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8.2 監視及び測定
8.2.1 顧客満足
(1)この項目において注意すべきは、その「目的」であり必要となる「成果内容」である。規格は「(適用した製品・サービスが)“顧客要求事項”を満足しているかどうかに関して、顧客が“どのように受けとめているかどうか”について情報を監視すること」と規定している。単純に見れば、よく言われる「顧客満足度調査」を行うこととなる。確かにその調査を行うことなのだが、もう一度その内容をよく読んで戴きたい。今までの内容の多くは、「色は黒か白か」「するかしないか」「10以上は合格・9以下は不合格」というように、標準化すべき内容が「絶対的」であったはずである。これは、外部の人間が理解でき、判断できるのは、「論理的」な内容であって、それ以上の内部的な機微に触れた事象は理解できないという理由からである。これは、認証機関の審査員も同様である。だからこそ、旧版の規格までは絶対的な内容のみで構成されていたが、2000年版ではこの原則が、この「顧客満足」に関してはどうも決壊してしまったようである。「顧客満足」で要求している内容は、「顧客がどのように受け止めているか」という、「程度」問題の内容に入り込んでその要求をしているとても「相対的」と言えるやっかいなものである。
 「相対的」な場合、“評価する人間”の「主義」「主観」や「好き嫌い」までその評価に含まれてしまう危険性が高いという問題点がある。これらは「評価基準」が曖昧で、評価者の判断に依存しなければならないような体系であると、すぐに発生し出す。流行りの感がある「能力人事評価制度」で発生しているトラブルと同根の問題である。この問題において、何よりも重要なのはその「評価」そのものとその「評価基準」なのである。このことは、この「顧客満足」に関する評価についても同じである。
(2)では、「顧客満足」における「評価」を見てみよう。評価者は「顧客」である。「主義」「主観」や「好き嫌い」のみならず「利害関係」という微妙なものまで絡んだ人間による「評価」である。万全を期したい。まず、「顧客満足」という捉え方から。原文の「Customer Satisfaction」は「満足」という程の強い意味合いではなく、まず「了解」しているという、例えてみるならば、学校での評価の「優・良・可・不可」の「可」レベルの了解である。であるからこそ、「顧客要求事項の満足」についての「顧客満足度調査」なのである。
 要求されている評価自体のレベルが分かったところで、基準内容に触れたい。これは、“顧客による評価”に対する「評価基準の設定」と、その評価結果を更に分析調査するための、自社内での「分析調査方法」の2側面から設定されるべきである。これは、いずれかが体系上・内容上不十分ならばもう一方の方が欠けている側面を補強する関係にある。この「顧客満足」の場合、評価側は顧客であり、その「顧客がどのように受け止めているか」という基準を構築したいが、「どのように受け止めているか」などと規定されているため、基準をどのように精微にしたり工夫してみても、結論を言うと、顧客側の「主義」「主観」や「好き嫌い」は必ず入ってくる。但し、「もう一度、購入したいか」等の設問の工夫は必要ではあるが。そこで、重要になってくるのは、もう一方の「分析調査方法」ということになる。この場合には、「評価基準を無視した評価結果」の排除は勿論、「余りにも個人的な意図や悪意がある評価結果」に対する排除する手順なども必要になるであろう。ここまで、最重要な「評価基準」と「分析調査方法」を述べたが、以下に、それら以外に必要な手順事項を記載する。
「評価基準」「分析調査方法」以外に必要な「顧客満足」上の必要手順
「調査対象範囲」 当該の顧客満足度調査における対象の範囲をどこまでにするのかを設定する。以下「対象抽出方法」とも連動する設定である。
「対象抽出方法」 設定した調査対象のうち、全てを対象にするのか、部分的に抽出するのか(サンプリング)を設定する。サンプリングの場合にはその方式も併せて設定する。
「調査実施方法」 直接聞き取り調査するのか、調査アンケートを送付し後日回収するかといった詳細な方法に関する設定。アンケート表の設計・制作もこの中に入る。
「結果報告手順」 分析調査した結果の報告。対象者は、経営者と管理責任者は入るであろう。また、結果内容から想定される「是正処置」「予防処置」に関しての処置手順も設定しておくが、これらは既存の処置制度を流用する形で設定すると便利である。

「8.2.2内部監査」
8.2.2内部監査
 組織は、品質マネジメントシステムの次の事項が満たされているか否かを明確にするために、あらかじめ定められた間隔で内部監査を実施すること。
a)品質マネジメントシステムが、個別製品の実現の計画(7.1参照)に適合しているか、この規格の要求事項に適合している、及び組織が決めた品質マネジメントシステム要求事項に適合しているか。
b)品質マネジメントシステムが効果的に実施され、維持されているか。
 組織は、監査の対象となるプロセス及び領域の状態と重要性、並びにこれまでの監査結果を考慮して、監査プログラムを策定すること。監査の基準、範囲、頻度及び方法を規定すること。監査員の選定及び監査の実施においては、監査プロセスの客観性及び公平性を確保すること。監査員は自らの仕事は監査しないこと。
 監査の計画及び実施、結果の報告、記録の維持(4.2.4参照)に関する責任、並びに要求事項を“文書化された手順”の中で規定すること。
 監査された領域に責任をもつ管理者は、発見された不適合及びその原因を除去するために遅滞なく処置がとられることを確実にすること。フォローアップには、とられた処置の検証及び検証結果の報告を含めること(8.5.2参照)。
参考 JIS Z 9911-1(品質システムの監査の指針−第1部:監査)、JIS Z 991-2(品質システムの監査の指針−第2部:品質システム監査員の資格基準)及びJIS Z 9911-3(品質システムの監査の指針−第3部:監査プログラムの管理)を参照。
アンケート結果
◇品質マネジメントシステム内部監査制度の有無と、その運用
運用している29.7% 制度が無い70.3% 回答数303事業所 (回答率59.2%)
 これは認証取得でもしていないと存在しない制度であるため、大多数において制度が無いことは自明であろう。但し、認証取得では必須であり、その機能はシステム運用上の要とも言えるため、導入が望まれる。
 
(1)内部監査は、品質マネジメントシステムの状況と、「適合性」と「有効性」の2点から調査する。但し、結果的には「適合性=文書確認」「有効性=記録確認」と極論すれば言うこともできよう。

適合性 基準になる「規格」に対して、その内容を満足する「仕組み」が確立され対外的に実証できるかどうか。実証できれば「規格」に対して、「仕組み」は“適合”している。
有効性 適合した「仕組み」は、実際に行なわれているか。行われていることが対外的に実証できれば、有効に機能していることから有効性が確認されたことになる。

(2)監査の対象となる「適合性」は、以下の範囲に対して調査することになるが、やはりこの仕組みにおいて組織自らが決定することが多いことが理解できよう。
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(3)内部監査を実施するに先立ち、事前に以下様式類を仕組み上設定しておく必要がある。

◇「内部監査チェックリスト」 規格に対応したチェックリスト。作り方はいろいろあるが監査実施に先立ち用意されていなくてはならない。
◇「監査対象状況記録」 「監査メモ」などとも呼ばれ、監査において必要となる「客観的証拠」を記述する記録。適合、不適合いずれの状況にも記述する。
◇「内部監査不適合報告書」 監査実施に際して検出された“不適合事項”を記述し、監査対象との以後の処置まで想定した報告書。

(4)「内部監査」には流れがあり、この一連の仕組みを構築する必要がある。流れの概略を以下に示す。
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