2.4ディスカッション(コーディネーター池田教授)
司会(ズン局長)
皆様、本日は池田先生から、港湾開発上の課題−環境保全と航行安全対策について貴重な講演、また菅野船長からは、ハロン湾における航行安全および海洋環境保全についてとても役に立つ報告をお伺いできました。
それでは続きまして、ディスカッションの方に移りたいと思います。その前に本日、セミナーにご参加くださった方々で、ヴィエトナム海上保安庁(VMS)や環境局、クアンニン科学技術環境局(DOSTE)、ハロン湾管理局、ハロンポートオーソリティー、クアンニン交通運輸局や中央および地方の関係省庁など、ハロン湾における環境と航行安全分野に関係する機関の代表者をご紹介したいと思います。
特に本セミナーでのテーマは、我々の関心を引く問題であるハロン湾における安全管理ですので、代表者の皆様から是非ご意見をお伺いしたいと思います。
意見を発表してくださる方はご自分の席で発表していただいてもいいですし、こちらにいらっしゃって発表していただいても結構です。あまり時間がありませんので、発表時間は多くても10分以内でお願い致します。
まず、ヴィエトナム海上保安庁VMSのグエン・ヴァン・ドイ長官、どうぞ。
(1)プレゼンテーション ヴィエトナム海上保安庁
VMSグエン・ヴァン・ドイ長官
まず、ヴィエトナム海上保安庁VMSを代表しまして、ハロン湾の海上安全に関する本セミナーを開催してくださった日本大使館およびヴィエトナム海運総局に感謝申し上げたいと思います。
ヴィエトナム海上保安庁は、世界遺産であるハロン湾に対する海上安全を確保するために、最善の方策の必要性を十分に認識しております。
これまで、予算が許せる範囲で海上安全に向け、最善努力して参りました。現在、カイラン港航路標識システムは我々が管理しております。全システムでは35の視覚標識があり、そのうち、灯漂が8つ、ブイが27つあります。この航路標識システムはカイラン港、ホンガイ水路とホンガイ錨地に出入りする船舶に対し、安全航行の役割を十分に果たしてきたと言えるでしょう。これらの航路標識はハロゲンランプを備えており、通常、太陽発電で機能しています。その光力は2から6海里です。
我々が管理して、ここ10年間、航路標識による事故が起こったことがありません。
しかし、我が国の経済発展速度に合わせ、日増しにハロン湾航行の船舶数が増加傾向にある現状を認識しております。この対策として近い将来、具体的に言えば2002年の第一四半期には、現在カイラン港への水路の航路標識灯器をすべてLEDに取り替える予定です。さらに、この地域は冬になると霧が多いので、視覚標識の能力が限られますので、レーダービーコンの標識を設置する予定があります。
近年の科学技術発展と合わせ、自動認識システムAISの発明されたことから、数人の海事専門家からはレーダービーコンよりもAISを導入すべきであり、ハロン湾でのレーダービーコン設置計画は見直すべきだとアドバイスを受けました。
しかし我々は、ハロン湾における海上安全管理において、次のような問題があります。
第1、ハロン湾の水路で、河川水路は河川総局の管理となり、河川の標識規則に従いますが、海運の航路は海運総局の管理となり、海上の標識規則に従うことになります。各規則が違っているため、両方とも存在するハロン湾の航路は統一していません。
第2、国の航路で民間会社に管理されるのもあれば、VMSに管理されるのもあります。
つまり、ハロン湾の航路の管理が統一していないのです。
なぜ、この問題を言いたいのかというと、海上安全管理には、全体管理することが必要であり、統一についても取り上げなければならないからです。
皆様、本日私はJTCAの池田先生と菅野さんのご報告をお伺いして大変嬉しく思います。今後、これらの報告は我々のVMSにとって非常に役に立つと思います。
本日了解したことに基づき、世界遺産であるハロン湾の航路の安全を確保するために、ハロン湾の航路標識の機能向上に有効な対策を研究したいと思います。
再度VMSの代表として、本セミナーにご参加してくださった皆様に感謝申し上げます。
司会(ズン局長):
グエン・ヴァン・ドイ様、どうもありがとうございました。続きましては、クアンニン科学技術局のヴー・ヴァン・タイン局長にご発表をお願い致します。
(2)プレゼンテーション クアンニン科学技術局
ヴー・ヴァン・タイン局長
本日、ハロン湾における安全管理セミナーにご参加させていただきまして大変光栄です。
池田先生と菅野船長のご報告をお伺いしましたが、お二人の議論はとても意味深くそしてわかりやすいものでした。また、ヴィエトナムが学ぶべき日本の海上安全管理について、いろいろな経験を取り上げていただきました。特に、ハロン湾の航路および航路標識システムについてのご評価は非常に明確で、確かなものだと思います。クアンニン省での調査期間は短かったのですが、航路システムの安全確保について見直すべき点も発見することができました。
海上安全確保は、運輸省機関の職能に属しますが、環境保護事業を担当する我々としては非常に高い関心を持っており、海上安全と環境保護のために協力することを望んでおります。
ご存知のように、ハロン湾は世界遺産であり、大切に保存され、観光および漁業に対して重要な役割を果たしております。このような産業には、環境保護が必要です。しかし、地理的条件によりヴィエトナム北部で唯一、深い港湾を持っています。いずれ、カイラン港とクアオン港が完成し、将来、これらの港は拡張して大型港になります。この2港の開発はヴィエトナム経済発展に寄与しなければなりませんが、その反面、ハロン湾の海上安全問題にも注意を払うべきだと思います。
かつて海上保安庁と環境保護機関は、海上安全および環境保護に対する方策や法律政策等において、一致統一させた事項が多くありました。今後は、より協調しながら対策を進めていく必要があります。
海上安全および環境保護の関係機関は、いろいろと積極的な活動を行って参りました。ご存知のように、B12石油会社はハロン湾の油流出事故に備えた最先端の組織をもつ会社です。
科学技術環境省(MOSTE)もハロン湾の環境保護の規定を管理してきました。その中には、海上安全確保の内容も含まれています。現在、科学技術環境省はハイフォン市とクアンニン省の油流出事故の対策・研究プロジェクトを実施しています。ヴィエトナム自然科学技術センターが中心で、クアンニン省とハイフォン市の関係機関と一緒にこのプロジェクトの研究を始めました。
皆様からいただいたハロン湾の海上安全問題の対策および建設的な意見は、有益なものと思います。今後は、問題解決の糸口になるものと期待しております。
本セミナーで、ハロン湾における海上安全対策および環境保護について、双方が歩み寄り、初期対策において意見一致できることを期待します。そして、ハロン湾の港内及び水域での油流出事故に対して良い対処方法が得られるよう、皆様のご経験および技術のご協力を望んでおります。
しかし、本セミナーでは取り上げられていませんが、以前お会いした時に提出され検討のままの問題について、もう1回申し上げます。この内容ですが、ハロン湾には岩島が多く、万が一油流出事故が発生した場合、すぐ処理や克服ができたらいいのですが、すぐに対応できない場合は油が岩にくっついてしまうことになります。この場合、後の処理が難しくなりますので、これらの処理および技術においてご経験を伺いたいと思います。
以上が、本セミナーの環境保護の内容に加えたい私の提案です。ありがとうございました。
司会(ズン局長):
ご存知のようにハロン湾が世界遺産と指定された後、クアンニン人民委員会に属する、ハロン湾管理局が設立されました。続きまして、ハロン湾管理局、フォー・ドゥック・ティン副局長にご発表をお願い致します。