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7.4 購買
7.4 購買
7.4.1 購買プロセス
 組織は、規定された購買要求事項に、購買製品が適合することを確実にすること。供給者及び購買した製品に対する管理の方式と程度は、購買製品が、その後の製品実現のプロセス又は最終製品に及ぼす影響に応じて定めること。
 組織は、供給者が組織の要求事項に従って製品を供給する能力を判断の根拠として、供給者を評価し、選定すること。選定、評価及び再評価の基準を定めること。評価の結果の記録及び評価によって必要とされた処置があればその記録を維持すること(4.2.4参照)。
7.4.2 購買情報
 購買情報では購買製品に関する情報を明確にし、必要な場合には、次の事項のうち該当する事項を含めること。
a)製品、手順、プロセス及び設備の承認に関する要求事項
b)要員の適格性確認に関する要求事項
c)品質マネジメントシステムに関する要求事項
 組織は、供給者に伝達する前に、規定した購買要求事項が妥当であることを確実にすること。
7.4.3購買製品の検証
 組織は、購買製品が、規定した購買要求事項を満たしていることを確実にするために、必要な検査又はその他の活動を定めて、実施すること。
 組織又はその顧客が、供給者先で検証を実施することにした場合には、組織は、その検証の要領及び購買製品のリリース(出荷許可)の方法を購買情報の中に明確にすること。
アンケート結果
◇購買・外注業者評価管理制度の有無と、運用
運用している31.6% 制度が無い68.4% 回答数307事業所 (回答率60.0%)
 3分の2の企業で制度が無い状況が浮かび上がった。これは、長年の関係から不要ということなのか、または評価する余裕がないのかは不明であるが、業者側と適正な関係を保つ上では必要となる制度ではないだろうか。
◇購買・外注業者契約管理制度の有無と、運用
運用している36.5% 制度が無い63.5% 回答数304事業所 (回答率59.4%)
 これも3分の2近くの企業で制度が無い状況が浮かび上がった。発注側という強い立場であることは分かるが、契約はトラブルが発生した場合の拠り所でもあり、リスク対応の面で必要な制度であろう。
◇購買・外注成果検証制度の有無と、運用
運用している28.3% 制度が無い71.7% 回答数297事業所 (回答率58.0%)
 また、これも3分の2近くの企業で制度が無い状況が浮かび上がった。信頼関係から行わないこともあろうが、依頼したままチェックもしないというのは危険ではなかろうか。やはり導入が望まれる。
 
解説
7.4.1 購買プロセス
(1)外部から物品やサービスを購入したり、仕様書で製造させたりする活動を「購買」と呼ぶが、実は「購買」という行為の定義や捉え方、それ以上に契約にまつわる責任範囲も一定していない。以下に調査表を示し、当書内で扱う場合の当書なりの仮定義及び名称を以下に記述する。この機に是非検討されたい。
<購買等の機能概念・呼称調査表>
表面的な言い回し 購入形態 購入者
入手
契約
形態
設計
責任
一般的にその行為を何と呼ぶことが多いか? 当書での
仮定義・
名称
「物品」を購入する ◇標準規格製品を購入する 物品 売買 製造
業者
「購買」 「購買」
◇発注者が関与しない設計仕様の製品を購入する 物品 売買 製造
業者
「購買」
◇発注者の設計仕様で製造 させ製品を購入する 物品 売買 発注者  「購買」or「外注」or「アウトソーシング」 「外注・アウトソーシング」

(単独では「外注」)
「サービス成果」を購入する ◇発注者が関与しない設計仕様のサービス成果を購入する サービス
成果
売買 サービス業者 「購買」or「外注」
◇発注者の設計仕様でサービス提供させその成果を購入する サービス
成果
売買 発注者  「外注」or「アウトソーシング」
「工程」を委託する
(アウトソーシング)
◇発注者の設計仕様で製造させその製造賃のみ支払う 物品 委託 発注者  「外注」or「アウトソーシング」
◇発注者の設計仕様でサービスを提供させその提供賃のみ支払う サービス
成果
委託 発注者  「外注」or「アウトソーシング」
 
(2)4業種に「購買」等を適用すると、以下の内容になるであろう。
<購買等の4業種への適用表>
区分 購買物品 外注・アウトソーシング
種別 内容詳細 種別 内容詳細


