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資料3 内航船アンケート調査
機関室内のヒヤリ・ハットの実例
 
I.機器の点検・取り扱いミスによるもの
1.主機カム・ケースを解放、カムの前後進切り替えを手動操作した際、起動エアが入ってしまった。
2.主機過給機のシール空気通路を点検時、間違って隣の冷却水の蓋を緩め、温水が噴出した。
3.D/Gクランク・ケースを点検中、クランク・ドアに手を乗せた状態でターニングされ、クランク下部冠との間に手を挟まれた。
4.エレベータ異常停止中、スイッチをONにして手動ハンドルで操作中、突然モータが起動し負傷しそうになった。
5.主機ターニング・モータの手動ハンドルを取り付けたままターニング・モータを起動、ハンドルが吹き飛んだ。
6.主配電盤の気中遮断器の整備を実施しようとして、主電源回路を切らないでヒヤリとした。
7.主機FO管の漏油をエアー・ポンプで送油中、ホースの固縛が外れて高温油が作業員にかかった。
8.主機FOブースター・ポンプ出口弁グランドからの漏油を修理するため、出口弁を閉めてグランドを緩めたところ、120℃のFOが噴出した。
9.主機インジケータ採取時、テストコックの延長パイプが外れ、燃焼ガスが直接目に入り、15ミリの錆が刺さった。
10.ボイラーのコンデンサーを掃除するため、蒸気を大気放出中、バルブの操作ミスでカスケード・タンクにドレンが逆流、作業員が火傷した。
11.サーモタンク運転中、FO高圧管が破孔して、燃料が周囲の飛び散り、火災に拡大の恐れがあった。
12.ピストン抜き時、何本か抜いた後にクランク軸がアンバランスになり、突然回りだした。
13.ノンフューズ・ブレーカーをOFFにしないままで作業中、感電した。
14.シリンダー・カバー周りを素手で掃除中、FOトレーシング・パイプのニップル部が防熱ラギングされてなくて、接触して火傷した。
15.FO主管の蒸気トレース管が破孔のため取り替え中、蒸気入り口弁が完全に閉まっていなくて、不良パイプを切断した瞬間に蒸気が吹き出した。
16.排エコの破孔チューブにストッパーを打ち込むためボイラーの蒸気弁を閉めたが、時間がなく十分に残圧を抜かないまま作業を開始したため、排エコまで温水が吹きあがり火傷した。
17.タービン船のボイラFDF吸入弁を掃除するため、FDFの電源をOFFにしたところ、吸入弁が急に閉じ、首がはさまれそうになった。
18.G/E運転中、LO圧力計の導管継ぎ目ブルト部分漏油修理のため、増し締めしたら、ボルトが折損し油が噴出した。
19.D/G整備後、フライ・ホイールにターニング・バーを差し込んだままエア・ランしてしまった。
 
II.チェン・ブロック使用中に発生したもの
1.排気弁取り替え時、チェン・ブロックで排気弁をつり上げたら、一気にシリンダー・カバーが抜け、飛び上がった。
2.主機ピストン抜き時、ピストンを吊り上げたところ、チェン・ブロックのフックからワイヤが外れて、ピストンを落とした。
3.主機シリンダー・カバーを取り替え修理中、天井に吊っていたチェン・ブロックのフックが外れカバーが落下した。
4.チェン・ブロックの吊りレールがトローリーの取り付けナットの緩みで外れて重量物が落下した。
5.チェン・ブロックを使用して重量物を下ろしていた時、急いで下げたため、フックが外れそうになった。
6.チェン・ブロックを2個使用して機器移動中、フックの掛け違いからフックが突然外れ、移動物を落下させた。
7.チェン・ブロックのチェンの最終止めピンが抜けて、主機FOポンプを頭の高さから落下させた。
8.吸気弁抜き出し時、チェン・ブロックを無理に引っ張ったため、チェンが切れて飛んできた。
9.重量物運搬中、取り外したチェン・ブロックのフックを作業相手が手から離したため、フックが体をかすめた。
10.燃料弁抜き出し時、抜き出し用具とチェン・ブロックを併用して作業中、予想以上の力が掛かり、燃料弁が跳ね抜けた。
11.チェン・ブロックで重量物を移動時、プレートの角に引っ掛かったので安全靴で蹴って外そうとしたら、重量物が靴に乗りかかり、靴を脱いで足を外した。
 
