3.実験データのまとめ
[1]アンケート
アンケートは実験前、実験中、実験後と3回行った。
ア.第1回アンケート
実験実施前の7月19日 全戸配布、44戸より回答(回答率13.8%)
主な目的:参加(グループ別)意向、自動車所有者の利用傾向、料金水準に対する印象等の調査。全戸にアンケートを配布し、参加希望者にはA,B,C各グループのうちから希望グループを示してもらった。同時に、現在の車の所有状況、利用状況、日常の交通手段等について回答してもらった。
■自動車と自転車の所有状況
回答者 |
自動車所有台数:26台(59%) |
平均走行距離(回答数24世帯)
7,767km/年 |
自転車所有台数:104台(2.4台/世帯) |
参加希望者 |
A希望(13世帯)
5,231km/年 |
B希望(4世帯)
8,375km/年 |
C希望(17世帯)
0km/年 |
■実験参加希望
希望グループ |
本人 |
家族 |
計 |
A |
13 |
6 |
19 |
B |
4 |
3 |
7 |
C |
17 |
9 |
26 |
■目的別の交通手段の回答者数(複数回答可)
  |
車 |
JR |
地下鉄 |
バス |
タクシー |
自転車 |
徒歩 |
計 |
通勤 |
7 |
35 |
22 |
41 |
3 |
33 |
23 |
164 |
業務 |
5 |
15 |
18 |
4 |
8 |
4 |
8 |
62 |
買物 |
37 |
11 |
6 |
27 |
5 |
48 |
26 |
160 |
レジャー |
55 |
40 |
10 |
26 |
6 |
14 |
4 |
155 |
通院 |
2 |
0 |
0 |
1 |
0 |
0 |
0 |
3 |
習い事 |
2 |
0 |
0 |
1 |
0 |
0 |
0 |
3 |
帰省 |
1 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
計 |
109 |
101 |
56 |
100 |
22 |
99 |
61 |
548 |
  |
19.9% |
18.4% |
10.2% |
18.2% |
4.0% |
18.1% |
11.1% |
  |
・ 回答者の約6割の世帯に26台の車所有があり、自転車は平均2.4台/世帯となっている。
・ マイカー所有者からの回答によると、年間平均走行距離は7800km程度で、年間維持費の平均は43万円であった。
・ 実験での料金設定を安いと思う人は25%、高いと思う人は約15%であった。
イ.第2回アンケート
実験実施中11月9日配布、実験協力者43人に配布、31件回答(回答率72.1%)
主な目的:変更、改善等要望の有無等
・ 実際に利用した印象では、予約方法、ICカードコントローラ、実験車、操作性、使いにくさについては多少意見があったものの、障害と考えるほどのものではなかった。
・ チャイルドシートについては、利用ごとの取り付けが面倒と言う意見もあった。
・ 31人の回答者のうち、この時点までに実際に実験車を利用していたのは26人で、このうち14人が希望の予約が取れないことがあったと答え、その時あきらめたことがあったのは9人であった。
・ 車所有者の実験車利用は極端に減っているが、アンケートに回答した車所有者18人のうち12人が実験期間中の車利用はいつもより少ないと答え、5人がいつもと変わらないと答えている。
■実験車両利用の有無
■予約の重複の有無
■予約重複の時の対応
・ 車両の選択は、車種が第一で、次いで運転のしやすさが理由となっている。
・ 駐車位置が相当利用に影響していると思われたが、選択時には意識されていない。
■予約時の車選択理由
(拡大画面: 47 KB)
(注)グラフは、回答の中から優先順位上位3つまでに得点をつけ、(得点:1位=3、2位=2、3位=1) その合計点による構成比を示している。
ウ.第3回アンケート
実施終了直前の12月13日、実験協力者43人に配布、34件回答(回答率79%)
主な目的:全体評価、料金評価、代替交通手段、将来参加可能性等の調査
実験は以下のような評価をされている。
・ 比較的十分な台数を提供していたためか、回答者全員が便利だと評価している。
・ 便利に感じる点として突出しているものはなく、経済性、手軽さ、環境等のいくつかの観点から評価されている。
■カーシェアリングを利用した感想
■カーシェアリングを便利に感じる点
○車所有者への設問
・ カーシェアリングのメリットを理解しつつも、実際に参加するかどうかは条件次第である。しかし、現時点で手放さないという人は一人だけである。
・ 半数は、セカンドカーとしてならカーシェアリングを利用すると考えている。
■カーシェアリングがあったらマイカーを手放しますか。
■セカンドカーとしての利用の可能性は。
○車非所有者への質問。
・ 約4割の人がマイカーを持ちたいと考えているが、カーシェアリングが事業化されてもマイカーを持つと答えた人は15%に過ぎなかった。
■将来マイカーを持ちたいですか。
■事業化されたら参加しますか。
