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3.先進事例の調査
 次の2つの事例について関係機関へのヒアリングを実施し、「なぎさトレイル」整備にあたっての留意事項をまとめた。
 [1]海辺に位置しユニバーサルデザインに積極的に取り組んだ「りんくう公園」
 [2]海辺のネットワークを目指した「横須賀10,000メートルプロムナード」
(1)ユニバーサルデザインによる公園整備の事例(大阪府りんくう公園)
日時: 平成13年7月18日(水) 14:00〜15:00
場所: りんくう公園管理事務所
ヒアリング先: 二色の浜公園・りんくう公園 公園長 小泉茂樹氏
出席者: (財)大阪湾ベイエリア開発推進機構 野口 部長
  (財)大阪湾ベイエリア開発推進機構 黒谷 調査役
  アルパック(株)地域計画建築研究所 竹野
1)りんくう公園の概要
 ・開園:平成8年10月10日オープン
 ・供用面積:17.5ha(シンボル公園:9.0ha、シーサイド公園:8.5ha)
 ・全体公園計画面積:60.4ha
 ・年間入園者数:約45万人
 ・来園交通手段:南海・JR・自動車・徒歩・自転車
 ・基本コンセプト:海の景観を楽しめる(静観)、設計当初からユニバーサルデザインの考えを入れた大阪府最初の公園である。
 ・りんくうタウン駅から車椅子で来園できる。
 ・園内は4%以内の勾配としている。
 ・この公園は大阪府の企業局が整備し、大阪府へ譲渡された公園で、大阪府が直接整備する通常の公園よりもグレードが高くなっている。
 ・利用者は子どもやファミリーが中心である。
 ・付近住民はイヌの散歩や自転車により来園する。
 ・イベントとしては、つばさのまちフェスタ(8月4日・5日)が毎年開催されている。
 ・駐車場は、公園専用として萩駐車場73台、その他にP1駐車場が、りんくうタウン全体や関空利用者の駐車場として利用されており、数百台の収容台数がある。
2)安全対策
 ・シンボル公園には安全柵をしている。
 ・内海では、砂浜遊び、水遊びをしてもよい。
 ・内海(内水面)には、遊ぶ人等が万が一おぼれた時のために浮き輪を設置しているが、柵を越えてつりなどをしている人のための安全対策はとくにない。
 ・マーブルビーチ側には、とくに安全柵や浮き輪などは設置されていない。
3)ユニバーサルデザイン
 ・シンボル緑地とシーサイド緑地の正面入口には、通常の園内案内板に加え、点字による標記・ボタンスイッチによる音声案内が設置されている。
 ・点字ブロックについては、建物施設の前からは設置しているが、園内全てには費用面から設置していない。
 ・そのほか、モデルルートには、地面にパイプを埋め込み、それに沿っていけば、公園を一周できるようにしている。また、モデルコースの各ポイントの案内板には、番号が書かれてあり、貸し出し用のMDプレイヤーにより数字を選ぶと、そのポイントの説明が聞けるような工夫もしている。
 ・トイレは、ゆったりと作ってあり、トイレの間隔が他の公園よりも小さい。(多くのトイレがある)
 ・太鼓橋は直接登れないが、横の休憩施設からエレベータで上に行くことができる。
 ・また、車イスの方も内海の砂浜へ行けるように、サンドバギー(車イスのタイヤが太く、砂地走行も可能なようになっている)を貸し出している。
 ・貸し出し実績は、1例で、このバギーの存在をPRしていくようなことも必要だと考えている。
4)周辺資源とのネットワーク
 ・基本的に、バリアフリーでどこへでもゆけるが、周辺施設と結ぶ場合には、車との交錯が危険である。
5)市民団体・NPOとの関係
 ・一般に公園に関する市民団体やNPOは、清掃、自然学習、花壇管理、公園案内の分野がある。
 ・公園案内の市民団体は、高齢者や身障者と一緒に公園を散策し、楽しむことを目的に活動している。
 ・服部緑地、大泉緑地、浜寺緑地に市民団体とNPOがある。
 ・服部緑地ではリーダー養成講座がある。
 ・せんなん里海公園、久宝寺公園では花壇管理の市民団体・NPOがある。
 ・これらの市民団体・NPOの存在は、公園管理者にとって、彼らの公園への愛着が増し、美化や管理に役立つことから、重要なパートナーと位置づけている。
 
写真:りんくう公園
[1]: 案内板(園内全体図、点字、音声)
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[2]: 貸し出しMDによるガイド
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[3]:おすすめコースの埋め込み
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[4]:貸しサンドバギー
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[5]:安全柵
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[6]: シンボル公園とマーブルビーチをつなぐ通路
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[7]:マーブルビーチの遊歩道
