日本財団 図書館


II−1.コスモ王子ガーデンズ・カーシェアリング社会実験
1.概要
[1] 実験目的
1) 需要の把握
マイカーに代わり自動車の共同利用が受け入れられる可能性と条件等を利用実態、アンケート等から検討する。
2) 採算性の検証
利用実態を勘案しつつ、事業採算性と運営上の課題等を把握する。
3) 社会的効果の検証
交通量減少による環境負荷の低減、車両数減少による都市空間占有の軽減、モビリティ拡大による都市活動の活性化等の社会的効果を検証する。
[2] 社会実験の特徴
1) 有料実験
利用に応じた課金により、利便性と費用の関係の傾向を把握する。
2) ガソリン車
低公害車(低燃費かつ低排出ガス認定車)
3) 無人貸し渡し/返却
ICカード利用で24時間無人貸し渡し、返却を実施
4) 車の利用条件による利用者のグループ化
マイカーからの乗り換え、セカンドカー的利用等を想定した、条件の異なる利用者グループを形成
5) その他
同一マンション居住者
(利用料金による利用の変化を把握するため、料金変更を実施)
利用実態と並行し、交通日誌、アンケート等により様々なデータを収集
実験協力者への情報提供、コミュニケーションの充実
レンタカー許可を取得(レンタカーの現行制度内での実施)
[3] 実験協力者のグループ化
利用者の条件の違いによる交通行動の違いを把握するため、利用者を次の3つのグループに分けて、それぞれの利用実態等のデータを比較した。
・Aグループ カーシェアリングに乗り換えることを想定するグループ(実験中はやむを得ないとき以外マイカーを使わないよう要請)
・Bグループ カーシェアリングをセカンドカーとして利用するグループ(マイカーを所有し、実験中もマイカーの利用可能)
・Cグループ マイカーを所有していないカーシェアリングの利用者グループ
[4] 社会実験実施方法の概要
社会実験の具体的な概要は以下の通りである。
 
コスモ王子ガーデンズ・カーシェアリング社会実験概要
■実行組織 交通エコロジー・モビリティ財団(実施主体)+実験実施グループ
■期間 平成13年9月24日〜12月15日
■実施場所  
○管理センター コスモ王子ガーデンズコスモフォーラム内フロント受付
  所在地:東京都北区豊島5-2-50
○駐車スペース タイムズ豊島駐車場(マンション隣接地)(11台のうち4台分を借り上げ)
■実験協力者 上記マンション居住者の中から希望者を募集
■実験規模 車両台数:4台
駐車場:1ヵ所(駐車スペース数:4台分)
実験協力者数:43人
■車種 2種類
1.YRV(ダイハツ)1300cc2台
2.ブルーバードシルフィ(日産)1800cc2台
■通信手段 緊急連絡用としてPHSを搭載
■貸し渡しシステム 日本信号カーシェアリングコントローラ(ICカード対応キーボックス)
■走行データ記録方法 利用時間:鍵の取出、返却時のICカード利用記録
走行距離:車内の走行記録簿に利用者が記入
■料金体系 時間料金:200円/時間+距離料金:25円/km
(11月17日より1300cc車の利用料金を時間料金:150円/時間+距離料金:20円/kmに変更)
■管理センター運営時間 平日9:00〜18:00
土日祝日9:00〜16:30
■予約方法・受付時間 インターネット:24時間
電話:平日9:00〜18:00/土日祝日9:00〜16:30
■貸し渡し時間 24時間(無人貸し渡し)
■利用手順 事前に所定の申込用紙を提出し実験協力者登録をし、ICカードを受けとる。
1.電話またはインターネットで予約をする。
2.予約時間になったら駐車場に行き、カーシェアリングコントロ一ラにICカードを挿入する。
3.コントローラの扉を開け、中から車のキーを取り出す。同時にチェックインも行われる。
4.利用者自身が車両状態と走行記録簿を確認し車を利用する。
5.利用後、車を駐車スペースに戻し、車内の走行記録簿に走行距離等を記入し、車をロックする。
6.コントローラにICカードを挿入し扉を開けてキーを戻し、扉を閉める。同時にチェックアウトも行われる。
7.月1回送られてくる使用料請求書の請求金額を確認し、銀行振込又は管理センターにて支払う。
■その他 ・交通行動把握のためのアンケート
・交通日誌の記入。
・協力者を利用条件の異なる3つのグループに分ける。(A:車所有/マイカーを封印、B:車所有/セカンドカーとして利用、C:車非所有/カーシェアリングの加入者)
・随時ニューズレターを発行し、情報提供に努める。
 
