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2 ITU-R M.1371-1の技術的観点における明確化
 重要な一般所見
 本章における明確化の記述は、何れも、規則的な方法で行われている。
 ■ 明確化は、何れも、勧告ITU-R M.1371-1の中の該当している文脈に対して行われており、この文脈は、常に、節全体という形で引用されている。これは、全ての明確化が該当している文脈において理解されるべきである、という点を確実にするために行われているものである。
 ■ 勧告ITU-R M.1371と全く同じ文言は、イタリック体で示されており、明確化により追加される文言は、標準書体に下線を付して示してある。削除される文言は、取消し線で判別されている。
 ■ 明確化には、何れについても、その根拠が示してあり、明確化が将来も(当該明確化が、最終的に、勧告ITU-R M.1371-1の将来の改訂版に取り込まれることになるまで)必要であった理由が完全に理解できるようにさせている。
 ■ 当該明確化の起案日付が示してある。
 ■ 所見は、明確化自体についての付加的情報を含んでいる。例えば、明確化の中のあるものは、既に、船舶に搭載される等級A移動体用AIS局に関するIEC標準(IEC標準61993-2)の初版に取り込まれている。この明確化について今後根本的な変更が行われると、将来に遺る問題を作り出す結果になる。従って、これらの明確化についての今後の変更は、何れも、細心の注意を払って行われるべきである。
 
2.1 A1;§4.2.1 報告率
2.1.1 提案する明確化の文言
 種別が異なる情報には、別の時間間隔が有効であり、従って、別の更新率が必要である。
静的情報: 6分毎、またはデータが修正された時もしくは要求に応じて。
動的情報: 速度と針路とに左右され、表1A及び1Bのように異なる。
航海関係情報: 6分毎、またはデータが修正された時もしくは要求に応じて。
安全関連情報: 必要に応じて。
表1A 船舶に搭載されている等級A移動体用装置の報告間隔
船舶の動的な状態 公称報告間隔
錨泊中または係留中で、3ノットを超える速度では動いていない船舶 3分(1)
錨泊中または係留中で、3ノットを超える速度で動いている船舶 10秒(1)
速度0-14ノットにある船舶 10秒(1)
速度0-14ノットで針路変更中の船舶 3-1/3秒(1)
速度14-23ノットにある船舶 6秒(1)
速度14-23ノットで針路変更中の船舶 2秒
速度が23ノットを超えている船舶 2秒
速度が23ノットを超えていて針路変更中の船舶 2秒
 (1)移動局は、合図局(semaphore)(付属書2第3.1.1.4項参照)であると判断した場合は、報告率を2秒に一回へ増加すべきである(付属書2第3.1.3.3.2項参照)。
記事 − これらの値は、IMOが定めているAIS運用基準に従っている間、無線チャンネルの不必要なロードを最小限とするために選ばれているものである。
記事2:自律的モードが指定モードより高い報告率を要求する場合は、船舶に搭載されている等級A移動体用AIS局は、自律的モードを使用すべきである
 
表1B 船舶に搭載されている等級A移動体用装置以外の装置の報告間隔
設置母体の状態 公称報告間隔
船舶に搭載されている等級B移動体用装置で、2ノット以下で動いているもの 3分
船舶に搭載されている等級B移動体用装置で、2-14ノットで動いているもの 30秒
船舶に搭載されている等級B移動体用装置で、14-23ノットで動いているもの 15秒
船舶に搭載されている等級B移動体用装置で、23ノットを超える速度で動いているもの 5秒
捜索救難用航空機(航空移動体用装置) 10秒
航路標識 3分
AIS基地局(2) 10秒
 (2)基地局の報告率は、1局以上の局が当該基地局へ同期を取っていることを検知した後は、3-1/3秒に一回へ増加されるべきである(付属書2第3.1.3.3.1項参照)。
 
