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第1章 はじめに
1.1 概要
 桟橋、防波堤等の港湾構造物の一様式に浮体構造物がある。浮体構造は、鋼、鉄筋コンクリート、プレストレストコンクリート、ハイブリット等で製作される。
 本マニュアルは、超軽量コンクリートを使用して鋼・コンクリート部材より構成された浮体構造物の設計、施工法について述べたものであり、平成12〜13年度に(財)沿岸開発技術研究センターにて行われた「超軽量コンクリート等による浮体構造物の研究」成果をとりまとめるとともに、浮体構造物の設計に関して参照できる既存のマニュアルを参考として取り入れたものである。
1.2 超軽量コンクリート浮体構造物の特徴及び目標
 超軽量コンクリートを使用することにより、従来より浮体重量を低減出来、以下のような浮体構造物の利便性、快適性を図ることが期待出来る。
(1) 係留外力及び物量の低減
 浮体の乾舷を一定とした場合、超軽量コンクリートを用いて軽量化することにより、従来のRCやハイブリット式の浮体構造より係留外力を低減出来る。また、浮体構造物の高さを減じることができるため製作物量が低減出来る。これらのことより、製作費用を低減出来る。
(2) バリアフリーヘの貢献
 浮体構造物の高さを一定とした場合、乾舷を大きくすることができ、連絡橋勾配を緩勾配化することが出来る。同時に、連絡橋支間長の短支間化を図ることが出来る。このことにより高齢者等の負担を低減でき、バリアフリーヘの貢献が可能となる。
(3) 維持管理の低減
 係留系(チェーン、係留フェンダー)への外力を低減でき、構造材料への負担が従来の形式より少なく、維持管理が容易となる。この結果、ランニングコストが低減出来る。
 また、超軽量コンクリートは耐久性に優れており、維持管理が鋼製より容易である。
【解説】
(1) 超軽量コンクリートを使用することにより、デッキ面積300m2〜400m2の浮体規模では、従来のRCハイブリッドに比して、2〜3割程度吃水低減が可能である。そのため、係留外力が低減でき、杭やチェーンなどの係留系の低減効果も期待できる。また、物量の低減が期待出来る。
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(2) 吃水低減により、浮体動揺の増大が懸念されるが、水槽実験では、300m2〜400m2規模の浮体の吃水低減による揺れの増大は特に認められなかった。 以上より、デッキ面積400m2以下で比較的中規模な浮体でも、超軽量コンクリートを使用による動揺の程度は、既存の浮体のそれと大差ないといえる。
(3) 岸壁の反射波が浮体に与える影響を検討するための実験結果では、既存浮体と超軽量コンクリートを使用した浮体の動揺特性の差はなかった。しかし、両タイプの浮体とも入射波45°の場合、岸壁からの反射波により、係留力、動揺量とも20%程度増大する結果となった。このため、浮体構造物の設置海域の特性から、浮体への反射波影響が懸念される場合には、波浪外力の割り増し等を含め、その影響を適切に考慮する必要がある。(詳細は資料集3.参照)
(4) 超軽量コンクリート浮体を、既存浮体(RCハイブリッド構造)と同排水量で仮定した場合、浮体乾舷を30cm程度大きくできる。そのため、必要勾配を確保できる連絡橋の支間長が短く出来る。例えば、図解−1.1のように最急勾配1/12(8.33%)を確保するため支間長が24m必要であった連絡橋の支間長が20.4mとなる。このため、連絡橋の規模を小さくできる。一方、浮体と岸壁間の距離を一定とした場合、勾配は8.33%より7.08%に低減でき、車両・人の通行が容易かつ負担が少なくなるためバリアフリーに貢献できる。
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図解−1.1 浮体乾舷量の増大による連絡橋支間長への影響の例








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