4.国連海洋法条約の関連規定
(1)領海
本稿は、領海を直接の考察対象とはしていない。しかし、公海および排他的経済水域上の漁船の航行の自由を考察するにあたり、領海の関連規定について、以下の基本構造を確認しておくことは有意義である。
領海においても、外国漁船に対する沿岸国の規制と外国漁船の無害通航権の調整という状況はある。ここでは、19条2項(i)は、「漁業活動」に有害性の推定をおいており、行為態様ないしは活動に対する規制という原則を明らかにしている。また、漁具の格納については、規定は実現しなかったのであり、漁具を格納しないで通航しているだけでは、「無害ではない」という推定ははたらかない。
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19条1項において、「船種」を根拠とする規制、とりわけ、軍艦に対する無害通航権の制限が議論されている。けれども、すくなくとも、無害通航権を規定する17条の議論においても、かりに、19条1項がいわゆる船種別規制の趣旨を規定すると解するとしても、「漁船」が無害通航権を制限される対象として意識されてはいない。
*33 むしろ、漁船であっても、漁獲を行わずに通航する場合には、無害通航権をもつという前提にたつがゆえに、漁具の格納が、「漁業活動」の解釈と結びつけて議論されているのである。「漁船」を理由に無害通航権を制限できるのであれば、ことさらに、漁具の格納を求める必要もない。
このように、関連規定の解釈として、外国「漁船」であっても、領海内の無害通航権は認められるのであって、漁業活動に対する規制との調整は、19条2項(i)の「漁業活動」、沿岸国の法令制定権の規定21条、沿岸国の保護権の規定25条の解釈によって行われることになる。無論、漁船が漁業活動を行わなくても、また、無害通航権を享受するとしても、たとえば、不審な動きをするような場合に、19条1項や19条2項の(l)によって、無害ではないという認定を受ける可能性が残るのはいうまでもない。