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II−2.三鷹/シティーコート下連雀カーシェアリング社会実験
公募で募集した中から、この三鷹/シティーコート下連雀で行う実験の提案が選定され、社会実験が実施された。この実験も、住宅地を対象としたものであるが、東京郊外部の公団賃貸団地を対象としている点で王子と異なっている。規模的には、車両2台であるが、交通日誌の記入、アンケートの回答、利用を把握するためのデータ収集等は王子の実験とほぼ同等の内容となっている。
1.概要
公募による実験B、東京都三鷹市の公団賃貸「シティーコート下連雀」において、団地居住者を対象に行ったカーシェアリング社会実験の概要を以下に示す。
■実験概要
実施主体 交通エコロジー・モビリティ財団
実行組織 早稲田大学理工学部交通計画研究室
期間 平成13年10月20日〜平成14年1月19日
利用者 公団賃貸団地(三鷹市下連雀5-8)の居住者
(モニター契約締結者に限定)
利用目的イメージ 駅までの送迎、買い物、通院など
実験規模 車両1300cc車(ダイハツYRV)2台
モニター28人(最終)
駐車場1ケ所
駐車場 上記マンション内平面駐車場No.44,46の2台分
料金体系 時間・距離料金併用(200円/時,25円/km)
(状況に応じ、予約取消料金、延滞料金を徴収)
予約受付時間 電話(9:00〜17:00),インターネット(24時間)
貸し渡し時間 24時間(無人貸し渡しを想定)
走行記録簿兼貸渡証 車内に搭載
貸渡前点検 可能な限りスタッフがエンジン始動点検等をし、異常があれば直ちに整備会社に連絡
その他 緊急連絡用携帯電話を車内に常備
利用手順 事前に所定の申し込み用紙の提出を受け、実験協力者登録を行い、スペアキーを渡し、ID番号を発行する
1.電話またはインターネットで予約
2.予約時間になると駐車場に行き、手持ちのスペアキーで自動車の鍵を開ける
3.利用者自身で、車両状態と走行記録簿を確認し、自動車を利用
4.利用後、車をもとの駐車場に戻し、車内の走行記録簿に走行距離などを記入し、車をロックし、スペアキーを持ち帰る
5.月に1回送られてくる使用料請求書の請求金額を確認し、振込により利用料金を徴収
2.実験データのまとめ
[1]実験協力者数および属性
2001/10/20〜2001/11/19 協力者数19名(男性:11名,女性:8名)

実験協力者の年代別内訳
20代 30代 50代 60代 70代
0 9 2 2 0

実験協力者の職業別内訳
会社員 主婦 無職 学生
11 6 2 0

2001/10/20〜2001/11/19 協力者数28名(男性:18名,女性:10名)

実験協力者の年代別内訳
20代 30代 50代 60代 70代
0 9 2 2 0

実験協力者の職業別内訳
会社員 主婦 無職 学生
11 6 2 0

[2]実験期間全体を通しての利用状況
実験利用期間中、カーシェアリングを利用しなかった実験協力者数は8名(1次募集会員数:6名、2次募集会員数:2名)であった。
また、実験期間中5回以上利用した人を、カーシェアリングに加入する意志がある人と定義すると、その会員による利用回数は全体の約80%を占める。
1)カーシェアリングの利用目的
カーシェアリングの利用目的を見ると、買物、レジャー、送迎の割合が高い。平日では送迎、休日では買物の割合が高くなる傾向にある。
[3]カーシェアリング利用状況
・ 実験期間92日間を通しての総利用回数は122回、総利用時間は301.7時間、総走行距離は2657.7kmとなった。
・ 平日の利用は0.89回/日、休日は2.19回/日、平均して1.33回/日となっている。
・ 利用時間は、1回当たり平日で約2時間、休日で約3時間と、1時間程度の差が出た。
・ 総走行距離は、平日で17.16km/回、休日で25.46km/回と、8km以上の差があった。
 
