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7.5 製造及びサービス提供
7.5 製造及びサービス提供
7.5.1 製造及びサービス提供の管理
 組織は、製造及びサービス提供を計画し、管理された状態で実行すること。管理された状態には、該当する次の状態を含むこと。
a)製品の特性を述べた情報が利用できる。
b)必要に応じて、作業手順が利用できる。
c)適切な設備を使用している。
d)監視機器及び測定機器が利用でき、使用している。
e)規定された監視及び測定が実施されている。
f)リリース(次工程への渡し)、顧客への引渡し及び引渡し後の活動が規定されたとおりに実施されている。
7.5.2 製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認
 製造及びサービス提供の過程で結果として生じるアウトプットが、それ以降の監視又は測定で検証することが不可能な場合には、組織は、その製造及びサービス提供の該当するプロセスの妥当性確認を行うこと。これらのプロセスには、製品が使用され、又はサービスが提供されてからでしか不具合が顕在化しないようなプロセスが含まれる。
 妥当性確認によって、これらのプロセスが計画どおりの結果を出せることを実証すること。
 組織は、これらのプロセスについて、次の事項のうち適用できるものを含んだ手続きを確立すること。
a)プロセスのレビュー及び承認のための明確な基準
b)設備の承認及び要員の適格性確認
c)所定の方法及び手順の適用
d)記録に関する要求事項(4.2.4参照)
e)妥当性の再確認
7.5.3 識別及びトレーサビリティ
 必要な場合には、組織は、製品実現の全過程において適切な手段で製品を識別すること。
 組織は、監視及び測定の要求事項に関連して、製品の状態を識別すること。
 トレーサビリティが要求事項となっている場合には、組織は、製品について固有の識別を管理し、記録すること(4.2.4参照)。
参考 ある産業分野では、構成管理が識別及びトレーサビリティを維持する手段である。
7.5.4 顧客の所有物
 組織は、顧客の所有物について、それが組織の管理下にある間、又は組織がそれを使用している間は、注意を払うこと。組織は、使用するため又は製品に組み込むために提供された顧客の所有物の識別、検証及び保護・防護を実施すること。顧客の所有物を紛失、損傷した場合又は使用には適さないとわかった場合には、顧客に報告し、記録を維持すること(4.2.4参照)。
参考 顧客の所有物には知的所有権も含まれる。
7.5.5 製品の保存
 組織は、内部処理から指定納入先への引渡しまでの間、製品を適合した状態のまま保存すること。この保存には、識別、取扱い、包装、保管及び保護を含めること。保存は、製品を構成する要素にも適用すること。
参考 内部処理とは組織が運営管理している製品実現のプロセスにおける活動をいう。
アンケート結果
◇製造/工事/各種作業管理制度の有無と、その運用
運用している56.0% 制度が無い44.0% 回答数298事業所 (回答率58.2%)
 半数近くの企業で制度が無い結果が判明した。技能の伝承や日々の支持などで、制度が存在すると非常に便利であり、生産性などの効果にも大きく影響を与えるものである。その導入が望まれる。
◇顧客支給品管理制度の有無と、その運用
運用している41.1% 制度が無い58.9% 回答数292事業所 (回答率57.0%)
 造船協力業の特性から、顧客からの支給は、貸与も含め、原材料や設備など多いのではなかろうか。アンケート結果では過半数の企業では制度が無いことが判明したが、やはりより一層導入すべきではなかろうか。
◇製品/成果取扱い・保存・管理・梱包・物流管理制度、その運用
運用している33.5% 制度が無い66.5% 回答数293事業所 (回答率57.2%)
 3分の2の企業で制度が無い状況が浮かび上がった。中核である製造や各種作業と比べると10ポイント程低い結果であるが、仕事は顧客に引き渡されるまで継続されるもので、一考すべき制度ではないであろうか。
7.5.1製造及びサービス提供の管理
(1)「製造及びサービス提供を“計画”し」とあるが、これは製造・サービス工程の前後の工程まで含んだすべての工程の計画である「7.1製品実現の計画」での「計画」の該当工程計画部分と、製造・サービス工程の非定常な仕様部分を主体とした「計画」である「7.3.3設計からのアウトプット」で示された設計・開発の該当仕様部分が該当するものと言える。尚、製造・サービス工程の直前において進捗管理用に立てるスケジュールやその他付属的な計画類も該当する場合もある。
(2)「(製造及びサービス提供を)“管理された状態”で実行」とあるが、規格では以下の状態が示されている。

