第2節-コースの枠組み
範囲
このコースは、VTS運用者とVTS監督者とについての職場研修の効果的な指導者となるために必要な、研修を実施し実際的な手引きを与えること、が意図されているものである。このコースを成功裏に終了したことは、IALA勧告V-103に従って交付されるVTS資格認定記録簿に表示されなければならない。
目標
職場研修の指導者は、職場研修に独特である相応の指導技法を体現するための、基本技能と実際的な能力とを身に付けることになろう。また、当該研修の実施場所である特定のVTSセンターが持っている職場研修についての要件を満足するために必要な作業過程と手続きとに、全面的に精通しているべきである。職場研修指導者の任務を遂行するための資格認定記録簿への保証記事の記載は、IALA勧告V-103に設定されている条項に従って行われることになろう。
研修プログラムは、特に、指導者への候補者全員が、次の各項に該当しているという点を、確保しているべきである。
1. VTSセンターの職場研修プログラムについて詳細な知識を持っている。
2. 具体的な職場研修の目標を完全に理解している。
3. 研修が行われようとしており、また評価が行われようとしている対象である作業において、資格が認められている。
4. 職場研修の指導技法について、相応の研修を成功裏に終了している。
5. 評価されるべき能力について、相応のレベルにある知識と理解とを持っている。
6. 職場研修作業帳を作成し監視することについて、相応の指導を受けている。
7. 職場研修の評価方法について、相応の研修を成功裏に終了している。
8. 実際に評価経験を持っている。
9. 模擬装置が使用される場合は、実際に運用についての模擬装置による経験を持っている。
10. 模擬装置が使用される場合は、経験豊富な評価者の監督のその満足するところにより、特定の模擬装置において実際に評価した経験を持っている。
登録基準
職場研修の指導者としての最低登録基準は、次の通りである。
・ VTS運用者:V-103にある全ての規定に従って、有効なVTS運用者またはVTS監督者資格認定証(Certificate)を保持しており、VTS職場研修指導者のための研修を成功裏に終了していて、特定のVTSセンターにおいて相応のVTSについての運用経験を持っている者、(担当機関により決定される)、または、
・ VTS監督者:理想的には、V-103の全ての規定に従って、有効なVTS監督者資格認定証を保持しており、VTS職場研修指導者のための研修を成功裏に終了していて、特定のVTSセンターにおいてVTS監督者として相応のVTSについての運用経験を持っているべきである者、(担当機関により決定される)
VTS資格認定記録簿への保証記事の記載を得るための要件
VTS資格認定記録簿への保証記事の記載を得ようとする候補者は、全員、職場研修指導者のための研修を成功裏に終了することにより、担当機関が定めている要件を満足しているべきである。
VTS資格認定記録簿への保証記事を交付するために行なわれる試験の形式と時期とは、関係担当機関が決定する問題である。
コースの終了時点においては、十分な時間が与えられ、コースの内容について修正と再検討と行なわれるように措置されるべきである。この時間と評価に費やされる時間とは、第3節「コースの概要」のところで示してある時間に追加されるものとすることができる。
コースの収容能力-限界
クラスの大きさは、指導者に個々の研修生へ十分な配慮が行えるようにするために、担当機関の裁量において限定されることができる。一般的には、最大12〜14人の生徒を、一人の指導者が関連の能力レベルへ至るまで十分に研修することが期待できる上限、とすることが推薦される。余分の研修実施要員と講義期間とが準備されていて個人ベースでの研修をこなせる場合は、より多くの生徒を受け入れることができる。
実習時間及びグループ活動の間は、クラスの大きさについて別の制約要因が存在する可能性がある。特に、模擬装置または類似の講義教材を使用することが含まれている場合は、個々のワークステーションまたは1台の装置においては、どれにおいても、2人を越える生徒が同時に研修を受けないようにすることが推薦される。
研修実施要員の要件
VTS職場研修指導者のための認定されている研修プログラムは、指導者及び評価者についての資格と経験とは、相応の研修品質基準(quality training standard)を適用することによりカバーされている、という点を確保しているべきである。この資格と経験と品質基準の適用とは、指導技法・研修及び評価方法・実習についての、相応の研修を取り込んでいるべきであり、以下の各項で述べてある全ての適用できる勧告に従っているべきである。
指導者・監督者・評価者と同様に、他の研修実施要員が、装置の保守のため及び実習作業用の教材・作業場所・補給品などの準備のために必要とされる可能性がある。
指導者
