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I.自動車の共同利用と社会実験の方向性
1.社会実験で目指す自動車の共同利用・・・・カーシェアリング
当財団では、平成11年度「エコ交通に関する調査研究」、平成12年度「自動車共同利用システムに関する調査研究」と研究を進めてきた。
昨年度までの研究においては、これまで通りの自動車利用は環境面から問題が大きく、既存の車の使い方や既存の交通手段にとどまらず、
 [1] 新しい車の使い方の推進
 [2] 中間的な交通手段の導入
が重要であると考え、その中でも、「新しい車の使い方」として自動車の共同利用(カーシェアリング)が、比較的普及が容易で、大いに効果が期待できる都市交通であると考え、実験に向けた検討も進めてきた。
その成果をふまえ、平成13年度は、カーシェアリングの普及のために必要な情報収集と事業性の検証を目指したカーシェアリングの社会実験を東京都内において行った。
 
我が国では、電気自動車を利用したパブリックカーの可能性を検証する社会実験は、活発に行われている。しかしながら、車の共同保有に根ざした、すなわち草の根的な小規模カーシェアリングの普及を目指した実験は今回が初めてである。
本実験は
 [1] 低公害のガソリン車(低燃費かつ低排出ガス認定車*)の使用
 [2] 利用者からの利用料金の徴収
を特徴としており、実際の運営に近い形で実験を行った。
 
○社会実験で目指すカーシェアリング
・ 最もベーシックな形態の草の根的な小規模事業
・ マイカー的な利用で、保有に近い感覚の共同利用
注) 自動車の共同利用の二つのタイプ
・ パブリックカー 公的機関や企業等が所有して、一般に貸し出すもので、電気自動車や低公害車など従来の自動車に代わる車両と最新の管理技術によっている。ハイテク志向の大規模技術開発型といえる。
・ カーシェアリング (組織的カーシェアリング)
  通常の乗用車を複数の個人が共同所有して利用するというもの。仲間同士等の共同利用といった自然発生的なものが、次第に拡大し、所有と利用について規則を設けて組織化を図ったもの。ローテクで草の根的な小規模コミュニティ活動から始まったものが多い。
このように両者は出自や方向性の違いがあるが、相違は縮小してきている。
2.カーシェアリング社会実験の位置づけ
自動車の共同利用を日本で定着させるためには乗り越えるべき様々な課題がある。
本実験で普及を目指すカーシェアリングにおいては、以下に示すようないくつかのレベルの課題があると考えられている。
1)ニーズレベル (需要)・・・・ 共同で車を使うことへの違和感等がなく、実際に利用されるのか。
2)社会レベル (効果)・・・・ 環境、都市空間等への効果が期待できるのか。
3)経済レベル (採算性)・・・ 事業として成立するのか。
  (商品価値)・・ 不便さよりも、意義や効果が価値あるものとして受け入れられるか。
4)システムレベル (制度等)・・・ 普及促進、支援を社会として行う必要があるか。
  (連携/拡大)・・ 利便性の向上によるさらなる普及。
カーシェアリングが日本で一般化し、発展していくためには、これらの課題が段階ごとにクリアされなければならない。
本社会実験は、日本におけるカーシェアリングの第一歩としての実証実験である。その第一ステップとして、車を共同で利用するカーシェアリングが日本で受け入れられるか、なじむかという点を中心テーマとして最初のニーズレベルを検証していく。我が国におけるカーシェアリングの市場性、すなわち、需要の有無、利用の傾向などの把握を中心課題とし、あわせて、社会への効果、事業性も考えていく。
 
○カーシェアリングのレベルと社会実験の位置づけ
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3.実験で想定する運営形態のタイプ
日本でカーシェアリングが実際に運営される場合、さまざまな運営形態が想定される。
その中で可能性の高いものとして、以下が考えられる。
 
A.事業化タイプ A−1.小規模独立経営 (個人企業、組合、NPO等)
  A−2.関連他業種運営 (レンタカー会社、駐車場経営会社、ガソリンスタンド、タクシー会社等)
B.住宅関連付帯サービス(マンション、団地、住宅地等)
 
今年度は、12年度から実施を目指して検討してきた王子における社会実験の成果の検討を主とし、それに加え、公募により選定した三鷹の実験の成果もあわせて検討した。
以下にそれぞれの実施場所における基本条件の共通点、相違点を整理した。
 
実験名称 コスモ王子ガーデンズカーシェアリング社会実験 三鷹・シティーコート下連雀カーシェアリング社会実験
実行組織 エコモ財団(実施主体)+実験実施グループ エコモ財団(実施主体)+早稲田大学理工学部交通計画研究室
実施場所 東京都北区 東京都三鷹市
対象 民間分譲マンション 公団賃貸住宅団地
実験協力者 マンション居住者 団地居住者
周辺交通条
営団地下鉄駅まで徒歩約15分
路線バスの便は良い
JR駅までバス約10分
路線バスの便は良い
敷地内駐車
場空き状況
ほぼ満車状態 空きあり
 
両社会実験とも
Aの事業化タイプ
である。コスモ王子ガーデンズは外形的に、また実験協力者の属性の面でも、
B.住宅関連付帯サービス
に近い。実際、実験協力者はマンション住民に絞られているが、駐車場は外部にあり、周辺の住民を含めた地域で運営をする事業形態ということもできる。また、シティーコート下連雀も、結果的に一団地内での運営となったが、諸事情が許せば周辺住民も含めた運営を想定していたものであり、いずれも地域での草の根的な運営と考えることができる。
4.カーシェアリング運営における本社会実験の特徴
最もシンプルかつ、小規模な形式の草の根的なカーシェアリングの運営は、下図の実線内に示した内容である。
本実験では、データ集計の容易さを考慮し、草の根としては多少高度な技術と思われるICカードを利用した。もっともこのICカードは、比較的安価に導入でき運営の負担になるほどでもないので、近い将来、小規模な草の根的なカーシェアリングでも導入できると考えられる。
このように、多少高度な技術も一部取り入れたが、基本的にはあくまで普及の主役になると考えられる小規模な事業者によるカーシェアリングの運営形態を想定し、実験実施グループ参加企業団体等の協力を得ながら、一部発展形の下図太線内の内容を設定し、実験を行った。
 
■本社会実験のタイプ(王子での実験例)
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■社会実験と想定する事業形態(コスモ王子ガーデンズの例)
    実験で想定する設定内容等 実験時の方法
運営形態 事業主体
利用者
運営主体
運営事務所
(住宅関連付帯サービス)小規模独立経営
会員を限定
個人小規模事業者
賃借
エコモ財団の交通社会実験
マンション居住実験参加希望者募集
実行組織
マンション内に賃借
車両関連 修理
維持管理
保険
外部委託
外部委託
一般保険
外部委託(レンタカー業者の協力)
外部委託(レンタカー業者の協力)
特殊な保険
サーピス関連 車種
駐車形式

予約
貸し渡し

キー授受
位置測定
時間走行距離記録
通信機器
データ記録
精算
不足時の補填
低公害のガソリン車
小型車
シングルポート(車を戻す)
電話・インターネット・iモード
無人(登録時契約)

キーボックス・手渡し
なし
走行記録簿
なし
帳簿
個別計算
なし
低公害のガソリン車
1300ccと1800cc
1ヶ所4台分一括賃借
電話・インターネット
無人/駐車場コントローラ使用
(登録時契約と走行記録簿兼貸し渡し証)
キーボックス、ICカード
なし
ICカード・走行記録簿
なし(緊急連絡用PHS)
帳簿(ICカード)
個別計算(ICカード)
宅配レンタカー(不使用)
運営規模内容 台数
会員数
駐車場・デポ数
アクセス距離
5〜15台
100〜300人
1〜5
200〜500m
4台
43人(車所有者、非所有者をグループ化)
1
50m
その他 料金体系


その他
保証金、月会費、利用に応じた課金

複数の料金体系(利用度、平日休日等)
利用に応じた課金(距離、時間)
保証金、月会費等はなし
一律料金(途中から車種により課金に差)
不足しない十分な車両数を用意
カーシェアリング社会実験 システム利用イメージ図
■社会実験の実施システムイメージ図(王子での社会実験の例)
(拡大画面: 84 KB)
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■実験駐車場の風景・・・一般の時間貸し駐車場の一部に4台分を確保
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使用したICカード
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■駐車場コントローラ・・・ICカードで鍵の授受ができ、24時間無人貸し渡しが可能になっている。
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