第1部 船舶観測データセットの整備
1.1 概要
本年度事業では、未電子媒体化資料の中から1921年〜1930年の388,053通の資料を電子媒体化した。これまでの事業で電子媒体化したデータ総数は、約266万通である(表1.1)。
これまでの電子媒体化事業の概要を以下に述べる。事業を開始した平成7年度では、1890年〜1932年のマイクロフィルムを40巻抽出し、約36万5千通の海上気象資料を電子媒体化した(平成7年度事業報告書)。続く平成8年度は、1901年〜1932年のマイクロフィルムを約50巻抽出し、約66万7千通の資料を電子媒体化した(平成8年度報告書)。
第二期前期の平成9年度事業では、すでに複写した資料から、1889年〜1932年までの約30万通の資料を電子媒体化した(平成9年度報告書)。第二期後期の平成10年度事業では、新たに15巻のマイクロフィルムを複写し、約25万7千通の資料を電子媒体化するとともに、平成7〜8年度事業で電子媒体化した資料を品質管理し、CD-ROM(1998 edition)に格納して利用者へ配布した。
第三期前期の平成11年度事業では、新たに5巻のマイクロフィルムを複写し、約33万通の資料を電子媒体化した。また、平成9〜10年度事業で電子媒体化したデータを品質管理し、平成10年度に作成したCD-ROMを再品質管理したデータと合わせて、平成12年版のCD-ROM(2000 edition)として作成し配布した。第三期後期の平成12年度事業では、残りすべてのマイクロフィルムを紙媒体に複写し、このうち1921〜1928年の355,392通の資料を電子媒体化した。また、CD-ROM(2001 edition)を刊行した。
表1.1 電子媒体化データ通数
期 |
年度 |
データ通数 |
CD-ROM |
事業報告書 |
I |
1995 |
365,021 |
  |
平成7年度報告書 |
1996 |
666,417 |
  |
平成8年度 〃 |
II |
1997 |
299,816 |
  |
平成9年度 〃 |
1998 |
257,175 |
○ |
平成!0年度 〃 |
III |
1999 |
332,913 |
○ |
平成11年度 〃 |
2000 |
355,392 |
○ |
平成12年度 〃 |
IV |
2001 |
388,053 |
  |
平成13年度 〃 |
2002 |
− |
(予定) |
− |
合計 |
2,664,787 |
  |
  |
1.2 KoMMeDS-NFデータセットの作成
本年度事業では、すでに複写してある1921〜1930年の資料を検査した後(コーデング作業;キーパンチャーが入力し易いように、読み取り難い文字を明瞭に記すこと等、平成8年度事業報告書巻末資料17参照)、キー入力を行った。この結果、今年度事業において電子媒体化した「海上気象報告」は388,053通である(表1.2、図1.1)。
表1.2に電子媒体化された各年毎の観測通数、気圧、海上風、気温、海面水温、波浪のデータ数を示す。これによると、通数に対する各要素のデータ数の割合は、うねりを除いて、ほぼ100%近いことが示される。うねりのデータ数が少ない理由は、うねりの観測をしておらず、記載が無いことによる。
図1.1に年別のデータ数を示す。これによると、データは1921年〜1930年に分布し、1927年〜1930年のデータが全体の約76%(約30万通)を占め、1928年のデータが最も多い(110,865通)ことが示される。
船舶の観測位置を図1.2に、緯度経度10度毎の海域別通報数を図1.3に示す。図1.2によると、データは北太平洋航路(東京ーシアトルまたはサンフランシスコ)、北米ハワイ航路(東京ーサンフランシスコまたはロスアンゼルス)、東シナ海からインド洋、紅海を通る東南アジア航路及びアフリカ喜望峰を迂回してリオデジャネイロに向かう南大西洋航路に集中して分布している。また、図1.3によると、北太平洋中緯度と南シナ海にデータが多いが、大西洋、赤道付近及び南半球のデータは非常に少ないことが示される。
図1.2からわかるように、数は少ないが観測位置が陸地に分布しているデータがある。これは西経と東経を誤ったり、観測位置を間違えて記入したものである。このような誤りを取り除くため、電子媒体化されたデータは適切な方法により品質管理(QC;Quality Control)をする必要がある。本事業では、世界気象機関の基準に則り、気象庁が品質管理を行った(平成8年度報告書p.11;2.3データの品質管理)。
品質管理されたデータは、これまでにCD-ROMで公開されたデータと合わせて、国内外の気象海洋機関、大学および一般の利用者に公開される予定である。本年度事業では、平成12年度事業で電子媒体化した約36万通のデータを品質管理した。
表1.3と図1.4〜1.6にこれまでの事業で電子媒体化したデータの総数を示す。これらには、品質管理済みデータ(平成7,8年度電子媒体化データと気象庁電子媒体化データの計1,045,682通数、平成9年度データ342,519通数、平成10年度データ571,406、平成11年度データ332,937通数、平成12年度データ357,584通数)と未品質管理データ(平成13年度電子媒体化データ388,053)が含まれるので、品質管理する前のデータの集計である表1.1とは少し値が異なる。
表1.3によると、データの総数は約272万通であり、うねりを除く各要素のデータは、約250万通以上あることが示される。
図1.4は年毎の電子媒体化したデータ数を黒棒(本年度事業)と白棒(平成7〜12年度事業)で示す。この図より、これまでに電子媒体化されたデータは概ね1900〜1929年に分布していることが分かる。電子媒体化は古い年代順に行っていることから、1930年以降のデータが未だ電子媒体化されていないことが推測される。
図1.5にはこれまでに電子媒体化した全てのデータの観測位置を、図1.6には緯度経度10度格子に含まれるデータの個数を示す。これらには、品質管理されていないデータを含むため、位置が正確でないものも示される。この図からわかるように、「神戸コレクション」に含まれる船舶データは、北太平洋の北緯20〜50度に集中して分布することが示される。
参考文献
日本気象協会(1996) |
: |
波浪特性等の長期変動解明のための北太平洋の気候データセットの整備(平成7年度事業)報告書、28pp. |
日本気象協会(1997) |
: |
波浪特性等の長期変動解明のための北太平洋の気候データセットの整備(その2)(平成8年度事業)報告書、283pp. |
日本気象協会(1998) |
: |
全球の船舶観測データセットの整備とそれを用いた海洋気候の長期変動の解明(平成9年度事業)報告書、220pp. |
日本気象協会(1999) |
: |
全球の船舶観測データセットの整備とそれを用いた海洋気候の長期変動の解明(その2)(平成10年度事業)報告書、116pp. |
日本気象協会(2000) |
: |