○実験協力者が適当と思う料金
設問には、本実験の利用料金(時間料金200円、距離料金25円/km)は、カーシェアリングが一般化した時にはあり得る水準であるが、事業化は困難であるとコメントした。回答者にはその点を理解した上で適当と考える料金を回答してもらった。
・ 回答者の立場から、適当と考える料金を平均すると、概ね入会金(退会時返却)40,000円、年会費21,000円、距離料金45円/km、時間料金320円ということができる。また、回答には、料金ゼロや飛び抜けて高い料金も示されていたので、それぞれの上下2回答を除いた平均では、入会金27,000円、年会費17,000円、距離料金35円/km、時間料金300円/時間となった。いずれも、今回の設定料金を上まわっている。
■入会保証金
■年会費
■距離料金
■時間料金
[2]交通日誌
日常の交通行動とカーシェアリングの利用によるその変化を把握するため、実験協力者に実験実施前、実施中、終了後のそれぞれの期間に1週間ごとの交通日誌を記入してもらった。
なお、いずれの週も休日と平日の日数は同じであった。
第1回 実験実施前 9月17日〜9月23日 回答38人
第2回 実験実施中前期 10月22日〜10月28日 回答36人
第3回 実験実施中後期 11月26日〜12月2日 回答35人
第4回 実験終了後 12月17日〜12月23日 回答34人
ア.実験実施前における標準的な交通行動(第1回交通日誌より)
・ 利用者平均の移動回数は3.0回/日。
・ 女性は男性より約20%移動回数が多い。
・ 車所有者は非所有者より約30%移動回数が多い。
・ 移動目的は通勤37%、買い物21%、送迎10%。通学、業務等はごくわずか。
イ.交通日誌に見る行動の変化
実験の前と後の交通行動の傾向はほぼ同じで、また実験中の2回の交通行動の傾向もほとんど同様の結果であり、交通日誌のデータとしての信頼度は高いと考えられる。
・車所有者、非所有者の移動回数の変化
実験期間以外の平均の合計移動回数は車所有者は45.1回(23.6+21.5)、非所有者は34.5回(18.3+16.2)、に対し、期間内は車所有者は38.7回(20.2+18.5)、非所有者は35.7回(18.2+17.5)と、非所有者の移動回数が多少の増で変化は少ないのに対し、車所有者の場合は14%減少している。カーシェアリングの導入で、車所有者の移動が控えられていることがわかる。
■車所有者、非所有者の移動回数の変化
  |
車所有者 |
車非所有者 |
実験前 |
23.6回/週 |
計45.1回/2週 |
18.3回/週 |
計34.5回/2週 |
後 |
21.5回/週 |
16.2回/週 |
実験前半 |
20.2回/週 |
計38.7回/2週 |
18.2回/週 |
計35.7回/2週 |
後半 |
18.5回/週 |
17.5回/週 |
・交通手段別移動回数の割合の変化
交通手段別の移動回数において、車利用の割合は全体として実験前の15%が実験中は10%に低減し、終了後にはまた15%に増加している。一方、自転車、徒歩はそれぞれ5ポイント程度実験期間中は上昇しているが、実際は自転車や徒歩の移動回数自体はわずかに増えているに過ぎない。上で示したように車の利用が全体として減り、全体の分母が小さくなったため、比率上で数字が上がったものである。
一方、バス、JR、地下鉄利用については、特徴的な傾向は見られない。
従って、当該地区においてはカーシェアリング導入により、実験期間中は車利用を控え、徒歩、自転車に多少転換しているものの、公共交通への影響は結果から示すことができない。
■交通日誌に見る交通行動の変化
行動目的別平均移動回数 |
  |
  |
合計 |
通勤 |
通学 |
業務 |
買物 |
レジヤー |
送迎 |
その他 |
第1回 |
回答者平均 |
20.9 |
7.7 |
0.1 |
0.9 |
4.1 |
1.7 |
2.1 |
4.3 |
移動回数/日 |
3 |
37% |
0% |
4% |
20% |
0% |
10% |
21% |
第2回 |
回答者平均 |
19.2 |
7.1 |
0.4 |
0.6 |
4.4 |
1.2 |
1.9 |
3.7 |
移動回数/日 |
2.7 |
37% |
2% |
3% |
23% |
0% |
10% |
19% |
第3回 |
回答者平均 |
18 |
7.1 |
0.5 |
0.6 |
3.6 |
1.3 |
1.8 |
3 |
移動回数/日 |
2.6 |
39% |
3% |
3% |
20% |
0% |
10% |
17% |
第4回 |
回答者平均 |
19.5 |
7.3 |
0.4 |
1 |
4.1 |
1.4 |
1.9 |
3.4 |
移動回数/日 |
2.8 |
37% |
2% |
5% |
21% |
0% |
10% |
17% |
平均移動回数の交通手段別構成比 |
  |
  |
合計 |
自動車 |
JR |
地下鉄 |
バス |
タクシー |
自転車 |
徒歩 |
その他 |
第1回 |
回答者平均 |
29.5 |