III.物品の落下によるもの
1.FO清浄機の回転体を吊り上げ中、ワイヤーが外れて回転体が落下した。
2.上段、下段に分かれて作業時、上段の工具を下段の作業員近くに落とした。
3.主機シリンダー・カバー取り替え中、ハンド・レールを外して作業していて、下段に後頭部から墜落した。
4.ホイスト操作時、リミット・スイッチが作動せず、巻き上げすぎてワイヤーが切れブロックが落下した。
5.主機(V型)排気弁抜き出し時、トローリーが傾き、破損してチェン・ブロックごと落下した。
6.重量物移動時、玉掛け不良により重量物を落下させた。
7.チェン・ブロックが空回りして、重量物が落下した。
8.酸素ボンベ搬入時、固縛不十分のためボンベが落下してきた。
9.機関室上段にて作業中、スパナ、ハンマー等工具を下段に落下させた。
10.防熱手袋を着用せず、軍手のみでボイラー・キャスター内を清掃中、カーボン内部がまだ燃えている大きな固まりが落下した。
11.主機ピストン抜き時、不要になったスパナを主機上床に置くべく、そっと投げたつもりが跳ね返り、下段の作業員の目の前に落下した。
 
IV.転倒が発生、または発生しそうになったもの
1.主機排気弁を取り替え中、機関上部の足場が悪く、油で汚れていたので滑って転倒しそうになった。
2.警報が鳴り、制御室へ急行するとき、床に油があり転倒した。
3.床下作業終了後、プレートを復旧してなかったため、他の作業員が足を取られて転倒しそうになった。
4.ナットにスパナの掛かりが甘く、力を入れたとき外れて、転倒しそうになった。
5.チェッカー・プレートに置かれていた工具に気づかず、足で踏み転倒しそうになった。
6.高所作業中、バランスを崩し踏台にしていた一斗缶が滑り、転倒しそうになった。
7.中間軸の研磨作業中、サンド・ペーパーが手から滑り、中間軸に倒れ込んだ。
8.高所でパイプを取付中、スパナが外れ反動で腰をひねり脚立から転倒しそうになる。
9.パイプを甲板上に持ち上げるとき、階段の手すりにパイプが引っ掛かり転倒しそうになった。
10.電気工事中、ペン缶にのっていて転倒しそうになった。
 
V.転落が発生、または発生しそうになったもの
1.物を持って機関室の階段を下りるとき滑り、手摺りをつかまえて転落を防止した。
2.FO噴射弁取り替え中、足場に油が落ちていて足が滑り、足場とシリンダー・カバーの間に落ち込んだ。
3.老眼鏡をかけたまま台から台へ飛び移ろうとして、間隔が分からず転落した。
4.高所作業時に安全ベルトを着用せずに足を踏み外し、転落しそうになった。
5.高所作業中、パイプの上にのって作業していたら、片足が滑り転落しそうになった。
6.床プレートを開けて作業中、足場が不安定になってプレートが動き、足を滑らしタンク・トップへ転落しそうになった。
7.雨の日、外から帰ってすぐ作業に付くため、階段を急いで降りていたら、安全靴が濡れて滑り落ちた。
8.タンク・トップの掃除終了後、床プレート板を敷くときに足を滑らせ転落した。
 
VI.工具の不備・取り扱いミスなどによるもの
1.ボール盤で穴あけ作業時、キリが鉄片に食い込み鉄片も回転して、手指をはねられた。
2.ディスク・サンダー作業終了後、回転停止を確認せずに作業台に置き、サンダーが体をかすめた。
3.ハンディタイプの電動ドリルで大きな穴あけ作業時、ドリルが噛み、手を捻られそうになった。
4.錆びたナットを緩めるのに、めがねスパナを使用せず、片ロスパナを使用したため、外れて手を打った。
5.D/G排気弁の解放時、専用工具を使用しなかったため、外れたスプリングが顔面の横を上方に飛んできた。
6.作業中、ハンマーの抜け止めくさびが外れ、ハンマーの先端部が飛び、頭にあたるところだった。
7.掃除用エア・ホースの整備不良で先端が外れ、躍り出して顔面に当たった。
8.ドレン・クーラー・カバー解放時、チェーンを使わずロープを使ったら、予想以上にロープがのびて作業員が怪我をしそうになった。
 