■その他
・ホームページ (専用ホームページを設置。エコモのHPとリンク)
  ・活動紹介/予約申し込み・確認等/利用状況の確認等
・予約ソフト ・駐車場横のカーシェアリングコントローラ及びICカードの利用と連動する予約管理システムを作成(記帳を基本とする程度のもの)(日本信号の開発ソフト)
・予約等 ・予約受付は直前も可。先約がある場合、利用終了予定時間後の30分間は予約不可
・給油方法 ・ガソリン残量1/4以下の時、契約スタンドでの給油を利用者に要請
・協力者関連 ・選定プロセス(説明会等広報、協力者募集、レクチャー、選定)
  ・約款同意の上での申し込み受付、ID番号・ICカード発行
  ・実験前中後の交通日誌の記入協力を要請
  ・協力者の利用実態のデータ化の了承とプライバシーの保護の確認
  ・協力者のうちAグループには所有車1台につき車両維持費相当10万円を補償、その他には5000円相当のプリペイドカード等を進呈
・駐車場設備 ・カーシェアリングコントローラ1台(日本信号のシステム)
  ・コンピュータサーバの設置
  ・車は所定の駐車スペースに駐車
  ・外部の時間貸し駐車場の4台分一括借り上げ
・車載装置等 ・緊急時連絡用PHS
  ・走行記録簿(貸し渡し証を兼ねる。利用者名、利用時間、利用目的、目的地、走行距離等を記入)
  ・貸し出し用チャイルドシートを用意
  ・禁煙
・管理センター ・カウンター・電話/ファックス・パソコン端末
・広報活動 ・協力者選定までのプロセスにおける情報提供/実験中の情報提供(ニューズレター等)
  ・実験成果の報告
  ・インターネットホームページヘの情報提示/プレスへの情報提供
・精算 プログラムによるデータ処理、記帳を集計、計算
・データ 帳簿、ICカード、走行記録簿、アンケート、交通日誌
  利用実態 個人別利用実態(日・月集計)
    予約方法、予約の利用前時間、予約集中
    個人別利用時間、利用回数、走行距離、目的、目的地
    車の利用状況 利用回数、利用時間
  トラブル状況 予約関連、車両関連、利用者関連
  アンケート 属性アンケート(実験前)
    満足度(利便性、利用の確実性、価格、車種等)
    加入予定等、所有の意向の変化等
    実験期間前後との比較
    交通行動アンケート(実験期間及び前後の交通行動)
  交通日誌 移動目的、時間、交通手段
 
■実験対象地区周辺見取り図
(拡大画面: 291 KB)
z1011_01.jpg
■駐車スペース
(拡大画面: 21 KB)
z0012_01.jpg
当初、出入り口に近い方から1800ccの1号車、2号車、1300ccの3号車、4号車の順に駐車位置を指定。11月17日から、実験終了までの約1ヵ月間、1800ccの2号車と1300ccの3号車の駐車位置を入れ替えた。
 
■使用する低公害車
z0012_02.jpg
 
経済産業省、国土交通省、環境省による低公害車開発普及アクションプランにおいて以下の車が低公害車として位置づけられてる。
アクションプランの対象となる低公害車
(1)実用段階にある低公害車と(2)燃料電池自動車等の次世代低公害車があり、実用段階にあるものとして、
1 天然ガス自動車(CNG自動車)
2 電気自動車
3 ハイブリッド自動車
4 メタノール自動車
5 低燃費かつ低排出ガス認定車
がある。
平成13年7月11日経済産業省、国土交通省、環境省記者発表資料より抜粋
 
○利用料金・支払い
カーシェアリングでは一般に、入会時に保証金(退会時に返還)、及び手続き等の費用が必要であるとともに、月会費等の固定費と、利用に応じた料金を支払うことが多い。
本実験では、期間も短いことから、利用時間と走行距離に応じた料金のみの課金とした。
■料金表(以下に消費税が加わる)
車種 YRV(ダイハツ1300cc) ブルーバードシルフィ(日産1800cc)
時間料金単価 200円/時間(9/24〜11/16) 200円/時間
150円/時間(11/17〜12/15)
距離料金単価 25円/km(9/24〜11/16) 25円/km
20円/km(11/17〜12/15)
1ヶ月利用料金=時間料金単価×累積時間+距離料金単価×累積距離(km)
(ガソリン給油協力者には、1回につき時間料金15分間分をサービス)
毎月末に各協力者のその月の利用に応じた料金を集計、計算し請求を行う。
 
