第2章 霧と海難事故
本章では、霧と海難事故との統計的関係、および瀬戸内海における霧日数、気象災害について述べる。
2.1 霧と海難との関係
最近3ヵ年(平成9〜11年)の高等海難審判庁及び地方海難審判庁において、裁決の確定した漁船関連の事件1,205件・1,465隻を調査対象とした統計によると(表2.1.1、図2.1.1)、海難時に注意報・警報が出されていたケースは23.5%、出されていないケースは67.4%である。そのうち、注意報・警報が発令されている場合では、波浪注意報(32.3%)、濃霧注意報(18.6%)が特に多いことが示される。
注釈) この構成比は、各注警報の発令頻度に比例すると考えられるので、注意報が出された時の海難事故出現率でないことに留意すべきである。
表2.1.1 気象注意報警報と事件種類別
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海難審判庁 「漁船海難の実態」平成13年3月より
[表2.1.1の用語の説明]
海難:海難審判法(第2条)は海難の発生を次のように定義している。
1.船舶に損傷を生じたとき、又は商船の運用に関連して船舶以外の施設に損傷を生じたとき。
2.船舶の構造、設備又は運用に関連して人に死傷を生じたとき。
3.船舶の安全又は運航が阻害されたとき。
海難の種類:
衝突…船舶が、航行中又は停泊中の他の船舶と衝突又は接触し、いずれかの船舶に損傷が生じた場合を言う。
乗揚…船舶が、水面下の浅瀬、岩礁、沈船等に乗り揚げ、又は底触し、喫水線下の船体に損傷を生じた場合をいう。
沈没…船舶が海水等の浸入によって浮力を失い、船体が水面下に没した場合をいう。
転覆…荷崩れ、浸水、転舵等のため、船舶が復原力を失い、転覆又は横転して浮遊状態のままとなった場合をいう。
遭難…海難の原因、態様が複合していて他の海難の種類の一に分類できない場合、又は他の海難の種類のいずれにも該当しない場合をいう。
火災…船舶で火災が発生し、船舶に損傷を生じた場合をいう。但し、他に分類する海難の種類に起因する場合は除く。
図2.1.1漁船が事故を起こした時の注警報の割合(注警報が発令されている時)