VTS職場研修指導者としての資格の認定を得ようとしている要員の研修に従事する者は、誰でも、以下の各項に該当しているべきである。
1. 実施中である特定の種別の研修について、研修プログラム及び具体的な研修目標を詳細に至るまで理解している。
2. 実施中である研修が対象としている作業において、相応の資格を認められている。
3. 専門上の資格と教育上の資格とに適切な均衡性を持っている。
4. 模擬装置を使用する研修を実施する場合は、
4.1 模擬装置の使用を含んでいる指導技法について、相応の指導を受けている。
4.2 使用されている特定の模擬装置について、実際に取扱った経験がある。
監督者
要員研修の監督を担当する者は、誰でも、実施中である各々の種別の研修について、研修プログラム及び具体的な研修目標を全面的に理解しているべきである。
評価者
VTS職場研修指導者としての資格を認定する時に用いられることが意図されている「要員の能力についての評価」を実施する者は、誰でも、以下の事項に該当しているべきである。
1. 評価されるべきである能力について、相応のレベルにある知識と理解とを持っている。
2. 実施中である評価行為の対象となっている作業について、資格が認められている。
3. 評価の方法と実効とについて、相応の指導を受けている。
4. 実際に評価行為の経験がある。
5. 模擬装置の使用を含んでいる作業について評価を実施する場合は、経験豊富な評価者の監督の下でその満足するところにより、特定の種別の模擬装置について実際に指導を受けている。
講義用設備及び装置
黒板または白板が備え付けてある通常の教室以外の諸設備・従来型のプロジェクターまたはコンピューターにより作動するプロジェクター・映写幕などについては、個々の課題の枠組みのところで示してある。
指導者を支援するために、参照事項が、教科単位のところで各学習目標に対して与えてあり、指導者が当該コースを準備し講義する時に使用したいと思う可能性がある参考図書及び出版物類・追加的な技術に関する教材・講義用の補助器材などが示してある。課題の枠組みのところに列挙されている教材は、詳細な講義用授業要目を組み立てるためにこれまで用いられて来ているものである。中でも、
・ 講義補助器材(Aで表わしてある)
・ 研修生が必要とする装置(Eで表わしてある)
・ 参考図書類(Rで表わしてある)
は、指導者に重要な情報を提供するであろう。
参考図書類
VTS研修の計画策定に関係がある参考図書類が、手引きとして以下に列挙されている。この目録は、決して完成していると言えるものではないという点、及び、指導側の要員は、適切な参考文献はどのようなものでも使用するように努力すべきであり、使用されているものは最新版であることを確保すべきであるという点、が留意されるべきである。
R1 |
SOLAS74規則V/10「船舶の航路決定」 |
R2 |
SOLAS74規則V/11「船舶報告システム」 |
R3 |
SOLAS74規則V/12「船舶通航業務」 |
R4 |
SOLAS74規則V/19「システム及び航行装置の搭載要求」 |
R5 |
SOLAS74規則V/13「航路標識」 |
R6 |
規則V/27「海図及び出版物」 |
R7 |
1972年の海上における衝突の予防に関する国際規則、修正版(COLREGS)」 |
R8* |
船舶の航路決定に関するIMO出版物(IMO-927E、IMO-928F、IMO-929S) |
R9 |
1994年の国際海上危険物規約(IMDG規約)、修正版 |
R10 |
1978年の船員の研修及び資格認定並びに当直作業の基準に関する国際条約、1995年修正版(STCW条約) |
R11 |
船員の研修及び資格認定並びに当直業務規約(STCW規約) |
R12 |
1978年の船員の研修及び資格認定並びに当直作業の基準に関する国際条約の締結国による1995年会議の決議10 |
R13* |
IMO総会決議A.851(20)「船舶の報告に関する一般原則」 |
R14* |
IMO総会決議A.857(20)「VTSに関するガイドライン」 |
R15* |
IMO出版物「国際的な航空及び海上における捜索救助(IAMSAR)マニュアル」、3部冊, |
|
第一部 (IMO 960) ISBN 92-801-1462-X |
|
第二部 (IMO 961) ISBN 92-801-6087-7 |
|
第三部 (IMO 962) ISBN 92-801-6085-0 |
R16 |
IALA勧告V-103「VTS要員の研修及び資格認定に関する基準」 |
R17 |
IALA船舶通航業務マニュアル |
R18 |
IALA航路標識ガイド(NAVGUIDE) |
R19* |
IMO標準海上航行用語集(IMO-985E、IMO-986F、IMO-988S) |
R20* |
IMO標準海上通信用語集(IMO MSC/回報第794号(1997年5月30日)) |
