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1. アンケート集計結果からみた 造船協力企業の品質管理
(1) アンケート調査概要
 ガイドブック作成に先立ち、以下に示すアンケート調査を実施した。
[1]アンケート目的:ISO9001 品質マネジメントシステム要素に該当する各種活動に関する制度の有無とその運用状況を調査し、調査結果をガイドブックに反映させるために実施。
[2]アンケート調査時点:平成13年7月現在の状況で回答
[3]アンケート実施手法:アンケート調査票配布による郵送回答
[4]アンケート対象範囲:日造協会員所属企業1,800事業所
[5]アンケート回収数:589事業所
[6]アンケート採用数:512事業所
(2) アンケート調査結果がら見た傾向
 アンケート調査結果から、まず文書や記録の管理は、各社ともよく運用していることが全体の傾向として判明した。これは造船という重層的、システム的に製造する必要性が高い技術特性から要求された結果と見るべきであろう。また、法規制や顧客満足に対する姿勢に関しても好ましい傾向が判明し、技能者などの人材に対する、資格制度や教育訓練制度も過半数の企業で存在することが判明した。
 但し、人材や製品及びプロセスに対する各種検証制度はいずれも半数以上の企業は制度が無く、全体的に購買や作業等のような個別業務に関しては、半数以上の企業で制度化がなされていない結果が判明した。また、品質不良やクレームのような異常対応や緊急対応を要求される内容に対しても、制度化は半数以上の企業でなされていなかった。前向きな対応である品質改善や業務改善に関しても、制度を有している企業は半数にも満たない結果が判明した。
 これらの結果から、最重要な内容には制度化に対処しているが、それらから外れる個別の業務、検証、そして事後の処置や改善などについては制度が存在しないという、ある意味では会員所属企業の現在の余裕の無い姿が、間接的に浮かび上がる結果となったようである。しかし、これらの業務もバランス良く遂行されて良い品質の製品やサービスが提供されるものであり、これはひいては、企業経営のリスクの軽減にも寄与する行為でもある。
 認証取得において、これら欠けている業務の制度化及び運用は必須の項目であるため、もし認証を取ろうとするならば、新たに構築する必要が生じる。だが、このような制度を導入すれば、間違いなく企業の発展に寄与する内容である。特に品質不良や業務不良といったリスク対策やクレームのような緊急時対応には効果は絶大であろう。これらは企業経営上避けられない内容であり、導入していない企業は、この機会に導入すれば企業発展に寄与するはずである。
(3) ガイドブックヘの要望結果から見たコメント
 アンケートにおいて、要望やコメントを記載できる欄を設けたが、それらの結果としては、「認証取得による作業工数の増大」を危倶する声が目立った。これは、大規模な工数を必要とし下請側として要求されている体験によるものや、関係会社で工数超過となるシステム運用の苦労話を聞いた結果であるようである。外部のシステムに対して制御は難しいが、自社のシステムに対しては、努力や工夫で工数を削減していくことは十分可能である。これらに対する対策は、当ガイドブック中の「3.システム構築ガイド」に詳述したので参照されたい。
 また、「具体的な内容や事例を掲載して欲しい」という要望も多かった。こちらは、その限界も含めて「3.システム構築ガイド」の初頁の「摘要」を参照されたい。これら以外に目立ったのは、「問題集のような内容にして欲しい」という要望もあった。しかし、構築する品質マネジメントシステムは、企業一社一社で異なるものであり、多少の参考にはできても、字句を多少変えるだけでよいなどというものではなく、従って、普遍的なQ(質問)&A(回答)などは設定しようもなく、残念ながら、問題集は不可能であり、仮に無理矢理作成しても、企業側にとっては、自社に適用できないか、もしくは他社での相違から間違いを誘発させる非常に危険なものになってしまう可能性が高い。従って、ガイドブックではそのような対応はしていない。ご了解戴きたい。このような内容以外にも、認証や品質管理に対する真摯な要望や意見が数多く寄せられたが、紙面の都合上上記の掲載とさせて戴きたい。
(4) 個別設問結果に対するコメントについて
 アンケートにおいて具体的に回答のあった、設問別の結果に対するコメントを、「3.システム構築ガイド」中に、該当する規格項目に付随する形式で載せたので、参照されたい。
《アンケート集計結果》
設問 \回答 ア.運用している
回答数 率 
イ.制度がない
回答数  率
有効回答率
(512社中)
7 1)文書・図面・仕様管理制度 208 52.9% 185 47.1% 76.8%
  2)記録・各種データ管理制度 245 63.0% 144 37.0% 76.0%
  3)責任・権限の規定 269 67.6% 129 32.4% 77.7%
  4)(人的)能力評価基準の規定 159 42.4% 216 57.6% 73.2%
  5)社内/公的資格基準の規定 214 55.4% 172 44.6% 75.4%
  6)教育・訓練管理制度 207 52.7% 186 47.3% 76.8%
  7)設備・施設管理制度 172 46.1% 201 53.9% 72.9%
  8)QC工程表・工程計画表 193 51.9% 179 48.1% 72.7%
  9)見積・入札管理制度 197 51.8% 183 48.2% 74.2%
  10)契約管理制度 205 55.0% 168 45.0% 72.9%
  11)設計・開発管理制度 43 24.0% 136 76.0% 35.0%
  12)購買・外注業者評価管理制度 97 31.6% 210 68.4% 60.0%
  13)購買・外注契約管理制度 111 36.5% 193 63.5% 59.4%
  14)購買・外注成果検証制度 84 28.3% 213 71.7% 58.0%
  15)製造/工事/各種作業管理制度 167 56.0% 131 44.0% 58.2%
  16)顧客支給品管理制度 120 41.1% 172 58.9% 57.0%
  17)製品/成果取扱い・保存・梱包・物流管理制度 98 33.4% 195 66.6% 57.2%
  18)製品/測定/検査機器管理制度 139 46.6% 159 53.4% 58.2%
  19)顧客満足調査測定・管理制度 38 13.6% 242 86.4% 54.7%
  20)品質マネジメントシステム内部監査制度 90 29.7% 213 70.3% 59.2%
  21)プロセス監視測定制度 54 19.4% 225 80.6% 54.5%
  22)製品/成果監視・測定制度 100 34.7% 188 65.3% 56.3%
  23)品質不良に対する明確な基準値の設定 138 44.8% 170 55.2% 60.2%
  24)品質不良時の事後の処理手順の設定 154 49.7% 156 50.3% 60.5%
  25)品質データ分析手法管理制度 74 26.2% 208 73.8% 55.1%
  26)品質改善/業務改善制度 124 41.5% 175 58.5% 58.4%
  27)クレーム対応管理制度 146 47.9% 159 52.1% 59.6%
8 1)法規制への考慮・配慮 327 82.8% 68 17.2% 77.1%
  2)顧客重視(顧客満足)への考慮・配慮 364 91.0% 36 9.0% 78.1%
  3)経営資源(人・施設・設備等)の考慮・配慮 355 88.8% 45 11.3% 78.1%








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