船体製造 部品材料 ◆鋼板(元請から有償支給の場合) 成果 ◆船体ブロック
◆溶接棒 アウトソーシング ◆溶接外注◆組立外注
設備 ◆各種溶接装置◆各種クレーン◆各種切断装置他 ◆設備点検外注
計器 ◆コンベックス◆ノギス◆X線検査装置◆非破壊検査装置他 ◆計器点検外注
ハツチカバー・タンク製造 部品材料 ◆鋼板◆溶接棒 成果 ◆ハッチ・カバー・タンク用各種部品・半製品
設備 ◆各種溶接装置◆各種クレーン◆各種切断装置他 アウトソーシング ◆溶接外注◆組立外注
◆設備点検外注
計器 ◆コンベックス◆ノギス◆X線検査装置◆非破壊検査装置他 ◆計器点検外注
配管工事業 部品材料 ◆(配管材)◆弁◆バルブ◆フローセル他 成果 ◆配管サポート
【配管サポート内製時】◆鉄骨・鉄板◆溶接棒 アウトソーシング ◆配管外注
設備 ◆(溶接装置)◆(切断装置) ◆溶接外注
計器 ◆機密計◆コンベックス
塗装工事業 部品材料 ◆消耗品(ハケ・ブラシ) 成果 <該当せず>
設備 ◆各種スプレー◆グラインダー◆防護具◆安全具 アウトソーシング ◆塗装外注
計器 ◆膜圧計
技能者派遣業 部品材料 <業務形態から該当せず> 成果 <該当せず>
設備 アウトソーシング ◆派遣技能者自体
計器
 
(3)「購買プロセス」は全体としては、一般的に最低限次のような体系は必要であろう。(但し「管理」は除く)
<一般的な購買プロセス>
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(4)上記のプロセスの中で重要なのは、「評価」であり、購買・外注先に対して適切な評価を行うことが、購入する購買製品・サービスの品質向上につながるであろう。また、この評価制度が機能すれば、その購買・外注先の品質能力が高く、引いてはその供給品質の信頼性が高いということにもつながり、当該購買製品・サービスに対する「検証」の程度を軽減する可能性もある。
(5)上記(4)は、能力も高く対象となる購買・外注業者が潤沢に選択できる場合の話である。(かなりの業態では理想論に聞こえるだろうが)適宜、無理なく運用することも肝要であろう。
(6)さて、プロセスの最初にある「評価」に関して、管理概要を以下に示す。

評価 評価
対象
供給者(業者)
:範囲をどこまでにするかは、購買物品や外注・アウトソーシングの範囲と同一に設定されなければならない。
評価
方法
一般的には、初回に評価した後、一定期間ごと(会社によって独自に設定)に再評価を繰り返すことが多い。
評価
基準
管理された評価を行うならば、事前に評価基準が決められている必要がある。評価基準はやはり、以下に応分して決める必要がある。
・工程中の半製品・サービスに及ぼす影響
・最終製品・サービスに及ぼす影響
★評価基準内容によっては、以下の様な内容が考えられる。
・「経営能力」(財務状況・与信状況等)
:倒産されては供給が不可能になるため
・「管理能力」(管理体制・品質責任者の有無等)
:公式な管理体制があるか責任者はどうか
・「品質能力」(品質実績等)
良い品質を提供する能力についてだが実績面を強調しすぎると初回時の評価に支障をきたす可能性もある
 
(7)次に、「選定」に関して、管理概要を以下に示す。

選定 選定
対象
評価合格となった供給者(業者)
選定
方法
評価に合格した供給者(業者)から、購買・外注・アウトソーシングをする必要が生じた都度選定するパターンと、選定と評価を同一に行うパターンの2種類がある。工数削減には前者の方が良く、普通は業者登録制度を独自に設定して運用する場合も多い。
選定
基準
選定は特定数の供給者(業者)に絞り込むという目的から、その基準は選定の方がより精密にしておく必要があり、評価で対象となっている基準に加え見積り等が加味される場合が多い。

(8)「発注」は通常言われている内容のことであり言及するほどのことではないが、その(発注先への)提示「内容」における仕様内容は、「7.4.2購買情報」として記述する。
(9)「管理」は、必要な場合に適切な方式を設定する。この場合は、その対象となる購買・外注先の技術及び管理レベルに応分して設定することが良い。尚、「検証」は「7.4.3購買製品の検証」に詳述する。
7.4.2 購買情報
(1)前述の通り、「購買情報」は、選定した購買先・外注先に対して「発注」する時に提出する「購買製品・サービス」に関する「仕様」情報を指す。以下に規格の要求内容を解説する。

a)製品・手順・プロセス・設備に対する承認に関する要求事項 特に「手順」「プロセス」は、使用する規格・基準・法規等において求められている場合や、購入側が必要であると判断した場合には、注文仕様書等として取りまとめる。「設備」も同様であろう。
b)要員の適格性確認に関する要求事項 外注・アウトソーシングの場合には、その業務において、要員の適格性確認(=有資格者であるかの確認)が必要である。
c)品質マネジメントシステムに関する要求事項 工程に関する要求事項を言っているものであり、工程を委託した注・アウトソーシングの場合には必須であろう。

(2)この内容は購買・外注先(規格では「供給者」と称してる)に伝達する前に、規定購買要求事項の妥当性を確認することを求めているが、これは通常の統制上の承認時の確認で行われていることである。
7.4.3 購買製品の検証
(1)「購買製品の検証」は、その検証対象が異なるだけで、「8.2.4製品の監視及び測定」中の本書で規定した「検査」で解説した内容に準拠して、その検証プロセスを構築すれば良い。
(2)「購買製品の検証」実施後の“物品の保管”に関して、手順化を忘れる事例も多いので注意する。








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