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7.5.2 製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認
(1)製造及びサービス提供に関する「プロセスの妥当性確認」が必要な内容は以下の2通りとされる。
(製造及びサービス提供の過程で結果として生じる)アウトプットがそれ以降の監視&測定で検証することが不可能な場合
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■「監視・測定」という“検証”業務は、その行為自体が“自己完結”させるのが、管理上必要となり、顧客の評価を仰いで検証結果を出すのではなく、契約等から自社の合否判定基準に照らして合否を判定し、その合格した成果・製品を顧客にそのまま引き渡すのが、管理上の監視・測定業務となる。
■但し、「監視・測定」という行為は、物質的な対象又はソフトウェアのような結果的に画面・書式において識別判断可能な物質的な表記がなされる対象においては、主観要素は入るが“定性的基準”も許容されるならば、確実にその製品及び成果は「監視・測定」での検証は可能である。つまり、この項目では「モノ(ハードウェア)」や「ソフトウェア」は対象にはならないといえる。
■それでは、どのような内容がこの項目の対象になるか。それは顧客に対して、その契約上の成果が実質も含め、引き渡した時点で物質的な形を持たない、「口頭サービス」が該当するであろう。

必要条件 該当業種・
職種
該当理由
[1]口頭でのサービス成果のみ
[2]関係する物質的なものを残さない
<ソフトウェア業> 電話による口頭サービスのみがサービスの成果となるため以降の監視・測定は不可能であるため。
◆ヘルプデスク(電話)
<電話サービス業>
◆電話回答サービス
<コンサルティング業> 口頭アドバイスのみで、上記と同一内容となるから。
◆アドバイスのみの場合
製品が使用され又はサービスが提供されてからのみ不具合が顕在化しないようなプロセス
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■物質的な製品の場合、不具合が発生しないような設計がなされ、かつ機能及び耐用における各種試験がなされているため、このような不具合の発生は民法上の瑕疵に当たるため該当しないであろう。
■瑕疵に該当しない内容とすれば、以下が列記されるであろう。

必要条件 該当業種・
職種
該当状況
[1]顧客使用時点以降のみ不具合発生するプロセス
[2]瑕疵に該当しない
<ソフトウェア業> バグを試験で検出するのは現実的に不可能という立場なら該当する。
◆ソフトウェア成果物
<教育業> 成果責任を契約しなければ受験合否自体は責任外。
◆受験指導成果

(2)前頁で言及した規格で規定された内容は、該当する業種業態は非常に特殊であり、適用事例は少ないものとされる。但し、旧版ではこの要求事項は「特殊工程」と規定されほぼ同一の規定内容であったが、その適用に関しては、規格には規定されていないが、その後の「プロセスの妥当性確認」のための処置が同様に必要になるため、以下の内容も適用されていた。
 製品・サービスを製造・提供するプロセス自体が定量・定性化が不可能で技能者の経験カンで施行しなければならないプロセス
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■該当業種業態は以下の通り。但し、該当が多いので製造業と工事業のみ記載した。

必要条件 該当業種・職種 該当理由
[1]手順・手法の定量・定性化が不可能なプロセス
[2]技能者の経験カン以外に方法がないプロセス
<製造業・工事業-共通-> 出来栄え調整及び溶接範囲の調整は職人芸。
◆溶接
◆塗装・吹付け 膜圧の厚さ調整は職人芸。
◆金属曲げ仕上げ 熱加工工程は職人芸。
◆工芸要素の強い仕上げ 熱加工、表面処理及び工作は職人芸。
◆食品製造の仕上げ 味の微調整は職人芸。
◆コンクリート製品製造 練混ぜ工程は職人芸。
◆ゴム製品製造 加硫工程は職人芸。

(3)4業種に適用させると、以下の業種・工程が該当する。

  鉄構業・工事業 塗装業
鋼材曲げ工程 溶接工程 塗装工程
引渡し以降の監視・測定が不可能 × × ×
通常の計測可能 X線・非破壊検査で計測可能 膜圧計で計測可能
使用時での不具合判明 ×(即時判明) ×(即時判明) ×(即時判明)
職人芸工程

(4)製品・サービス成果自体を検証するのではなく、当該「プロセス」に対する“妥当性確認”を行うことで代替しようとするものであり、妥当性確認によって当該プロセスが計画通りの結果を出せることを実証することを制度化しようとしたものである。

規格要求事項 コメント
a)プロセスに対する“レビュー基準”&“承認基準” 手順化が困難なプロセス(工程)自体に対する「見直し」の基準及びその承認の基準の設定。中身が検討できないのでそのプロセスを取り囲む設備や人材に対する対応が主体になるであろう。以下のd)にも関連するが見直しの頻度や時期も設定すべきだろう。
b)“設備承認”&“要員適格性確認” プロセスを支える設備の承認。技能専門性の高い技能者に対する適格性確認(資格制度として運用されることが多い)の実施。
c)所定の“方法”&“手順”の適用 この場合、方法や手順の「枠」や「範囲」、可能ならば「定性的な範囲での内容」を文書化することが当てはまる。
d)妥当性の“再確認” 確認で問題があった場合や前回の確認から時間が経過した対応。

