日本財団 図書館


第4章 協働に関する先進的施策事例
 本章では、いくつかの自治体においてみられる、市民活動の促進や市民と行政との協働に向けた政策について紹介する。これらの例としては、図表4‐1に示すようなものがある。これら2つのテーマを合わせたものは、インターネット検索の範囲では見られなかった。その理由としては、2つのテーマがそれぞれ大きいこと、市民活動の促進と、市民と行政との協働は別の段階のテーマと捉えられていることなどが考えられる。しかし、それぞれ、示唆に富んでおり、協働のあり方や市民団体への支援の方向性を検討に参考になる。
図表4‐1 市民活動の促進や市民と行政との協働に向けた政策づくりの例
市民活動の促進
横須賀市「市民活動促進指針」(平成11年2月)
「平塚市における「市民活動」推進の施策(提言)」(平成11年3月)
「横浜市市民活動推進検討委員会報告書」(平成11年3月)
滋賀県「県民の社会貢献活動促進のための基本的な考え方」(平成11年7月)
「旭川市の市民参加を推進するための提言」(平成11年2月)
札幌市「市民活動促進に関する指針」(平成13年)
「加西市市民参画推進基本計画 (中間まとめ)」(平成13年度)
市民と行政との協働
岐阜県「「NPOとの協働のあり方」施策提言書」(平成10年10月)
「横須賀市市民協働型まちづくり推進指針」(平成11年2月)
「岡山市協働のまちづくり条例」(平成13年4月1日から施行)
出典:各自治体のホームページより作成
 以下に、市民活動推進の理念と支援策がわかりやすく整理されている平塚市の提言、市民協働型まちづくりを明らかにし、それをすすめるための条件をまとめた横須賀市の指針、協働のまちづくり条例の例として岡山市の条例案を紹介する。市民参加のまちづくりを推進する藤枝市においては、今後、市民活動推進に関する条例整備も必要と思われる。こうした条例整備により、市民活動にいわば市民権が与えられ、市民自治が加速する。
1 平塚市における「市民活動推進の施策(提言)」
 平塚市では、まず市民活動を定義し、市民活動団体の要件を整理している。続いて、市民活動への期待の背景を概観し、市民活動団体実態調査により市民活動の現状と問題点を明らかにしている。問題点は諸団体の悩みと行政への期待としてまとめている。
 次に、市民活動推進の基本理念として、環境の整備、行政の意識改革、市民活動団体の自覚の三点から述べている。そして、憲法第89条問題に言及した後、市民活動支援の3原則を述べ、最後に、市民活動推進の施策として具体的な提案を行っている。提案の中には、「市民活動団体登録制度」の創設など、参考にすべきものが多い。重要な部分の抜粋は次のとおりである。
 
第3章 市民活動推進に対する基本的な考え方
 
1. 市民活動推進の基本理念
(1) 「市民活動」に対する環境の整備
・ 「市民活動」は、参加者の「自発性」と団体の「自立性」という2本の柱によって支えられています。
・ 行政が第一に考えるべきことは、「まちづくりの主役は市民である」という原点に立ち返り、「市民活動」やその「支援」に対するさまざまな制約を取り除き、より多くの市民や 企業関係者が「市民活動」に関心を寄せ、それぞれが大切だと信じる活動を始めたり、参加したり、支援したりしやすい環境を作り出すことです。
(2) 「パートナーシップ」確立への行政の意識改革
・「パートナーシップ」という意味は、「市民活動が行政へ単に協力する」とか、「行政の定めた枠内で行政が迷惑しない範囲内で参加する」といったことではありません。「非営利の公益活動も行政の専権事項ではない」という基本的な認識から出発して、互いに目的意識を共有し、自立しつつ、相互の持ち味を認識、尊重して、対等の立場で、協力、協調して成果をあげていくことです。行政の論理や価値観を一方的に押しつけることは、厳に慎まなければなりません。
・ 構想・企画の段階から、文字通り市民の知恵や力を生かす真の参画を実現することが重要です。「情報開示」と「パートナーシップ」は車の両輪、と考えなければなりません。
(3) 市民活動団体の自覚
・ 団体に関わりのあるすべての人々に対して、その意思決定や活動の内容、財政を含む組織運営の実態が明確にわかるように、文書化して団体の全容について「透明性」を持たせることが肝要です。
・ 「パートナーシップ」を推進するためには、互いの立場を理解し尊重することが基本となります。
 
2. 市民活動支援の3原則
(1) 憲法第89条問題
・ 憲法第89条は、「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない」としています。条文通り解釈すれば、「公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業」に関わる多くの市民活動団体に対し、政府や自治体が援助をすることは“憲法違反”ということになります。事実、この条項を理 由に、市民活動への支援を躊躇する動きも見られます。
・ 経済企画庁が行った調査でも、全国の市民活動団体の4分の1が行政からの補助金を受けています。金額はそれほど多くないにしても、現実にこうして市民活動団体に対する補助金が支給されている以上、何よりも明確なルールに則って公明正大に行うことが重要です。
(2) 市民活動に対する公的支援の3原則
 【自主性・自立性の原則】
 【公平性・公正性の原則】
 【公開性・透明性の原則】
 
第4章 市民活動推進の施策(具体的な提案)
 
1. 市民活動推進のための基盤整備
(1) 「市民活動条例」の制定
(2) 「市民活動推進会議」の設置
(3) 「市民活動推進月間」の制定
(4) 「市民活動団体登録制度」の創設
(5) 青少年に対する「ボランティア体験」の奨励
 
2. 資金的な支援
(1) 「市民活動助成基金」の創設
(2) 補助金、融資、業務委託等
 
3. 活動拠点や備品・器具等に関する支援
(1) 「市民活動センター」の設置
(2) 公民館、プール、公園等公的施設利用ルールの見直し
(3) 空き教室や企業、大学等の会議室、その他施設の活用
(4) 中古備品・器具等の活用システムの構築
 
4. 情報に関する支援
(1) インターネット網の整備
(2) 行政による情報公開の推進
(3) 「事前情報」の開示
(4) 苦情・相談の「総合窓口」の設置
(5) 「市民活動掲示板」の設置
(6) その他広報活動に関する支援
 
5. 人材の交流と育成に関する支援
(1) 行政と企業、市民活動団体の人材交流の促進
(2) リーダー等人材の育成や研修プログラムに対する支援
(3) 弁護士、会計士、大学教授等による支援システム








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION