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第7章 耐久性に対する性能照査
7.1 かぶり
(1) 鋼材のかぶりは、コンクリート打設時の骨材の寸法による充填性を配慮した上で、設計耐用年数期間中に鋼材に錆が生じて構造物の安全性を損ねることのないよう設定しなければならない。
(2) 鋼材のかぶりは、外力によるひび割れ幅および塩化物イオンの侵入による鋼材腐食に対する照査に従って決定することを原則とする。
(3) 使用する超軽量コンクリートの水セメント比が45%以下であるとき、かぶりの最小値を表−7.1に示す値としてよいものとる。
 
表-7.1 鋼材及び鉄筋の最小かぶりの標準値
海水に直接接する部分、海水に洗われる部分 7cm
潮風を受ける部分 5cm
 
また、浮体については必要に応じてひび割れ幅の検討を行うものとする。
【解説】
(1)(2)(3)について かぶりの規定については(港湾施設の技術上の基準・同解説平成11年上巻)p337を参考として規定した。なお、(3)の耐久性については、高性能軽量コンクリートの耐久性に関する実験(「平成12年度高性能軽量コンクリートを用いた港湾構造物検討調査報告書(国土交通省 北陸地方整備局 新潟港湾空港技術調査事務所)」)によれば、超軽量コンクリートの耐久性が十分であることが確認されている。
 また、資料集にも超軽量コンクリートの耐久性試験結果を示すが、優れた耐久性を示すことが確認されている。
7.2 許容ひび割れ幅
(1) ひび割れ幅限界状態を検討する場合、鋼材の腐食の難易により、表−7.2に示す環境区分A、Bを設定する。浮体の各部位に対する環境条件は、表−7.3に示す区分を用いて良い。
 
表−7.2 鋼材の腐食の難易による環境条件の区分
区分 環境条件
A 海水に直接接する部分
海水で洗われる部分
厳しい潮風を受ける部分
B 上記以外の部分
 
表−7.3 各部位の環境区分
構造物 部 材 対象鉄筋 環境区分
浮体 床 版 全鉄筋 B
側 壁 A
底 版 A又はB
 
(2) 部材表面の許容ひび割れ幅Waは、環境条件及び、かぶり厚さc(mm)に応じて表−7.4のように定めてよい。ただし、表−7.4に適用できるかぶり厚さは、100mm以下を標準とする。
表−7.4 許容ひび割れ幅 Wa(mm)
環境条件
A B
0.0035c 0.0040c
【解説】
(1)について ひび割れ幅限界状態を検討する場合には、構造物のおかれる環境条件を設定する必要がある。環境条件は、鋼材の腐食の難易により、一般的に表−7.2に示すA、Bに区分される。また、浮体の各部位の環境条件は、表−7.3を参考にできる。
(2)について 鋼材の腐食が進行する危険性が生じるひび割れ幅の限界値については、まだ十分に解明されていないが、かぶりによって変化させるのか適当である。また資料集1.(超軽量コンクリートの耐久性試験)の図5.3、5.4に示すように、超軽量コンクリートも普通コンクリートと曲げひび割れ幅が同等と考えられる。したがって、部材表面の許容ひび割れ幅Waは、一般に環境条件、かぶり厚さc(mm)に応じて、土木学会コンクリート標準示方書[設計編]と同様に、表−7、4のように定めて良いこととした。
7.3 曲げひび割れ
(1) 部材の全断面を有効として計算した曲げモーメント及び軸方向力によるコンクリートの引張応力度が、コンクリート引張強度の設計用値に式(7.3.1)より求まるk1を乗じた値より小さい場合、曲げひび割れに対する照査を省略することができる。
 
  k1=0.6/(h)1/3
  ただしk1≧1.0となるときは、k1=1.0とする。
  ここに、h:部材の高さ(m)
 (7.3.1)
 
(2) 曲げひび割れに対する照査は、式(7.3.2)により求められたひび割れ幅が、許容ひび割れ幅以内であることを確認することにより行う。
 
 曲げひび割れ幅は、式(7.3.2)により求めてよい。
  W=k1・{4c+0.7(Cφ−φ)}(σse/Es+εφ)
 (7.3.2)
  Sk=kpSp+ksSr
 (7.3.3)
ここに、
W: ひび割れ幅(mm)
k1: 鉄筋の付着性状を表す定数で、一般に異形鉄筋の場合に1.0、普通丸鋼の場合に1.3としてよい。
c: 鉄筋のかぶり(mm)
Cφ: 鉄筋の中心間隔(mm)
φ: 鉄筋径(mm)
σse: 式(7.3.2)により得られる荷重の特性値Skによって生じる鉄筋の応力度(N/mm2)
Es: 鉄筋のヤング係数(200kN/mm2)
εφ: コンクリートの乾燥収縮およびクリープによるひび割れを考慮するための数値桟橋上部工で150x10−6としてよい。
Sp: 永久荷重の特性値
Sr: 変動荷重の特性値
kp、ks: 永久荷重によるひび割れ幅と変動荷重によるひび割れ幅が鋼材の腐食に及ぼす影響の差を考慮するための定数で、kp=施工時0.5、それ以外の場合1.0としてよい。また、ks=波力が作用する場合1.0、その他の場合0.5としてよい。
【解説】
(1)について 引張強度の制限値を係数k1により低減しているのは、最近の研究で普通コンクリートの曲げ強度に寸法効果があることが認められているからである。超軽量コンクリートについては、その影響があるものと考え標準示方書に準じた。
7.4 せん断ひび割れ
(1) 使用性能の照査は、作用せん断力が斜めひび割れ発生荷重以下であることを確認すれば良い。
(2) 斜めひび割れ発生荷重は、式(6.5.3)により求めてよい。
【解説】
(1)について コンクリートの標準示方書では、せん断ひび割れ幅を照査することにしているが、ひび割れ幅算定式が確立されているとは言い難い。さらに、せん断ひび割れば脆性的であること等を考慮して、現時点では使用状態で斜めひび割れを発生させないものとした。








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