○日別車両稼働状況
実験開始から約1ヵ月は、あまり平日の利用が見られなかったものの、以降、徐々に平日、休日ともに利用者が増加した。
 
○走行距離と利用時間の関連
約73%の利用が20km以下の走行距離であり、約74%の利用が3時間以下の走行時間である。全利用に対して走行距離が20km以下かつ、利用時間が3時間以下の利用は約66%であった。
■走行距離と利用時間の分布
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[4]予約関連
■月別予約件数 (単位:件)
実施期間 11/19〜11/20 12/19〜12/20 1/19〜10/20 全期間合計
予約総数 21 53 54 128
実利用件数 19 53 50 122
事前に延長・変更申請 1 3 1 5
無断延長 1 2 8 11
予約せずに無断利用 0 0 0 0
キャンセル件数 2 0 4 6
不可抗力によるキャンセル 0 0 3 3
無断キャンセル 1 0 0 1
不可抗力によるキャンセル:前の利用者の無断延長などにより不可抗力によりキャンセルせざるを得なかったもの
[5]交通日誌
1)グループ別交通分担率変化
Aグループは、全期間を通してカーシェアリングの利用がまったく見られなかったため、除いて検討することとした。
・ 導入前は、Bグループでは自動車の利用が多く、Cグループではバス・鉄道の公共交通が多い。
・ Cグループでは、導入直後から積極的にカーシェアリングの利用が見られたが、自動車利用の割合は変わらず、自転車利用やその他の交通手段からの転換がやや多かった。Bグループではカーシェアリングの利用はまだ見られていない。
・ 導入してしばらくすると、Cグループでのカーシェアリング利用がやや落ち着いてきた。Bグループでは、この交通日誌実施期間では依然カーシェアリングが見られない結果となったが、実際には月に2回程度の利用が見られている。
・ カーシェアリングが終了すると、Cグループでは公共交通に対する割合が、導入前に比べ増加したが、自動車トリップにはあまり変化は見られなかった。Bグループでは自動車の割合が増加する結果となった。
2)目的別交通分担率変化
導入直後は、買い物や送迎といった、手軽な移動についてのカーシェアリング利用が多く見られたが、導入後しばらくすると、レジャー目的でのやや大きめの移動にもカーシェアリングの利用が見られ始めた。カーシェアリング終了後は、導入前とあまり変化は見られないが、自転車の割合が減り、自動車と公共交通が若干増加する結果となった。
[6]最終アンケートの結果
実験終了後に行った、実験協力者に対するアンケート結果を整理する。
カーシェアリングを利用した感想としては、ほぼ便利という結果であり、また、カーシェアリングの便利な点については理解が得られていた。
今後のカーシェアリングヘの参加の意向を見ると、A,Bグループでは、料金を検討してから、参加しないという意見が多いが、セカンドカーとしての可能性は50%の方があると回答している。
今後カーシェアリングが実施された場合、Cグループについては回答者(14人)全員が参加すると回答しており、このうち6名がいずれ自動車を購入したいという方であることから今後の自動車抑制、また、カーシェアリングの普及の可能性を示す結果となった。
カーシェアリングを事業化していくにあたっては、ICカード導入など管理体制の強化と目的地に駐車場を確保するなど駐車場のネットワーク化を望んでいることが分かった。
アンケート結果より、カーシェアリングの料金を求めると以下のようになる。
 
 入会保証金:23000円 年会費:9500円
 時間料金:240円/時間 距離料金:21円/km
3.考察
[1]移動回数と走行距離
全会員の自動車+CS合計移動回数はあまり変化していないが、Cグループに限ってみると自動車の移動回数は約4割減少したが、合計移動回数は若干の増加となっている。一方で、1週間当たりの推定走行距離は21km(22%)減少している。これはカーシェアリングの場合、料金を意識して利用するため、必要な場合にだけ(特に中距離10〜20km)利用し、無駄な自動車移動を控えていることによるものと思われる。
 
三鷹地区の平均的な年間自動車走行距離は8000km(1ヵ月当たり670km)であるが、今回のCS社会実験ではカーシェアリング利用者の平均的利用距離は1ヵ月当たり71.2km、最も利用の多かった人で約200kmと、走行距離は自家用車の1〜3割と非常に少なくなっていた。また、「いずれ自動車を持ちたいが、カーシェアリングが実現すれば参加する」意志のある会員の場合は1ヵ月当たり102kmと、やや積極的に利用していた。
いずれにせよ、多少の利用頻度などに相違はあるものの、カーシェアリング協力者の走行距離は、マイカー所有車に比べ、少ない傾向にあることが分かった。
[2]車両1台当たりの会員数の検討
未利用の会員を除外して考えると、最終的に20名の会員で自動車2台を利用したという結果であった。この20名という会員で検討すると、2台同時の稼動時間が、平日0.1%、休日4.4%、全体で1.6%であったため、1台当たり20名の会員で運行が可能である。
  10/20〜11/19
会員数10
時間(h)
11/20〜12/19
会員数15
時間(h)
12/20〜1/19
会員数11
時間(h)
全期間合計
会員数20s
時間(h)
適正会
員数
合計 1台稼働 42(5.6%) 98(13.6%) 90.5(12.2%) 230.5(10.4%)  
2台稼働(1台では不足) 7(0.9%) 2.5(0.3%) 25.5(3.4%) 35(1.6%) 20
平日 1台稼働 11.5(2.3%) 50(9.9%) 3.5(8.7%) 101(6.9%) 0
2台稼働(1台では不足) 2(0.4%) 0(0%) 0(0%) 2(0.1%) 20
休日 1台稼働 30.5(12.7%) 48(22.2%) 51(17.7%) 129.5(17.4%) 0
2台稼働(1台では不足) 5(2.1%) 2.5(1.2%) 25.5(8.9%) 33(4.4%) 20








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