規格要求事項 コメント
a)“製品特性の記述情報” 「7.3.3設計からのアウトプット」の成果
◆図面◆仕様書◆関連資料◆規格◆法規◆顧客仕様等
b)(必要に応じて)“作業手順” ◆「作業手順書」:当該作業要員用の“人間が行う”作業の手順
c)適切な“設備”(の使用) 「6.3インフラクトラクチャー」での適切な設備の“提供”
「設備」の“操作”“保全”の手順
◆設備操作マニュアル類:設備の操作方法の手順
◆設備管理マニュアル類:設備の保守・保全・点検等の手順
d)“監視機器”&“測定機器” 「6.3インフラクトラクチャー」での適切な機器の“提供”
「監視・測定機器」の“操作”の手順
◆監視・測定機器操作マニュアル類:機器の操作方法の手順
「7.6監視機器及び測定機器の管理」に基づく管理
◆監視・測定機器操作マニュアル類:設備の保守・保全・点検等の手順
e)規定された“監視”&“測定” 「8.2.3プロセスの監視及び測定」に基づく手順
◆製造・サービスプロセス監視・測定マニュアル類:工程作業・状態に対する監視・測定手順
「8.2.4製品の監視及び測定」
◆製造・サービス監視・測定マニュアル類:製品・サービス成果に対する監視・測定手順
f)“リリース(次工程への引渡し)”“顧客への引渡し”“引渡し後の活動” ◆「作業手順書」:左記事項記述

(3)上記から言えるのは、製造及びサービス提供において関連するすべてを「手順」化することに他ならない。
(4)上記(2)においてf)の部分の表現が分かりづらいので、以下に図化してみる。
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(5)規格の要求事項は前頁程度のものである。何故ならば、「製造」及び「サービス提供」という工程は、業種や業態、企業文化、技能者の水準などによっても非常に異なるため、「規格」として標準化しようがないからである。そのことから、当該手順の構築には非常に自由度があると言えるが、いくつか押さえなければならない点や注意すべき点がある。それでは、4業種に適用してみよう。
(6)まず、「鉄構業」(船体ブロック、ハッチカバー、タンク製造)の製造手順から解説していきたい。船体ブロック製造工程の事例を以下に示したが、工程は区分され体系はできているように見えるが、実際にはこれら工程は以下の大前提に立ったものではないだろうか。
[1]船種の違いや船主の意向による製造内容の違いが大きく、製造の標準化が困難である。
[2]上記[1]の理由から自動化された工程が少なく、工程作業の大部分が手加工である。
 このような条件で標準化を図る場合に気を付けたいことは、作業のフロー(流れ)を固定させることを中心に考え、あり得る工程種類を全て構成し、それに基づく作業標準などは作成してはならない。通常、標準化の事例は、上記[1][2]とはまるで逆の事例である。通常の事例は、工程の変化が少なく、定常化しているのである。鉄構業の場合は、毎回受注内容によって工程を組み直しているはずである。これをベースに考えたい。
 ではどのように標準化するか。この場合には、まず自社で可能な製造工程を列記し、仮想でも良いので、その全ての工程を使用するような受注をしたと仮定して、完全に全てを満足させた作業工程を構築してみる。そして、それらの内の個々の作業及び工程は標準化可能な業務であるから、極めて汎用性の高い手順に組み直してみる。こうして、「鉄構業」の「作業」及び「工程」そのものにおける標準化は完了する。
 ここでポイントとなるのは、構築した「作業標準」及び「工程標準」に対する、「受注ごと」の「適用」である。この適用手法は、前述した「7.1製造実現の計画」で作成する「製造実現計画書」を利用する。
船体ブロック製造工程事例
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【注1】※及び網かけ部は適用が変動する工程
【注2】図中には「検査工程」が除外されている
 この「製造実現計画書」を使って全てが網羅された作業工程を「選択」(=適用)させれば良いのである。この選択により、受注何件ごとの差異の多くは解消される。但し、詳細な差異は図面や仕様によって示されているので問題はない。もし、問題があるならば、作業工程の標準化の“漏れ”か“新規”の作業工程が発生したのである。この場合には、早急に工程を構築する必要がある。
(7)さて、「作業工程」の標準化に関して言及していなかったが、一般的には以下の条件から探求していくとよい。

[1]「制約条件」アプローチ 施設、設備、装置、工具、治具、計器、現場環境等
[2]「管理条件」アプローチ 工程、作業、検査、統制、帳票、様式等
配管工事工程事例および塗装工事工程事例(船体塗装)
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【注1】※及び網がけ部は適用が変動する工程
【注2】図中には「検査工程」が除外されている
(8)上記左上に「配管工事業」の作業工程を記述したが、工程そのものは複雑ではない。しかし、その運用が複雑であるから、「製品実現計画書」だけではなく、当該「系統図」などからも、工程の適用が分かるような体系化が必要となるであろう。標準化作業の多くは「鉄構業」と似ているが、上述の点と現場での管理統制はやはり工事業であるために異なるであろう。
(9)上記右上に「塗装工事業」(船体塗装)の作業工程を示したが、船体塗装のみで捉えるならば、工程そのもの確定している。但し、受注自体が工程別になる可能性があるので、それに対処したい。標準化作業は管理統制面では配管工事に準拠する。作業自体の特性から職人芸的要素が強いので作業標準は無理をしない。
(10)上記左下に「技能者派遣業」の作業工程を記述したが、極めて工程は定常的であり作業もシンプルである。4業種の中では一番構築し易い。管理統制が主体の作業標準になるであろう。








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