VII.溶接作業中に発生したもの
1.アセチレン・ガスで切断作業中、熔けた鉄片がガス・ホースに接触し、ホースが熔けた。
2.一人で溶接作業中、傍でウエスが燃えているのに気づかなかった。
3.溶接作業時、煙センサーが反応し、火災警報装置がなった。
4.溶接作業時、床下にあった油ウエスに火が落ち、引火した。
5.工作室にて電気溶接時、離れた場所のウエスに引火した。
6.手洗い場所付近で溶接時、スラッグが飛散して、干してあったタオルに火がつき上部にあった救命衣を焦がした。
7.電気溶接時、錆び打ちハンマーで叩いたら溶接滓が顔に当たった。
 
VIII.連絡ミスによるもの
1.モニターの取り替え配線中、配電盤に札を掛けていなかったため、他の者がブレーカーを投入、感電しそうになった。
2.電源OFFにして、海水ポンプ・グランド入れ替え中、他の海水ポンプを修理した者が、自分の作業終了時にポンプを運転した。
3.FO系統弁グランド・パッキンの入れ増しを指示したら、本人はポンプが停止していると思いこみ、グランドの押さえを緩めたので、FOが流出した。
4.船橋と機関室間の連絡が不十分なため、機関士が分かっているものと思い込み、遠隔操作した。
5.軸封装置のストレーナー掃除を施工中、連絡不十分で他の者が主機を起動したため、プロペラ軸が回転し、巻き込まれそうになった。
6.モーターの遠隔ボタンを修理中、ノンフューズ・ブレーカーはOFFにしていたが、「作業中」のタブまたは、「テープの修理中」の注意板を掛けなかったので、他の者がノンフューズ・ブレーカーを投入してしまい、それに気づかず感電した。
7.減速機LOストレーナー掃除中、緊急作業が発生したため一時中断後、継続作業を他の者が行ったが、引継不十分のため、LO系統バルブの誤操作により油圧低下を招いた。
 
IX.高温・騒音によるもの
1.高所で高温の狭い場所で作業中熱風に晒されて、頭がぽおっとなり、足を滑らせ尻餅をついた。
2.排エコの自動スート・ブロー装置を修理中、ファンネルの中で長時間作業したため熱射病になった。
3.航海中、整備のため片方舷の主機関を停止し、シリンダー・カバーを取り替え時、騒音、暑さからの疲労のため、意志の疎通、連携が悪くなった。
 
X.安全保護具の不着用によるもの
1.主機クランク・ケース点検時、笛を口にくわえず、上ポケットに入れていたので、とっさに合図できず。
2.安全帽なしで機関室見回り時、上部より200ミリのボルトが落下してきた。
3.狭い場所で安全帽をかぶらずに作業、格子で頭を強打した。
 
XI.ワイヤー事故によるもの
1.排気弁取り替え中、プッシュ・ロッドをワイヤで吊り上げ中、ワイヤーが外れて、手の親指を切断した。
2.ピストン抜き時、シリンダー・カバーを吊り上げ移動中、ワイヤーが切断してカバーが落下した。
3.排気弁取り替え時、ロッカー・アームを天井クレーンで吊り上げたところ、ワイヤーが切断し、その反動でフックが天井付近まで飛び跳ねた。
 
XII.「巻き込まれ」が発生、または発生しそうになったもの
1.グラインダーで研削加工時、革手袋が巻き込まれ、手袋の先端を切り取られた。
2.フライ・ホイールの汚れを掃除中、ウエスをフライ・ホイールに巻き込まれた。
3.機器回転部の汚れを拭き取り中、ウエスを巻き込まれそうになった。
 
XIII.その他
1.フレオン・ガス容器運搬中、内部の液体移動により重心のバランスが取れず、腰を痛めた。
2.十分な足場がとれない場所での作業時、スパナが滑り体のバランスを崩した。
3.モーター電源をOFFにしてポンプを修理中、開いていた配電盤の扉に配線されていた制御用電源100Vに背中が接触し、軽度の火傷をした。
4.狭い場所で温水パイプのフレンジ・パッキング取り替え中、暖まっていた温水が噴き出した。
5.廃油焼却炉で廃油ウエスを焼却時、バック・ファイヤーを起こした。近くに燃料のサービス・タンクがありヒヤリとした。以上








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