○利用者グループの属性等
実験協力者はやや高級な民間分譲マンションの居住者であった。
協力者の平均年齢38.8才、平均世帯人数3.4人と、一般に自動車利用の可能性の高い集団と考えられる。内訳は、車所有者21人、非所有者22人とそれぞれの交通行動が把握できる構成となった。
・グループ別構成
Aグループ 実験期間中はマイカーを極力使わない実験協力者 16名
  (マイカーを手放してカーシェアリングに転換した場合を想定)  
Bグループ マイカーを保持したままの実験協力者 5名
  (セカンドカーとしてカーシェアリングに参加)  
Cグループ マイカーを持たない実験協力者 22名
 
・年齢構成
20代 30代 40代 50代
6人 18人 16人 3人
 
[5] 予約の仕方
管理センターの営業時間内であれば電話予約ができる。一方、インターネットで予約することもできる。この場合24時間、以下の手順で予約、確認、キャンセルができる。
 
■予約の仕方
 会員認証画面より予約画面に入る。
(拡大画面: 123 KB)
z0014_01.jpg
 
■予約内容の確認
(拡大画面: 26 KB)
z0014_02.jpg
 
■キャンセルの仕方
(拡大画面: 32 KB)
z0014_03.jpg
 
■管理者用のページ
管理者用のページでは電話で受け付けた予約を行うことはもちろん、各種個人情報や利用状況の閲覧、車両情報や運用定数の設定等を行うことができる。
(拡大画面: 254 KB)
z0015_01.jpg
[6] 車の利用方法
車の利用は、予約をした後駐車場横にあるカーシェアリングコントローラで、ICカードを使って利用開始時間のチェックインをし、鍵を取り出す。また、車を返す時はICカードを使い鍵を戻して、返却の確認をする。その時が利用終了時刻として記録される。予約さえ取れていれば、無人で貸し渡しと返却が24時間できる。
なお走行距離は、車内の走行記録簿に利用者が記入し、管理者が集計する。
 
■車の借り方・・・・車のキーを借りるまでの流れ
予約した時間になったら、駐車場に行く。駐車場に設置してあるコントローラで、チェックインし、キーの取り出しを行う。
z0016_01.jpg
 
■車の返し方
予約終了時間までに駐車場に戻り、駐車スペースに車を止める。
車から降りる前に、走行記録簿の記入事項に間違いがないか確認し、署名をする。
ICカードでキーの返却、チェックアウトをする。
z0016_02.jpg
[7] 各種データの収集
予約はインターネット等コンピュータの画面上で、利用時間に関してはICカード利用により、自動的に電子データとして記録される。走行距離については各車内においてある走行記録簿に、利用時に記入してもらう方法をとった。
また、カーシェアリングによる交通行動の変化を見るため、実験前と実験中2回、及び実験後の合計4回、各一週間ずつ実験協力者各人に交通日誌記入を要請した。さらに、実験協力者の属性や意向、事後の評価、将来参加の意向など、走行記録や交通日誌で得られない情報をアンケートを行い収集した。
以下に実験に用いた走行記録簿の書式、記入方法などの例を紹介する。
1) 走行記録簿
走行距離データを把握するには、車両のトリップメーターと連動した機器、もしくはGPS等デジタル機器の利用で実際の移動距離を計測する方法があるが、計測精度と、コストの面から、草の根的な今回のカーシェアリングでは不要と判断し、利用者本人に走行記録簿に記入してもらった。 なお、走行記録簿の裏面には利用に当たっての注意事項等が明記してあり、貸し渡し証を兼ねている。
 
■実験で使用した走行記録簿
(拡大画面: 47 KB)
z0017_01.jpg
 
走行距離は、利用者各自が利用終了後、走行距離メーターを読みとり、自分の走行記録簿に終了距離として記入をする。同時に、次の紙面に利用開始距離として、同じ数字を書き入れる。次の人は、その記録を確認して、利用するということを繰り返す。利用開始距離と利用終了距離との差が、走行距離となる。
 
2) 交通日誌
今回の社会実験において、実験期間中の車利用に加えて、実験期間以外の、あるいは車利用以外の日常の交通行動を把握するため、実験協力者に交通日誌の記入を要請した。
カーシェアリングの利用によりどのような変化が起きたかを確認するため、実験開始前(1週間)、実験中(計2週間)、実験終了後(1週間)の、計4週間分の交通日誌の記入を要請した。 記入内容は、その日の移動の、行先、目的、移動手段、移動回数である。
 
