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1.はじめに
 本報では、超軽量コンクリートの耐久性確認試験結果及び超軽量コンクリートを使用したRCH(RCハイブリッド)構造の梁模型の載荷試験結果を報告する。
2.超軽量コンクリートの使用材料、配合、各種試験結果
2.1 コンクリートの目標仕様
 従来の材料(後述)を使用することを前提とし、超軽量コンクリートの目標を次のように設定した。なお、スランプは浮体側壁部の狭隘箇所(厚さ140〜150mm程度)に打設することを想定し決定した。
     単位体積質量      1.5
     強度      30N/mm2以上
     スフンプ      18cm
2.2 使用材料
 使用材料を次に示す。全て従来の量産品である。
表2.1 使用材料
材  料 絶乾密度(kg/l)
セメント 高炉セメントB種 3.04
粗骨材 軽量粗骨材 1.29
細骨材 軽量細骨材 1.7
硬質パーライト 1.26
混和剤 高性能AE減水剤
2.3 配合
 試験練りを行い、上述の仕様を満足する超軽量コンクリートの配合を決定した。決定した配合を表2.2に示す。なお、表2.3に耐久性比較のための普通コンクリートの配合を示す。
 ケースAP(超軽量コンクリート)の粗骨材、細骨材は全て絶乾状態にして練り混ぜたものである。従って、粗骨材、細骨材の練り混ぜ時の吸水率を各々5%とすると、実質的な水セメント比はおよそ35%となる。
表2.2 超軽量コンクリートの配合
ケース W/C
(%)
Air
(%)
単位量(kg/m3)
W C S1 S2 G Ad
AP 45 5 190 422 266 131 465 4.2
注1)W/C:水セメント比Air:空気量 W:水 C:セメントS1:細骨材 S2:細骨材 G:粗骨材 Ad:高性能 AE減水剤
表2.3 普通コンクリートの配合
ケース W/C
(%)
Air
(%)
単位量(kg/m3)
W C S G Ad
N 56.5 4.5 175 310 831 965 3.2
注1)W/C:水セメント比 Air:空気量 W:水 C:セメントS:細骨材 G:粗骨材 Ad:AE減水剤
2.4 フレッシュコンクリートの性状
 表2.4にフレッシュコンクリートの性状を示す。
表2.4 フレッシュコンクリートの性状
ケース スランプ
(cm)
空気量
(%)
単位容積質量
(kg/m3)
気乾単位容積質量
(kg/m3)
備考
AP 19.0 4.6 1530 1490 超軽量コンクート
N 16.5 4.3 2320 2240 普通コンクリート
2)気乾単位容積質量は、28日間水中養生後に取り出し、2週間室内に静置後計測した値を示す。
2.5 硬化コンクリートの性状
 硬化コンクリートの試験結果を表2.5に示す。圧縮強度はいずれも目標値(30N/mm2)以上を満足している。しかし、ケースAP(超軽量コンクリート)の引張、曲げ引張及びせん断強度は普通コンクリートに比較すると小さい。これは、骨材強度が小さいためと考えられる。
 また、ヤング率は同強度の普通コンクリートと比較するとかなり小さくなっている。これは、コンクリート中のほぼ6割を占める骨材がポーラスであり、見かけ上のヤング率が非常に小さいためと考えられる。
表2.5 硬化コンクリートの性状
ケース 圧縮強度
(N/mm2)
ヤング率
(x104N/mm2)
引張強度
(N/mm2)
曲げ引張強度
(N/mm2)
せん断強度
(N/mm2)
7日 28日 28日 28日 28日 28日
AP 27 36 1.51 2.8
(12.9)
4.4
(8.2)
4.7
(7.7)
N 24 34 2.62 3.4
(10.0)
7.2
(4.7)
6.9
(4.9)
注)括弧内は、圧縮強度(材令28日)に対する比率を示す。
3.耐久性確認試験結果
3.1 中性化試験
 次のような促進中性化試験を行った。
 1)促進試験槽(温度20℃、炭酸ガス濃度5%)内に試験体(10cmφ×20cm)を保存する。
 2)3ヵ月経過後、カツレツして試験体を半割れにして直ちに中性化深さを計測する。
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図3.1 中性化促進試験
 試験結果を表3.1に示す。ケースN(普通コンクリート)に比較して、ケースAP(超軽量コンクリート)の方が、中性化深さが非常に小さくなった。これは、ケースNの水セメント比(56.5%)に比較して、ケースAPの水セメント比(実質水セメント比約35%、2.3節参照)が小さくセメントマトリクスが非常に緻密なためと考えられる1)。
