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資料2 模範研修コースV-103/4 案
VTS16/6/8
船舶通航業務
職場研修指導者
 
前書

 国際航路標識協会は、1955年以来船舶通航業務に携わって来ており、人的資源が世界中の効率的な船舶通航業務の整備にとって重要であることを認識している。

 IALAは、1995年に修正された1978年の船員の研修及び資格認定並びに当直業務についての基準に関する国際条約(STCW条約)、及び、船員の研修及び資格認定並びに当直業務規約(STCW規約)、並びに、STCW95決議10を考慮して、VTS要員の研修及び資格認定の基準に関する勧告V-103を採択した。
 
 IALAがVTS要員のために作成した模範研修コースは、次の通りである。

模範研修コースV-103/1-VTS運用者
模範研修コースV-103/2-VTS監督者
模範研修コースV-103/3-職場研修
模範研修コースV-103/4-職場研修指導者
 
 これらの各模範研修コースは、IALA会員及び船舶通航業務の整備を担当しているIALA会員以外の該当担当機関に、VTS運用者・VTS監督者・VTS指導者の研修に関する具体的な手引きを提供すること、を意図しているものである。これらは、海事研修施設で利用されることができ、また、どのコースであれ開設する際の支援は、下記の住所にある国際航路標識協会を介して得ることができる。

 The Secretary General, IALA/AISM, 20ter rue Schnapper, 78100 Saint Germain en Laye, France
 Tel:(+)1 33 34 51 70 01
 Fax:(+)1 33 34 51 82 05
 e-mail:iala-aism@wanadoo.fr
第1節-はじめに

本模範研修コースの目的

 本模範研修コースの目的は、職場研修コースの開設実施及び既存研修教材の強化・補足について、VTSセンターとその指導者とを支援し、当該研修コースの質と効果とが、これによって、IALA勧告V-103の意図を全面的に満足するまでに改善され得るようにすることにある。

 必要とされる能力の基準は、職場研修指導者によって研修を監督し実施するために達成されるべきである熟練レベルである、と考えられる。研修は、研修生及びVTSセンターの必要性を満足するために既に習得されており築き上げられている能力レベル、を考慮に入れるべきである。

 本模範研修コースの意図は、指導者に、盲目的に従うことが期待されるような厳密な教育手法一式を差し出すことにあるのではない。指導者の知識・技能・献身性が、この模範研修コースの諸教材を介して研修を受ける人達へ知識及び技能を伝達することにおける、鍵となる構成要素である。

 授業計画及び研修コースの編成を支援するために、VTS要員のための本模範研修コースでは、5段階の能力レベルが用いられている。各々の能力レベルは、学習成果・指導目標・所要技能という見地から定義されている。
 
本模範研修コースの使用方法

 このコースは、VTS要員の職場研修における指導者に必要とされる知識と実際的な能力とを対象とすること、が意図されているものである。

 このコースは、研修生が、VTSの職場研修における指導者としての役割について、現実的な訓練を確実に行わせてもらえるように企画されている。この訓練では、実行できる場合は、模擬装置を用いるべきである。しかし、模擬装置による方法が実施できない場合は、訓練は、VTSの職場研修の環境において生じる該当事態を全面的に反映しているもの、となるように企画されるべきである。

 VTS資格認定記録簿への保証記事の書き込みを得るためには、職場研修指導要員についての研修と評価とは、全て、次のようになっているべきである。

1. 職場研修の教育方法が、作業行動・標準的な運用上の諸手続き・該当しているVTSセンターへ適用できる諸要素などに関連しているように構築されている。

2. 現実的な、能力に基づいた環境において実施される。

3. STCW規約のA-I/6節及びIALA勧告V-103に従って資格を認められている人達によって、実施され、観察され、査定される。
 
 研修実施要員は、第3節「コース概要」及び各々の課題の詳細な授業要目について検討を行うべきである。各研修生の知識・技能・教育に関する既得資格についての実際のレベルが、検討時に留意されるべきである。研修生の技能及び能力のレベルと、詳細な研修授業要目において見られる技能及び能力のレベルとの間に何らかの相違があるかどうかが、判別されるべきである。指導者は、この相違を補うために、研修場所である特定のVTSセンターにおいて当該研修生が既に習得し体現している知識ないしは技能を認識して、コースの内容を調整することが期待される。指導者は、また、研修生がまだ身に付けていない可能性がある教育上の知識技能または技術面の研修、のどれをも判別すべきである。

 当該コースを終了する予定であるVTS職場研修指導者の研修生が、明記されている目標とは異なる任務に就くことになっている場合も、各々の課題についての教科単位の目標・範囲・内容の調整が必要になる可能性がある。
 
授業計画

 指導者は、授業要目の各節に基づいて授業計画を策定し、当該コース用に提案されている教科書類及び講義用教材類を参照事項として含めるべきである。学習目標を調整する必要の無いことがわかったら、授業計画は、単に、授業要目に、当該教材についての講義を行う際に指導者を支援するように付加されたキーワードまたはその他の記憶補助記号を伴っているもの、で構成することができる。授業計画は、職場研修指導者に要求される教育方法と指導技能とにおいて、独自性がある面を強調しているべきである。

