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3 日本における航行安全対策
(1)海上交通3法
○海上衝突予防法:基本的な海上交通ルールを定めたもの。
○港則法:港内の船舶航行、荷役・工事などの安全を確保するためのルールを海上衝突予防法の特別法として定めたもの。
○海上交通安全法:地形が複雑や特殊であって船舶交通が輻輳する水道などで、特に安全を確保するためのルール(航路の設定、航法、危険の防止など)を海上衝突予防法の特別法として定めたもの。
 
(2)航路標識の設置、管理
○海上保安庁の管理標識
 日本では、航路標識法の規定により、航路標識の設置及び管理は原則的に海上保安庁が行うこととしている。しかし、次の例外規定を置いており、直接的には下記以外の航路標識を管理している。
○許可標識
 企業などが自己の船舶の便宜を図る目的で設置する航路標識などについては、法の原則の例外的措置として「許可標識」という名称で認めている。しかし、海上保安庁の監督下に置いて機能の保持を図っている。
○簡易標識
 前記の2種類のほかに「簡易標識」というものがある。設置規模が小さく、一部の関係者のみの便利のために設置するもので、届出制とし海上保安庁の行政指導により一定の基準を満たすようにしている。
 
(3)安全対策実施事例
 次の二つの事例を紹介する。
A 関門港
a 港則法の特定港に指定
 特定港については、停泊、航法、危険物荷役などについて、港内の船舶交通の安全及び整頓を図る特別の規定を置いている。
 また、港則港に基づき、関門港について特別の航法が定められ、また関門港長が安全上必要な航法指導を行っている。
b 海峡及び航路
 海峡部分の長さ約30km、航路の最狭部の幅約500m、供用水深12m。
 水路が狭く、長く、屈曲しており、潮流が速い。季節により霧が発生する。
c 通峡船舶
 一日6百隻〜7百隻の船舶が通狭。
 通狭最大船舶:鉱石運搬船、113,600トン(G/T)、長さ327m、幅52m、喫水10m。
d 航行援助施設
○航路の複雑さ、潮流の速さ、通行船舶の多さなど交通環境が非常に厳しいため、航路標識の設置密度は極めて高く、また種別も多様である。(全域で126個設置)
○「関門海峡海上交通センター」を設置してレーダー、無線などにより24時間体制で船舶の安全航行に必要な情報の提供と港則法に基づく航行管制を実施している。
[情報提供、管制のための施設]
・センター:無線電話、無線通信、電光文字表示(情報・管制)により実施
・信号所:電光文字表示(潮流の流向・流速表示、行合い調整表示)、閃光信号により実施
[航路標識]
・幹線航路の両側の設置したブイを同期点滅(2グループ、計32個)
・右側通航を励行させるために、3箇所に導灯を設置(さらに1個の設置計画あり)。
・潮流が速い場所には、耐急潮流型ブイを設置。
・航路分岐点のブイにレーダービーコン設置。
・消灯警報装置設置(20個)
・衝突船マーキング装置設置(20個)
 
B 苅田港
a 港則法適用港
b 航路
 本航路:水深-10m、幅250m、長さ約11km
 南航路:水深-10m、幅190m、長さ約2km
c 入港船舶
 約36隻/日
 入港最大船型:自動車運搬船 長さ200m、幅32m、大きさ53,578G/T、喫水9m
d 航行援助施設
 航路ブイ:両側に設置、間隔約1海里
e 入出港に関する基準
 「苅田港船舶安全対策協議会」が、[1]行き合い調整、[2]余裕水深の確保、[3]入出港の中止条件設定などについて定めている。
 
(4)信号、航路標識
○航行援助施設としての日本で活用されている信号システム、航路標識などを参考として紹介する。
○GPS付計器、ARPA付レーダー、電子海図表示装置など、船舶航行の安全を確保する航海計器の発達がみられるが、これらの機器装備船でも、機器を過信して、また確認を怠たっての事故が発生している。
ましてや、レーダーなどの航海計器を搭載しない船舶においては、航路標識は安全確保のための貴重な航海援助装置に変わりはない。
○機能向上
ITの活用、新しい需要、システム化などにより、航路標識の性能や機能の向上を図っている。
・「見える標識」から「見やすい」「分かりやすい」航路標識
同期点滅、面発光、レーダービーコン、セクターライト、AIS、レーザーなど
・状況の異なる現場に適応する航路標識
スパーブイ、急潮流用ブイ、浅海用ブイ、浮沈式ブイなど
・性能の向上及び保守・管理し易い航路標識
LED灯器、太陽電池、モニタリングシステム、アルミ灯台、アルミ構造物灯浮標など
・その他
 衝突船ペイントマーカー








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