R21* |
信号に関する国際規約(IMO-994E、IMO-995F、IMO-996S) |
R22 |
IELTSハンドブック-英国文化振興会編、または同等の文献 |
R23 |
IELTSのための練習試験、ジェイクマン及びマックダウエル編、ケンブリッジ大学出版部、ISBN 0521 497 671、0521 497 663 |
R24 |
国連海洋法(UNCLOS) |
R25 |
海上用語訓練マニュアル ISBN 0-08-031555-0 |
R26 |
海洋工学の知識(例、一般的な工学知識、H.D.マックジョージ著(Kandy出版社)、ISBN-0750600063) |
R27 |
海事通信ハンドブック、ロイド社編、ロンドン |
R28 |
海事通信ハンドブック、インマルサット編 |
R29 |
ITU無線規則、付則類を含む |
R30 |
海事研究のための英語、第2版、ブレイクリ著、プレンティスホール社刊、ISBN 0-13-281-379-3 |
R31 |
船舶対陸上「日常英語による航海用語」 |
R32 |
海事技術用語集、海事エンジニア学院、ISBN 0434908401 |
R33 |
STCW規約、第3-1部第VIII章B節、「航海当直の維持に関する手引き」 |
R34* |
IMO決議A.705(17)「海上安全情報(MSI)の周知」 |
R35 |
装置及びシステムの取扱いマニュアル |
R36 |
レーダー及び電子航法、G.J.ソネベルグ著、ISBN 0-408-00272-7 |
R37 |
データ通信ハンドブック、NCC出版社刊、ISBN O-85012-363-1 |
R38 |
GMDSSハンドブック(IMO-970E及びIMO-971E) |
R39 |
国際海上浮標式、IALA刊 |
R40 |
IHO承認の海図及び出版物についての文書類 |
R41 |
人間による交信の基本事項、改訂版、R.G.キング著、1991年、マックミラン出版社、ニューヨーク、ISBN 0023642815 |
R42 |
言語音と音声「口頭による通信の上達法」、R.G.キング及びE.M.ディミチエル共著、1978年、マックミラン出版社、ニューヨーク、 |
R43 |
通信技能の練成法、R.G.マックマスター著、1978年、ロングマン・カナダ社、オンタリオ、ISBN 0774711167 |
R44 |
通信技能、P.パントン著、1980年、ハッチンソン社、ロンドン、ISBN 0091412811 |
R45 |
ITU-R M 勧告493 |
R46 |
ITU-R M 勧告541 |
R47 |
ITU-R M 勧告[8C/XA]、「海上移動業務用周波数帯において時分割多重アクセスを使用する船舶搭載の汎用自動船舶識別システムの技術特性」 |
R48 |
|
R49 |
SOLAS74規則V/15「捜索救難」 |
R50* |
IMO COMSAR/回報第15号「海上安全情報(MSI)に関するIMO/IHO/WMO合作マニュアル」 |
R51 |
船舶からの汚染を予防するための国際条約(MARPOL)の運用についての国内手順及び基準 |
R52 |
局地的/地域的な不測事態対策の必要性 |
R53 |
VTS・港湾・水先・協定業務などに関する国内・地域・局地の条例及び規則類 |
R54 |
VTSに関する国内の水路通報 |
R55 |
VTSの運用に関する国内の手続き及び基準 |
R56 |
IMO SMCPの使い方、ウイークス著、ウイザーバイ社刊、ロンドン、ISBN 8420507679 |
R57 |
PIANC会報第16号「大型タンカーとその受け入れ」(1973年) |
R58 |
PIANC会報第35号「大型船の受け入れ」(1985年) |
R59 |
PIANC会報第51号「大型船の竜骨と海底間の間隔」(1985年) |
R60 |
PIANC-IAPH報告、会報第87号「進入航路」(1995年4月) |
*IMO出版物については年一回発行されるカタログがあり、その多くは英語以外の言語で印刷されている。このカタログは、これらの出版物のISBN番号とIMO参照番号及び価格、並びに、ファックスで送付できる注文書の様式を記載している。また、研修施設及びコース調整者は、出版物についてはCD-ROMでも入手することができようになっており、求めているデータによってはより便利な入手方法になり得る、という点に留意しておくべきである。
カタログには、世界中の43カ国に所在してIMO出版物の在庫を保有している各国の販売代理店一覧表が含まれている。
IMO出版物のカタログは、次の箇所から無料で入手できる。
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4 Albert Embankment
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