表3.1 促進中性化試験結果
ケース 中性化深さ
(mm)
AP 1以下
N 14.2
 
3.2 塩化物浸透試験
 次のような電気泳動法による促進透過性試験を行った。拡散セル(容量1リットル、正極側0.3NのNaOH溶液、負極側3%のNaCl溶液)の中央に配置した試験体(10cmφ×3cm厚のコンクリート)に直流電圧を負荷し、負極側から正極側へ移動した塩化物イオン濃度を計測した。計測は原則として1日おきに2週間程度行った。
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図3.2 塩化物イオン促進透過性試験
 計測結果を図3.3に示す。同図には文献3に示された結果を比較のために示す。同図に示すように、ケースAP(超軽量コンクリート)の方がケースN(普通コンクリート)と比較して、塩化物イオン濃度が非常に小さくなった。これは前述のとおり、水セメント比の違いによるものと考えられる。文献3に示された計測結果もほぼ同様な結果となっており、このことを裏付けるものと考えられる。
 超軽量コンクリートと普通コンクリートとでは、水セメント比が異なるため単純な比較はできないが、強度を同程度に確保すれば、普通コンクリートと同等以上の性能を確保できるものと考えられる。
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図3.3 塩化物イオン濃度計測結果
3.3 透水試験
 窒素ガスを用いた加圧透水試験機を用いて促進試験を行った。試験体は、15cmφ×30cmとし、圧力容器内に設置して加圧水を作用させた。加圧水の圧力は1.5MPaとし、48時間作用させた。その後、試験体を取り出し、直ちにカツレツして、水の浸透深さを計測した。その結果より、透水係数を算出した。
 試験結果を表3.1に示す。同表に示すように、透水係数も他の試験結果と同様に、水セメント比の小さいケースAPがケースNに比較して非常に小さくなった。超軽量コンクリートでは低水セメント比に加え、ブリーディングがほとんど起こらないためにコンクリート中に発生する水みちが少ないことも透水性の低い要因のひとつと考えられる。
 土木学会のコンクリート標準示方書では水密な軽量骨材コンクリートをつくるための水セメント比の上限を普通コンクリートと同じ53%としており、軽量コンクリートの水密性を裏付けるものと考えられる。
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図3.4 加圧透水試験方法
表3.2 透水試験結果
ケース 平均浸透深さ
(cm)
透水係数
(x10-4cm2/sec)
備考
AP 1.2 9.6 W/C=約35%
N 3.6 46.3 W/C=56.5%
5.ハイブリッド梁の載荷試験
5.1 概要
 超軽量コンクリートを使用した鋼板・コンクリートハイブリッド構造の梁の載荷試験を行い、耐力の確認を行った。
5.2 試験模型
 模型は浮桟橋の側壁及び底版を想定し、部分的に取り出した実物大梁模型とした。模型の概要を次に示す。模型1〜2の違いは、軸方向の鉄筋量のみである。
(拡大画面: 51 KB)
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図5.1 試験模型
5.3 試験ケース
 試験ケースは模型の種類、載荷方向の組み合わせにより表5.1の5ケースとした。なお、載荷方向は浮体側壁の一般部及び内部補剛材部をそれぞれ想定したものである。
一般部: 正曲げ載荷(鋼板引張)、図5.2(a)
補剛材部: 負曲げ載荷(鋼板圧縮)、図5.2(b)
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図5.2 載荷方向
表5.1 試験ケース
ケース 載荷方向 コンクリートの種類 模型の種類 備考
正曲げ
シリーズ
AP-T1 正曲げ(鋼板引張) AP(表2.2) 模型1 超軽量コンクリート
N-T1 正曲げ(鋼板引張) N(表2.3) 模型1 普通コンクリート
負曲げ
シリーズ
AP-C1 負曲げ(鋼板圧縮) AP(表2.2) 模型1 超軽量コンクリート
N-C1 負曲げ(鋼板圧縮) N(表2.3) 模型1 普通コンクリート
AP-C2 負曲げ(鋼板圧縮) AP(表2.2) 模型2 超軽量コンクリート
 








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