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(2)海辺のプロムナード整備の事例(横須賀10000メートルプロムナード)
日時: 平成13年7月25日(水) 13:00〜14:00
場所: 横須賀市役所 企画調整部文化振興課
ヒアリング先: 横須賀市役所 企画調整部文化振興課 鈴木博美 主査
出席者: (財)大阪湾ベイエリア開発推進機構 野口 部長
  (財)大阪湾ベイエリア開発推進機構 黒谷 調査役
  アルパック(株)地域計画建築研究所 竹野
1)概要
(基本的な考え方)
 ・横須賀市の文化元年(昭和57年)に市民文化財団の設立とともに、海と緑の10000メートルプロムナードを位置づけた。
 ・横須賀の玄関であるJR横須賀駅と京急横須賀中央駅に近いヴェルニー公園から観音崎までのキリのよい約10kmの区間を位置づけた。
 ・さらに延伸することも考えられるが、まずは10kmを完成させることが先決であり、延長を長くすると予算的な面が厳しくなり、多くの市民が生活している場所を位置づけることが重要と考えている。
 ・神奈川県レベルでは、水辺で半島一周することを検討しているようだ。
(整備の内容)
 ・道路の歩道部分を拡幅したり、緑化するなどして、歩行者にやさしいプロムナードとして整備している。
 ・プロムナードは、埋立地内の臨港道路や既設の歩道を活用しており、必ずしも水際部分に歩道があるわけではない。
 ・利用者層の中心は近隣住民であり、主に散策に利用されている。
(事業手法)
 ・公園事業や港湾環境整備事業などを組み合わせて整備している。
 ・新港の臨港道路では、両側に歩道があるが、10,000メートルに位置づけているものは、歩道幅が広く、緑地とところどころに噴水が整備されている。
 ・噴水が多く設置されている理由は、補助対象になったからである。
 ・10000メートル計画当初の整備イメージと少しずつ異なってきているところもある。
 ・馬堀海岸では、当初計画ではボードデッキでつなぐことを考えていたが、背後の高級住宅が平成7年と8年と2年連続して台風による高潮のため浸水したことから、海岸整備事業により、緩傾斜の面的防御を行う予定である。
 ・市の港湾局では、できる限り10000メートルの趣旨にそった遊歩道を整備するため、海岸整備事業に対して、要望を行っているところである。
(イベントなど)
 ・イベントとしては、この10000メートルにちなんだものではないが、新港で花火大会を開催している。
 ・京浜急行がハイキングのコースに設定したこともある。
 ・横須賀市における主な神社仏閣を巡るコースは、この10000メートルから離れており、10000メートルのネットワークとして組み込めていない。
2)安全対策
 ・基本的に安全柵をしており、とくに対策はしていない。
 ・うみかぜ公園の一部や走水海岸〜観音崎公園までの区間などでは、海水に手でふれることができる。
3)バリアフリーとユニバーサルデザイン
 ・バリアフリーの面では、ダイエーショッピングセンターの建物の中を10000メートルに位置づけ24時間開放しているが、その一部が階段とエスカレーターとなっており、バリアフリーになっていないところがある。
 ・インターロッキングは次第にガタガタになり、歩行者にとってよくない場合がある。
 ・サインとしては、プロムナード全体の表示は1ヶ所しかなく、全体的なサインについて、今年度検討することにしている。
 ・公園の案内板はある。
 ・10000メートルのシンボルマークは、観音崎のプロムナードの案内板や街灯の下に埋め込まれているが、街灯のものは貼り付けている位置がやや下にあり、市民へのアピール力は弱い。
 ・トイレは基本的に公園内にあり、1ヶ所だけ新港の10000メートルに1ヶ所ある。
4)市民と協働の取り組み
 ・植栽ボランティアを募集し、ごみ袋を配布したこともある。
 ・10000メートルを楽しく使おうという手法から市民協働のゴミコレクションを実施している。
写真:横須賀「海と緑の10,000メートルプロムナード」
[1]:建物内の24時間開放の遊歩道(写真中央)
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[2]:歩道の緑化(1)=プロムナード(三笠公園近く)
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[3]:海水を触れられる部分(うみかぜ公園)
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[4]:右側歩道の緑化(2)=プロムナード(平成港近く)
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[5]:海辺つり公園
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[6]:未整備区間(つり公園と大津港間)
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[7]:未整備区間(馬堀海岸:浸水した区間)
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[8]:観音崎遊歩道
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