2.1.2 明確化の根拠
 記事2は、IMOが「海岸局は船舶の報告率を増加することだけができ、減少することはできない」としている、船舶に搭載されている等級A移動局についてのIMO運用基準(IMO/NAV47/WP.3/Add.1、付属書1の4頁にある第3章の最後の項の文章を参照すること)を明確にするために必要である。このことは、船舶に搭載されている等級A移動局の報告率が、現に速度または針路を変更しているなどのために、より高い報告率を要求していると考えられる場合は、本来は基地局によってより低い報告率を指定されている場合でも、当該移動局により自律的に決定されなければならない、ということを要求している。
この点は、基地局が付属しているVTSでは要求されないと考えられるが、船舶対船舶という関係に対しては関連がある。速度の増加及び/もしくは針路の変更を行っている途中であるために要求されるより高い報告率は、船舶に搭載されている等級A移動局自体によってのみ、即時に、把握されることができる。
 
2.1.3 修正の日付: 2001年10月
 
2.1.4 所見
 この明確化は、船舶に搭載される等級A移動体用AIS局についてのIEC標準61993−2に、既に、取り込まれている。この明確化に対して今後変更を行う場合は、何れも、将来に遺る問題を作り出さないように配慮すべきである。
 
2.2 A2;§1 本付属書の構成
2.2.1 提案する明確化の文言
 1 AISの構造
 1.1 AISの層モジュール
 
 本基準は、開放型システム間形相互接続(Open System Interconnection: OSI)モデルの、層1から4まで(物理層(Physical Layer)、リンク層(Link Layer)、ネットワーク層(Network Layer)、移送層(Transport Layer)を対象としている。
 次の図は、AIS局の層モテル(物理層から移送層まで)及び用途についての各層(会合層(Session Layer)から用途層(Application Layer)まで)を図解しているものである。
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 1.2 AISデータの送信準備段階におけるAIS各層の担当事項
 1.2.1 移送層は、データを、正しい大きさにある送信パケットに変換し、各データパケットを順番に並べる作業を担当する。
 
 1.2.2 ネットワーク層は通報の優先順位指定を管理し、送信パケットを各チャンネルの間で配分して、データ回線の輻輳状態を解消する作業を担当する。
 
 1.2.3 リンク層は、3種類の副次層に分割されており、以下の作業を行う。
 1.2.3.1 リンク管理体(Link Management Entity: LME) AIS通報のビットを組み立てる。第3.3.8項参照。
 AIS通報のビットを8ビットのバイトに整理して送信パケットを組み立てる。第3.3.7項参照。
 
 1.2.3.2 データ回線供与(Data Link Services: DLS)
 AIS通報のビットについて、FCSを計算する。第3.2.2. 6項参照。
 AIS通報へFCSを添付して、送信パケットの内容の作成を完了する。第3.2.2.2項参照。
 ビット添加処理(bit staffing)を送信パケットの内容に適用する。第3.2.2.1項参照
 送信パケットの組み立てを完了する。第3.2.2.2項参照。
 
 1.2.3.3 媒体アクセス制御(Media Access Control: MAC)
 VHFデータ回線(VDL)へのデータ伝送にアクセスすることが叶えられる方法を与える。使用される方法は、共通の時間基準を利用する時分割多重アクセス(TDMA)体系である。
 
 1.2.4 物理層
 組み立てられた送信パケットをNRZI符号化する。第2.4, 1.1項または2.7項参照。
 デジタルのNRZI符号化送信パケットを、アナログのGMSK信号へ変換して送信機を変調する。第2.4.1.1項参照。
 
2.2.2 明確化の根拠
 現在の草案は、AISのOSI/ISO積層物を重ねた構造を取り入れている。全部の層が該当している各節において詳細に説明されてはいるが、これらの各層が持っている最も重要な機能についての概容が必要とされた。提案する明確化では、更に、送信側でAIS通報を組み立てる際にどのような順序が観察される筈であるのか、つまり、積層物の最上段から最下段にかけて行われる過程−受信側では積層物の最下段から上方へかけて行われる過程−も述べている。
 
2.2.3 修正の日付: 2001年10月
 
2.2.4 所見
 なし








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