歴史的な船舶観測データセットの整備と海洋変動による台風発生の研究(平成11年度事業)報告書、75pp. |
日本気象協会(2001) |
: |
歴史的な船舶観測データセットの整備と海洋変動による台風発生の研究(その2)(平成12年度事業)報告書、117pp. |
表1.2 平成13年度に電磁媒体化した要素別データ通数一覧表(未QCデータ)
年 |
通数 |
気圧 |
風 |
気温 |
海水温 |
波浪 |
うねり |
1890 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1891 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1892 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1893 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1894 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1895 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1896 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1897 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1898 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1899 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1900 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1901 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1902 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1903 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1904 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1905 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1906 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1907 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1908 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1909 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1910 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1911 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1912 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1913 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1914 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1915 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1916 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1917 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1918 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1919 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1920 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1921 |
45 |
45 |
45 |
45 |
45 |
45 |
0 |
1922 |
1,989 |
1,989 |
1,941 |
1,989 |
1,989 |
1,944 |
0 |
1923 |
68,756 |
68,565 |
67,618 |
68,261 |
67,541 |
65,850 |
1,407 |
1924 |
20,500 |
20,444 |
20,121 |
20,117 |
20,078 |
18,893 |
2,956 |
1925 |
195 |
195 |
195 |
194 |
194 |
178 |
81 |
1926 |
260 |
251 |
258 |
260 |
260 |
252 |
138 |
1927 |
82,783 |
82,066 |
81,325 |
82,578 |
82,280 |
79,408 |
43,619 |
1928 |
110,865 |
110,553 |
108,998 |
110,580 |
110,328 |
106,612 |
61,207 |
1929 |
90,184 |
89,977 |
88,470 |
89,964 |
89,774 |
86,198 |
48,024 |
1930 |
12,476 |
12,449 |
12,252 |
12,445 |
12,440 |
12,043 |
7,005 |
1931 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1932 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
合計 |
388,053 |
386,534 |
381,223 |
386,433 |
384,929 |
371,423 |
164,437 |
図1.1 平成13年度に電子媒体化した船舶海上気象観測データの年代別データ通数(未QCデータ)
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図1.2 平成13年度に電子媒体化した船舶海上気象観測データの観測位置(未QCデータ)
(拡大画面: 183 KB)
図1.3 平成13年度に電子媒体化した船舶海上気象観測データの海域別通数(未QCデータ)