後の処理手順の設定と、その運用
運用している49.7% 制度が無い50.3% 回答数310事業所 (回答率60.6%)
 過半数の企業で制度が無い結果が判明した。国民性として事後の処置に対する関心や考慮が低いとも言えるが、不良品に対する処置は、管理上は極めて重要な行為であり、導入する必要があると言える。
 
(1)「不適合製品」とは、以下のように「製造」及び「サービス」のうち、基準に満たないものを指し、工程や要員自体に直接関係する不適合事項とは異なることを認識したい。工程自体の不具合により異物が混入したり、作業者がミスを犯したような場合には、「8.5.2是正処置」や内容いかんでは「8.5.3予防処置」に適用され処理するものである。注意したい。
「不適合製品」=「製品・サービス合否判定基準に適合しない製品・サービス」
(2)4業種で当てはまる“不適合製品・サービス”の事例を以下に挙げる。当然ながら、これらには“合否判定基準”が存在し、その外れの不適合製品・サービスとして判断されたものである。

業種 製品不適合事例
鉄構業 ◆材質違い◆材料種類違い◆塗装不良(膜圧不足・クラック・ピンホール)◆寸法違い◆形状違い◆溶接不良(溶接不完全・表面不良)
(船体ブロック、ハッチカバー、タンク製造)
配管工事業 ◆配管材質違い◆配管管型違い◆配管寸法違い◆サポート形状違い◆溶接不良(溶接不完全・表面不良)
塗装工事業 ◆塗料種類違い◆塗料面間違い◆塗装不良(膜圧不足・クラック・ピンホール)
技能者派遣業 ◆派遣技能者能力不足◆派遣業務上の事務ミス(通知漏れ・記入ミス等)

(3)“不適合製品の管理”の目的は以下の通りとなる。適合製品・サービスとの混入は絶対避けるべきである。
・不適合製品・サービスの誤使用を防ぐ
・不適合製品・サービスの出荷・引渡しを防ぐ
(4)「不適合製品・サービス」に対して、その「内容確認」や「処理」の決定に関連して責任者を設定しておく。
(5)「不適合製品・サービス」に対する管理手順としては、一般的に以下のフローが成り立つ。
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(6)規格の概念的な要求項目を、具体的な「処置」区分に適用させると、以下の通りとなる。
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(7)不適合製品・サービスに対する「処置」について、その手順概略を示す。

「処理」
区分
「処理」手順概略
手直し 不適合製品・サービス自体を合否基準に適合するように手直しする。この手直しには「調整」及び「作り直し」も含まれる。尚、この処置は「再検査」が必要となり、その基準は当初の合否判定基準となる。
特別採用 不適合の程度から、その不適合製品・サービスを、特別に顧客に申請して、顧客に引渡しができるように計らうことである。この処理は業種・業態もしくは製品・サービス内容により適用しないケースもあるであろう。また、その前提に「手直し」が必要になる場合もある。特別採用を行う場合には、顧客・顧客代理人に対する「特別採用申請」の仕組みを構築しなければならない。
再格付・
用途変更
標準品で格付けがあるならば、低い格付けの基準に適合していることを前提に、「再格付け」する。また、別仕様の基準において適合するならば、「用途変更」する。
不採用 製品・サービス自体に対する当座の処置としては、「不採用」がある。但し、以後の処置は必ず必要であり、その連関を前項(6)の図中に示しておく。
廃棄 不適合製品・サービスに対する最終的な処分である。廃棄の仕方及び廃棄までの間の識別・保管方法に関しても手順化する。








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