■交通日誌記入期間
1 実験開始前 9/17〜9/23
2 実験期間中(その1) 10/22〜10/28
3 実験期間中(その2) 11/26〜12/2
4 実験終了後 12/17〜12/23
 
以下は、ある1日の交通日誌の記入例である。協力者の職業、職種等により移動回数が大きく異なるため、データの精度と記入の簡便さとのバランスを保持することに配慮し、パーソントリップ調査で使われる書式を簡略化して作成した。実験協力者には毎回一週間分の記入を要請した。
 
【交通日誌記入例】
(拡大画面: 50 KB)
z1018_02.jpg
【参考例】パーソントリップ調査票の記入例
(拡大画面: 93 KB)
z1018_03.jpg
[8] 実験実施に関連して用意した書類
既に示した諸書式を含め、実施に当たっては以下にあげる様々な書類が必要であった。
・運営関連の各種書類等
 実験協カ者名簿
 予約台帳
 運行管理台帳
 走行記録簿兼貸し渡し証
 点検記録簿
 事故報告書
 各種マニュアル
 インターネット予約操作手順、キーボックス操作手順、運営チェックリスト、トラブル処理マニュアル、料金精算マニュアル
 各種記録簿等
 ICカード、インターネット利用による諸データ、月別個人利用集計及び請求書、交通日誌
・実験協力者との授受資料、配布資料等
 申込書
 車検証のコピー(Aグループ対象)
 ICカード引換証
 利用の手引き、及び、約款
 説明会資料、ニューズレター
・レンタカー事業者許可申請手続き書類
2.実験プロセス等
平成12年度に策定した実験実施基本計画に基づき、本年度は実験場所の確定、運営システムの確定、必要とするデータの確認、アンケート・交通日誌等の準備、実験協力者側との接触等を進めてきた。本年度の実験実施に直接関わる作業手順等を以下に示す。
実験中、大きな条件の変更は、11月17日から約1ヶ月間、1300cc車(YRV)の料金変更(時間料金を150円、距離料金を20円に引き下げ)をし、利用状況の変化を観察したことである。同時に、駐車スペースの配置が利用に影響を与えているかを確認するため、1800ccの2号車と1300ccの3号車の位置を入れ替えた。
 
期間 活動内容及ぴ協力者対応 実験実施作業 広報等
居住者向け資料/交通日誌/アンケ一ト等 一般向け(新聞、TV、HP等)
4月 事前広報 ・事前交渉 実験概要決定   公募アナウンス
5月   ・実験要請 理事会説明用資料作成   (5/24朝日新聞掲載)
6月 情報提供 ・実験受入承認   説明会資料 フリーダイアル開設
7月   ・実施地の確定
・協力者募集
・仮申込書配付
・住民説明会
交通日誌等各種フォーマット検討
分析方法の検討

実験詳細の詰め
NEWSLETTER01(協力者募集案内、趣旨説明等)
住民説明会開催通知
NEWSLETTER02(利用方法等)
アンケート(参加希望・属性)
NEWSLETTER増刊(説明会開催)
(7/16朝日新聞掲載)公募結果
(実験地決定)アナウンス
8月 事前準備 ・仮申込受付 基本システム構築(車/デ一タ収集方法/セキュリテイ) 利用の手引き
NEWSLETTER03(説明会案内)
NEWSLETTER04(スケジュール)
交通日誌配布
 
9月   事務スペース開設
・契約説明会
・協力者決定
【協力者申し込み】
・組合と覚書取交し
・試乗オリエンテーション9/21〜23
実験準備
機器等設置/システムチェック

サーバーオープン9/23
17:35
9/17〜23交通日誌 1.実験前 HP開設
  実験 9/24実験開始   NEWSLETTER05(開始/利用拡大) 実験開始のアナウン
10月   ・利用拡大キャンペ一ン
・10/16〜22無料試乗会
途中経過報告 10/22〜28交通日誌 2.実験中  
11月     11/17料金変更 NEWSLETTER06(内容変更等)
中間アンケート
11/26〜12/2交通日誌 3.実験中
 
12月   12/15実験終了 12/15-16:40
サーバークローズ
  12/9現地取材
  事後整理   12/17機器等撤去、原状復帰
実験データ分析
事後評価アンケート
12/17〜23交通日誌 4.実験後
(12/29朝日新聞掲載)
1月 集計       実験結果速報HP掲示
2月
3月
まとめ 実験結果報告 報告書編集 NEWSLETTER07(実験結果報告) 実験結果のアナウンス








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION