(2)ILC草案
領海における外国船舶の通航に関して、1955年国際法委員会草案第17条、それを修正した1956年国際法委員会草案第16条は「沿岸国の義務」として、次のように規定していた
(7)。
1955年国際法委員会草案第17条
1.沿岸国は、領海における無害通航権を妨害してはならない。沿岸国は、領海において海上交通自由の原則(the principle of the freedom of maritime communication)の尊重を確保するために、とりうる手段を用い、領海が他国の権利に反する行為のために使用されないようにしなければならない。
2.沿岸国は、航行に対する危険を知ったときは、それを正当に公表しなければならない。
1956年国際法委員会草案第16条(沿岸国の義務)
1.沿岸国は、領海における無害通航を妨害してはならない。沿岸国は、領海における無害通航(innocent passage)の尊重を確保するために、とりうる手段を用い、かつ、領海が他国の権利に反する行為のために使用されないようにしなければならない。
2.沿岸国は、航行に対する危険を知ったときは、それを正当に公表しなければならない。
コメンタリーによれば、これらの条項は沿岸国の義務に関し、委員会は最大限に無害通航を確保する義務は、第一次的にはその通航を妨げない義務にある点を明らかにしたものである
(8)。この条項は、コルフ海峡事件判決で示された諸原則を確認したもので、無害通航を妨げるならば、領海の海底及びその地下を開発するための施設は、領海の一部を構成し国際航海に不可欠な狭水道又は海上航路内に設置されてはならないことを指摘していた
(9)。