7.5.3 識別及びトレーサビリティ
(1)“識別”すべき「対象」としては、以下の形態別の対象が区分される。

物品 購入物品・半製品・最終製品
無形物 サービス成果が無形物・アウトソーシング成果が無形物

(2)「識別自体の付け方」は、その手法としては以下が提示できる。

必須条件 識別自体が唯一無二であること。
単位 [1]個々別単位[2]ロット単位(ロットの数え方は基準化が必要)
呼称・
名付け方
[1]識別番号方式(ローマ数字・ローマ字等)[2]唯一無二の名称そのもの

(3)「識別管理の手法」は、以下が提示できる。

  管理手法
現品への識別 書類・台帳への記帳&管理
要否 物品 必要 (トレーサビリティが要求事項の場合必要)
無形物 不要 必要(でないと識別自体不可能)
手法 [1]現品へ直接記入 [1]専用の管理台帳による管理
[2]検査記録等の既存の台帳類などの書類を流用することによる管理
[2]現品へ荷札添付
[3]容器による識別
[4]場所による識別

(4)「製品実現の全過程における個別製品の識別方法の確立」に関して、“必要な場合”としているが、判断は難しい。何故なら、識別体系が無ければ、検証結果の処置が後工程に悪影響を及ぼす可能性が高いからである。
(5)「監視&測定の要求事項に関連して、製品状態を識別すること」とは、“検査前”“検査中”“検査後”の識別状態の管理を行うことである。
(6)「トレーサビリティ(追跡可能性)」とは、以下のように個々の識別管理が体系化し、管理上、遡ることができる状態を指す。「規定要求事項に含まれる場合」のみ対象となる項目である。
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(7)4業種への適用に関しては、「鉄構業」「配管工事業」「塗装工事業」は、“モノ”が対象の世界なので、上記内容のかなりの部分が適用となろう。「技能者派遣業」は人材のみのサービスであるため、書類上の識別以上の管理は必要にはなるまい。
7.5.4 顧客の所有物
(1)「顧客所有物」において、受託側である供給組織に対して関係する行為としては、以下の通り「支給」と「貸与」であろう。

顧客の行為 顧客所有物対象
支給 物品(材料・部品・消耗品等)、サービス成果、ソフトウェア成果、インフラストラクチャー(電気・ガス・水等)
貸与 上記支給対象、設備、工具、計測器、施設、知的所有権(特許・実用新案・著作権等)、その他権利(販売権・版権等)

(2)「顧客所有物」を4業種に適用させると以下のようになる。

業種 部品・材料 設備・計測器
鉄構業 ◆鋼材(無償支給の場合)等 (通常は無いと考えられる)
(以下の業種の業務も包括する場合には以下該当する業種を適用)
配管工事業 ◆管材(無償支給の場合) ◆溶接装置◆切断装置等
◆バルブ(〃)
◆ポンプ(〃)等
塗装工事業 ◆塗料(無償支給の場合)
◆プライマー(〃)等
◆塗装装置◆安全具◆クレーン◆ゴンドラ等
技能者
派遣業
(人材の派遣のみが適用するので顧客管理下での内容は該当しない) (同左)

(3)「顧客所有物」が供給組織の管理下にあるか、又は使用している場合には、「識別」「検証」「保護」「防護」に関する手順が必要となるが、購買製品において適用する仕組みを流用すると便利である。但し、顧客所有物において紛失・損傷・不適合が発生した場合には、顧客への「報告」及び「記録」の仕組みが必要である。
7.5.5 製品の保存
(1)“内部処理”から“指定納入先への引渡し”の間、製品を適合したまま保存することが規格で規定されているが、言葉が足りないので、以下に「内部処理」の範囲や、規格で言及されている「取扱い」「保管」「保護」「包装」「識別」を整理して適用させた表を以下に提示する。

  工程区分 製品・物品種類 取扱い 保管 保護 包装 識別※
内部
処理
設計・開発 試作品・部材 -
購買・外注 購入物品 -
顧客所有物 顧客提供物品 -
製造・サービス 製造物品・サービス系物品
製品保管 製品・サービス系物品
据付 製品・サービス系物品 -
外部 引渡し 製品・サービス系物品 - - - -
【摘要】○:適用する △:適用する場合あり −:適用外 ※「識別」は「7.5.3」に準拠する
(2)上記表から、それぞれの行為は連動するものであることが分かるであろう。手順としてはそれぞれ当該の業務とは切り離して連動させて適用させるようにすると便利である。但し、「識別」は「7.5.3 識別及びトレーサビリティ」という独立した連動機能があるので、そちらに準拠させる形で利用したい。
(3)これらの手順で確実に必要なことは、当該のプロセスにおいて、製品・サービス系物品に対して「損傷」や「劣化」を与えないことである。








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