 授業計画の作成を支援するために、VTS要員のための模範研修コースでは、5段階の能力レベルが用いられている。レベル1から4までは、VTS運用者の基礎的な研修のための模範研修コースで用いられており、レベル3から5までは、VTS監督者に至る上級者のための模範研修コースで用いられている。

 各々の能力レベルは、学習成果・指導目標・所要技能という見地から定義されている。各々の課題について推薦される能力レベルは、各々の教科単位における第3節「コースの概要」のところで示されている。

 第3節「コースの概要」には、各々の課題へ割り振られるべきである推薦時間が含まれている。但し、この割り振りは、任意に行われているものであり、各研修生は各々の課題について明記されている研修参加上の要件の全てを全面的に満足しているものと仮定してある点が、理解されているべきである。従って、指導者は、コースと授業との計画を策定する時は、この時間についての見積もりを慎重に検討すべきであり、各々の具体的な学習目標を達成するために必要とされる時間を割り振り直す必要性について考慮すべきである。

 指導者は、講義方針と授業計画とを作成する段階においては、研修生が述べてある目標を確実に満足できるようにするであろう方法の、どのような組合せによる講義方法でも自由に用いることができる。但し、研修生が各々の授業要目において設定されている目標の全てをものにすること、が必須事項である。
能力のレベル
学習成果 指導目標 技能
レベル1
定例的で予測できる性質を持っており、通常、監督を必要とする作業
理解力
事実と原則とを理解する。口頭/書面による教材を解釈する。図表・グラフ・イラストを解釈する。データが暗示している将来の帰結を予測する。方法と手順との正当性を証明する。
指導による対応
複雑な技能を学習する初期段階。指導者が手本に示した行動を反復することによる模倣、及び、多重対処法(試行錯誤法)を用いることによる適切な対応の判別、を含む。
レベル2
要求範囲がより広く、より大きな個人の責任を含んでいる作業。ある程度複雑な/非定例的な活動。
適用力
概念と原則とを新しい事態に適用する。法律と理論とを実際の事態に適用する。方法または手順の正しい使用方法を行動で示す。
自律的な対応
学習した対応が習慣的になり、動作は自信と熟練性とをもって行われる。
レベル3
広範囲に亘る作業活動を含む熟達した作業。殆どが複雑で非定例的。
分析力
述べられていない仮定事項を認識する。論証において論理上の矛盾を認識する。事実と推測とを区別する。データの関連性を査定する。作業の組織上における構造を分析する。
複雑で明白な対応
複雑な動きの形態を含んでいる行動における熟練した動作。熟練性が素早く円滑で正確な動作により体現される。このレベルにおいて行動を達成することは、高度に強調が取れている自動的な動作が含まれている。
レベル4
かなりの程度の個人的な責任及び自律性を伴っており、複雑で技術を要し専門的である、場合が多い作業。
統合力
いろんな分野からの学習事項を問題を解決するための計画に統合する。対象または事象を分類するために新しい方針を考案する。
適応性
技能が十分に練成されているので、各個人は、動きの形態を修正して、特殊な要件に適合させる、または、問題である事態に対処する、ことができる。
レベル5
広い範囲の、予測されていない場合が多い、多様な状況に及んでいる複雑な技法
査定力
結論がデータにより支持されている点の妥当性を判断する。部内規準を用いて作業の重みを判断する。優秀性についての部外基準を用いて作業の重みを判断する。
創造性
特別な事態または特定の問題に適合する新しい実施事項または手続きの作成。高度に練成されている技能に基づく創造性を強調する。
 
講義

 担当機関は、指導者が、特定の種別及びレベルの研修並びにそれに対応している能力の評価について、IALA勧告V-103の表1及び2に示してあるように、相応に資格を認められており経験を有しているという点を、確保すべきである。これに加えて、職場研修指導者コースは、指導者が、専門的なVTSの知識と高等教育上の資格とにおいて適切な均衡性を保っているという点を、確保すべきである。職場研修が必要とする一対一の研修形式という独特の要件が強調されるべきであり、授業計画は、標準的な運用上の手続きについての教科書類・講義用教材類・講義補助機材類、及び、当該コースの講義時に必要とされるであろう生徒用教材類を参考事項として含んでいるべきである。

 概念と方法論とについての講義は、研修生が各々の具体的な学習目標をものにした、という点に指導者が満足させられるまで、いろんな方法で繰り返されることができる。各々の課題にある授業要目は、学習目標という形で示されており、各々の目標は、研修生が学習の成果として行うことができなければならないことを具体的に述べている。
 
成就

 コースを円滑かつ効果的に進行させるために、下記の研修構成資源に相当の注目が払われなければならない。

・ 資格が認められている指導者
・ 支援要員
・ 教室及びその他のスペース
・ 装置
・ 教科書、技術論文類
・ その他の参考教材類

 万全の準備を整えることが、コースを成功裏に成就させるための鍵である。
 
有効性

 この文書に収められている情報は、VTS要員の研修に関する技術助言者・顧問・専門家各位のグループによって、VTS運用者・VTS監督者・VTS指導者の研修と資格認定とにおいて使用するための有効性が認められているので、達成される最低基準は、可能な限り一様なものになり得るであろう。技術助言者各位は、IALAVTS委員会・IALA会員の研修施設・経験豊富なVTS要員などの中から集まってもらったものである。本書の記載事項の有効性が認めれたことは、上記グループがその内容に反対する根拠を何も見出さなかったことを意味する。








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