5.6 マネジメントレビュー
5.6 マネジメントレビュー
5.6.1 一般
トップマネジメントは、組織の品質マネジメントシステムが、引き続き適切で、妥当で、かつ、有効であることを確実にするために、あらかじめ定められた間隔で品質マネジメントシステムをレビューすること。このレビューでは、品質マネジメントシステムの改善の機会の評価、品質方針及び品質目標を含む品質マネジメントシステムの変更の必要性の評価も行うこと。
マネジメントレビューの結果の記録は維持すること(4.2.4参照)。
5.6.2 マネジメントレビューヘのインプット
マネジメントレビューへのインプットには次の情報を含むこと。
a)監査の結果
b)顧客からのフィードバック
c)プロセスの実施状況及び製品の適合性
d)予防処置及び是正処置の状況
e)前回までのマネジメントレビューの結果に対するフォローアップ
f)品質マネジメントシステムに影響を及ぼす可能性のある変更
g)改善のための提案
5.6.2 マネジメントレビューからのアウトプット
マネジメントレビューからのアウトプットには、次の事項に関する決定及び処置を含むこと。
a)品質マネジメントシステム及びそのプロセスの有効性の改善
b)顧客要求事項への適合に必要な製品の改善
c)資源の必要性
解説
5.6.1 一般
(1)「マネジメントレビュー」とは、旧版では「経営者による見直し」と訳されていたが、2000年版でも同じであると言える。
(2)主旨としては、QMSに対して、後述する“インプット情報(入手情報)”から、以下の3点に関して検討し判定し、その結果、また後述する“アウトプット内容(成果内容)”を創出することが求められている。尚、以下に概略を図示する。
(3)上記のうち、「適切性」も「妥当性」も程度問題であり、その成果(アウトプット)には、継続的改善も視座に含めた行為である。但し、それ故、認証機関側のその審査評価には気を付ける必要がある。
(4)開催の頻度は、「…あらかじめ定められた間隔で…」と示された通り、“定期的”に実施する。
(5)マネジメントレビューの実施者は、経営者(トップマネジメント)であるが、詳細部分まで直接の実行者である必要はなく、“諮問”(審議のみを権限を与えて下部組織に委任する)した組織体に、審議を委ねることも可能である。但し、諮問組織に委ねるのは大規模組織の場合が多いといえる。
(6)諮問組織を活用する場合に注意したい点は、組織体は承認行為を行えないということを認識した仕組みを作ることと、組織体運用の手順(設置・委員委任・定数・召集他)も作らなければならないことである。
(7)審議の仕方は、組織の規模の大小により、以下の形態をとるのが一般的である。
小規模 組織 |
[1]経営者自らが審議する。 |
[2]経営者が[1]の結果を承認し決定する。 |
大規模 組織 |
[1]諮問組織に審議を委ねる。 |
[2]経営者が[1]の審議結果を承認し決定する。 |
5.6.2 マネジメントレビューヘのインプット
「インプット」とは、マネジメントレビュー実施に当たって、経営者(会議体)に伝達し検討すべき情報内容を指す。以下に規格の言及するインプット内容を整理する。
インプット情報 |
コメント |
a)“監査結果” |
◆これは「8.2.2内部監査」の結果記録が該当する。 |
b)“顧客からのフィードバック” |
◆「顧客からの苦情」「顧客からの情報」「顧客からの提案」及び「8.2.1顧客満足」の情報が該当する。 |
c1)“プロセスの実施状況” |
◆「8.2.3プロセスの監視及び測定」の結果記録に該当。 |
c2)“製品の適合性” |
◆「8.2.4製品の監視及び測定」の結果記録に該当。 |
d1)“予防処置状況” |
◆「8.5.3予防処置」の結果記録に該当。 |
d2)“是正処置状況” |
◆「8.5.2是正処置」の結果記録に該当。 |
e)“前回までのマネジメントレビュー結果” |
◆前回のマネジメントレビューにおいて、是正・予防・改善に対するフォローアップのいずれかの処置の対象となった事後結果の再検証。 |
f)“品質マネジメントシステムに影響を与える可能性ある変更” |
◆大きくシステムに影響する手法・方法・手順の改訂が発生した場合を指す。 |
g)“改善提案” |
◆改善“処置”とまで至らなかった提案も、継続的改善の機会を考慮するため含める。 |
5.6.3 マネジメントレビューからのアウトプット
「アウトプット」とは、マネジメントレビューの実施の結果出てくる成果内容を指す。以下に整理する。
アウトプット内容 |
コメント |
a1)“品質マネジメントシステムの有効性改善” |
◆「品質マネジメントシステム全体」におけるその執行上の有効性に対する改善処置の有無。 |
a2)“品質マネジメントシステム内プロセスの有効性改善” |
◆品質マネジメントシステムの部分に当たる「プロセス」において執行上の有効性に対する改善処置の有無。 |
b)“顧客要求事項適合に必要な製品改善” |
◆製品・サービスにおいて、顧客要求事項に適合させるために必要となる技術・手法改善の有無。 |
c)“資源の必要性” |
◆上記において必要となる資源を明示し、提供するようにする。 |