[II]災害防止と安全作業マニュアル
1.(1) 人の不注意と災害防止
不注意は避けられない 人の特性にあった災害防止対策を
人は、注意力をいつも維持することはできず、不注意が避けられないのが人間の特性です。仕事以外の心配事、寝不足や体の不調、急いでいることなどが影響して、「見落とし、見間違い、聞き違い、思い違い、」などの不注意といわれる行為が発生します。例えば、監視作業では、30分で「見落とし」が多くなるといわれます。
災害は、「不安全な行為」が「不安全な状態」と合わさって発生するものですが、「不安全な行為」の原因は、不注意だとして処理してしまったり、「不安全な状態」があっても、万全の注意で危険をまぬがれようとするのは、人間の特性に合わないことです。
まず、人の「不安全な行為」が発生する原因を除いていくのが安全対策の第一歩であり、また「不注意な行為」が発生しても、災害の発生に結び付かないようにする対策の実施が必要です。
1.(2) 手抜きと近道反応など
誰でもやってる手抜きや近道反応と憶測判断
あなたは、仕事を急いだり、自信過剰になったり、また横着な気持ちがあったりしたとき、次のような「不安全な行為」をした経験はありませんか。むしろ、経験があるのが普通です。
◇安全作業の手順を抜かしたり、保護具を着用しないなどの手抜きをする。(省略行為)
◇安全な道があるのに危険な近道を通る。(近道反応)
◇安全を確認せずに大文夫だろうとやってしまう。(憶測判断)
人は、このように「不安全な行為」をとりやすい特性をもっているので、注意力を過信せず、人がこのような「不安全な行為」をとらないようにする安全対策が必要なのです。
上に立つものは、生産性の向上を図るため、安全を二の次にした省略行為や近道反応を、認めるようなことのないように心掛けなければなりません。
1.(3) 高齢化と身体機能の低下
50歳以上で急増する不安全行動と災害
人は誰でも年をとり、程度の差はありますが、体力や身体機能が低下します。とくに50歳以上になると、明るい所から暗い所に入ったときの順応が遅くなり、また記憶力や注意力の衰えなど、身体機能の低下が著しくなって「不安全な行為」が生じやすくなります。
事実、50歳以上の被災率は、最も被災率が低い30代に比べて2倍近くとなっています。
長年、手慣れた作業への自信も大切ですが、同時に自分の体力や機能の低下を自覚して、手抜きせず若いとき以上に安全を確認していくことが必要です。