4.4 |
5.8 |
1.9 |
5.6 |
0.5 |
6.8 |
3.6 |
0.8 |
移動回数/日 |
4.2 |
15% |
20% |
6% |
19% |
1.70% |
23% |
12% |
3% |
第2回 |
回答者平均 |
27.4 |
2.8 |
5.3 |
2.4 |
3.8 |
0.4 |
7.7 |
4.6 |
0.6 |
移動回数/日 |
3.9 |
10% |
19% |
9% |
14% |
1.50% |
28% |
17% |
2% |
第3回 |
回答者平均 |
26.2 |
2.5 |
5 |
2.6 |
4.3 |
0.3 |
6.7 |
4.2 |
0.6 |
移動回数/日 |
3.7 |
10% |
19% |
10% |
16% |
1.10% |
26% |
16% |
2% |
第4回 |
回答者平均 |
28.4 |
4.3 |
5.6 |
2.8 |
4.8 |
0.8 |
6.2 |
3.1 |
0.8 |
移動回数/日 |
4.1 |
15% |
20% |
10% |
17% |
2.70% |
22% |
11% |
3% |
・車所有者、非所有者の車利用の変化
車の所有者(A、Bグループ)と非所有者(Cグループ)の車利用の変化を比較すると、移動回数ベースで、所有者は一人平均4回程度減り、非所有者は1回程度増えている。
車所有者の車移動減少分のうち、1〜2回程度は自転車と徒歩にふりかわり、理由はわからないがタクシー、バス等その他の交通手段は全体に減少気味となっている。
■交通日誌に見るグループ別自動車の平均移動回数変化(利用回数/週)
A+B(車所有者)
  |
移動回数の交通手段別構成(1週間) |
合計 |
自動
車 |
JR |
地下
鉄 |
バス |
タク
シー |
自転
車 |
徒歩 |
その
他 |
第1回 |
31.6 |
7.5 |
5.0 |
2.2 |
4.4 |
0.8 |
7.0 |
4.3 |
0.4 |
第2回 |
27.8 |
2.9 |
5.2 |
1.6 |
3.1 |
0.6 |
8.0 |
5.8 |
0.5 |
第3回 |
26.3 |
2.7 |
4.4 |
2.1 |
3.7 |
0.5 |
6.8 |
5.2 |
1.0 |
第4回 |
30.7 |
6.7 |
5.0 |
2.6 |
3.7 |
1.0 |
6.5 |
3.9 |
1.4 |
C(車非所有者)
  |
移動回数の交通手段別構成(1週間) |
合計 |
自動
車 |
JR |
地下
鉄 |
バス |
タク
シー |
自転
車 |
徒歩 |
その
他 |
第1回 |
27.3 |
1.4 |
6.6 |
1.5 |
6.8 |
0.2 |
6.7 |
3.0 |
1.1 |
第2回 |
27.1 |
2.6 |
5.4 |
3.2 |
4.6 |
0.2 |
7.4 |
3.1 |
0.6 |
第3回 |
26.2 |
2.3 |
5.7 |
3.3 |
5.3 |
0.1 |
6.5 |
2.9 |
0.0 |
第4回 |
25.2 |
0.8 |
6.7 |
2.5 |
7.0 |
0.7 |
5.2 |
2.2 |
0.0 |
・移動目的と交通手段の変化
A,Bグループ
1週間当たりの移動目的と交通手段を見ると、マイカーは通勤、通学にはほとんど使われていない。実験期間中は車による買い物、レジャー、送迎が減少している。
実験期間外の平日は、車利用の1/3程度が買い物、レジャー目的であるが、実験期間中の車の利用は、買物目的が普段の1/3に、レジャー目的も2/3程度に抑えられ、その分が全体の移動回数の減少につながっている。
休日についても、自動車の主な移動目的は買物とレジャーで、カーシェアリングの利用と合わせても1/2〜2/3に減少している。それぞれ公共交通に転換する動きは見られず、自転車や徒歩に移行している程度である。実験により、車の利用だけが減少したということができる。
Cグループ
実験期間中のカーシェアリングの利用目的は、業務、買い物、レジャー、送迎と多様である。
特にカーシェアリングが利用できるようになり、実験期間外には見られなかった送迎が、カーシェアリング利用の1/5に達した。地域性もしくは特殊条件が存在すると考えられる。
休日の車利用は顕著に増加している。買物目的の車利用がカーシェアリングを利用することにより、通常の2倍になり、全体の半数以上を占めている。レジャーでもカーシェアリングを利用しているものの、レジャー目的の車利用回数そのものは増加していない。休日のカーシェアリング利用の特徴は、通学、通勤に少し利用されている点である。
■A+Bグループ(車所有者)の移動目的と交通手段の変化
○自動車+カーシェアリング
実験期間外
実験期間中
○自転車+徒歩
実験期間外
実験期間中
■Cグループ(車非所有者)の移動目的と交通手段の変化
○自動車+カーシェアリング
実験期間外
実験期間中
○自転車+徒歩
実験期間外
実験期間中
(注)ここで示している自動車とは、会社の車、レンタカー、知人の車および同乗を含む。